アムステルゴールドレース2024:シクロクロッサーがまたもクラシックで躍動!ピドコックが逃げによる4人スプリントを制し制覇!ひときわ小柄な男がライバルねじ伏せクラシック3勝目
マシュー・ファン・デル・ポエル(アルペシン・ドゥクーニンク)やタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)が世代最強の名を欲しいままにしているが、トム・ピドコック(イネオス・グレナディアス)もすでに現段階で歴史に残る名選手としてその名を刻んでいる。シクロクロス世界王者、MTBオリンピック金メダリスト、MTBクロスカントリー世界王者、E-MTB世界王者、ロードでもジュニア時代にTTで世界王者になっている170㎝の24歳は、ブラバンツ・ペイユ、ストラーデ・ビアンケに次ぐ、自身クラシック3勝目をアムステルゴールドレースで達成した。まだまだ新人賞ジャージ対象者のピドコック、俺の事も忘れるなと言わんばかりの走りで、期待されながらも失速したパリ~ルーベの借りを早くも返して見せた。
253.6㎞の長丁場、そして33の丘が選手たちを迎え撃つクラシックは、当然のことながらファン・デル・ポエルが優勝候補筆頭だった。しかしモニュメントのリエージュ・バストーニュ・リエージュに照準を定めるファン・デル・ポエルはこの日は無理をすることなく爆発的かつ積極的な走りは控えたままレースは推移する。レースが決定的に動いたのは残り35㎞のアイセルボスウェグの上りだった。ここで発生した12名の逃げが、この後最後までレースを主導することとなる。
最大勾配22%の激坂でのアタックの応酬から抜け出し一度は、ピドコック、マルク・ヒルシ(UAEチームエミレーツ)、ティス・ベノート(ヴィズマ・リースアバイク)、マウリ・ファンセヴェナント(ソウダル・クイックステップ)の4人となるが、そこへ次々と選手たちが合流し、逃げは12人となる。そしてこの段階でファン・デル・ポエルや、昨年の覇者ポガチャルらが優勝戦線から離脱していく。
残り20㎞で50秒差にまで広がった先頭では、更に抜け出すべく丘を越えるたびに仕掛け合いが始まる。残り15㎞では下りを利用してペッロ・ビルバオ(バーレーン・ヴィクトリアス)が飛び出すが、下りのテクニックに長けたピドコックがあっさりとこれに追いついてしまう。そして勝負どころとなったグーレメルベルグで、ヒルシがアタックを決めると、ついていけたのはピドコック、べノート、ファンセヴェナントの3名のみだった。この日の仕掛けのタイミングで顔を揃えた4名が奇しくも最後に飛び出す4名となる。
しかし残りの逃げ集団から大きくタイムを奪うことができず、僅かに10秒ほどの差を守りながらも協調して逃げ続ける。そしてピドコックが追走に追いつかれることを嫌い積極的にアタックをしペースを上げる。これが功を奏し、残り5㎞ではタイム差は徐々に広がり30秒を超えていく。
ファンセヴェナントは一度は遅れるも先頭に3人に合流し、結局最後までこの4人での勝負となった。迫りくる追走集団を見ながらの駆け引きとなったが、残り1㎞でべノートが、そしてファンセヴェナントが先行してスプリントを開始する。しかし最後はMTBでも見せた爆発力のあるスプリントを見せたピドコックが、盤石の走りで勝利の雄たけびを上げた。ヒルシは一歩及ばず2位、べノートが3位に入り、背後まで迫った集団からかろうじて逃げ切ったファンセヴェナントが4位となった。
「レースを常にファン・デル・ポエル中心で考えるわけにはいかないからね。彼が不調な時は、僕らは自分たちのレースをしなきゃならないんだよ。今日は仕掛けた時に。ヴィズマのジャージが見えて、勘弁してくれ、またかよ!と思ったんだ。でもそれでも気持ちを切らさず、自分のレースに徹したんだ。あとはファンセヴェナントが早めにスプリントを仕掛けてくれたのが、結果として追いつかれずに済んだ大きな要因だね。」ピドコックはこの日の勝利への流れを語った。
アムステル・ゴールドレース2024順位
優勝 トム・ピドコック(イネオス・グレナディアス) 5h58’17”
2位 マルク・ヒルシ(UAEチームエミレーツ)
3位 ティス・ベノート(ヴィズマ・リースアバイク)
4位 マウリ・ファンセヴェナント(ソウダル・クイックステップ)
5位 ポール・ラペイラ(デカスロンAG2R)
6位 ヴァレンティン・マドゥアス(グルーパマFDJ)
7位 バウク・モレンマ(リドル・トレック)
8位 クエンティン・パシャール(グルーパマFDJ)
9位 ペッロ・ビルバオ(バーレーン・ヴィクトリアス)
10位 マイケル・マシューズ(ジェイコ・アルーラ) +11”
H.Moulinette