パリ~ルーベ2024:ファン・デル・ポエルが圧巻の2年連続最速タイム更新での逃げ切り勝利!フィリップセンも2年連続の2位、アルペシン・ドゥクーニンクは今シーズンモニュメント3勝目!
今シーズンも世界チャンピオンの勢いは止まらない。マシュー・ファン・デル・ポエル(アルペシン・ドゥクーニンク)は先週行われたクラシックレース最高峰のモニュメントの一つ、ロンド・ファン・フランデーレンに続き石畳地獄のパリ~ルーベでも勝利し2連勝とした。昨年度もパリ~ルーベでは独走勝利を果たしているが、今年はそれをさらに超える59.6㎞の独走無双状態で大会連覇、そして2位には昨年に引き続きヤスパー・フィリップセン(アルペシン・ドゥクーニンク)が入り、2年連続のワン・ツーフィニッシュを達成した。これでフィリップセンとファン・デル・ポエルで今シーズンモニュメント3勝クラシック勝利に特化した最強チームがしっかりと結果を積み重ねている。更には昨年度に続き史上最速を更新、優勝したファン・デル・ポエルは主催者の最速ゴールタイム予想を上回る、平均時速47.8㎞でゴールをするという別格の速さを見せつけた。
ファン・デル・ポエルはこれで自信6度目のモニュメント制覇、シクロクロス、MTB、ロードレースと全てのジャンルで結果を残してきているが、シクロクロスとロードレースでは世界チャンピオンとなり、更にロードレースではその最高峰のクラシックレースでも史上最強のクラシックライダーとして歴史にその名を刻んでいる。
もはやグラベルバイクのレースと言えるほどの悪路、259.9㎞のうち石畳が55.7㎞を占めるまさに北の地獄の名にふさわしいハードなレースは、合計で29の石畳セクションが用意されている。その中でも5つ星の最高難度が名物のアーレンベルグとモンサン・ぺベル、カルフルール・ド・ラルブルの3か所、更には4つ星が6か所と勝負どころが非常に多い。一部チームはそのままグラベルバイクを持ち込むというサバイバルを予感させた。更にはロードバイクで出場のチームも、タイヤは32Cを履くなど、万全の状態だ。だが優勝候補争いは昨年度ファン・デル・ポエルと競い合ったワウト・ファン・アールト)ヴィズマ・リースアバイク)が怪我で出場できないことで、戦前の予想ではファン・デル・ポエルの対抗馬として名前が挙がったのは、今シーズン直接対決でファン・デル・ポエルをやぶったマッズ・ペデルセン(リドル・トレック)だった。
レースは序盤からアタックが繰り広げられると、落車も発生、エリア・ヴィヴィアーニ(イネオス・グレナディアス)ら多くの選手がそのままリタイアとなる。それでも落ちないハイペースは多くの選手たちを削っていく。残り150㎞の段階ですでに60名ほどまでに絞られた集団を牽引するのはアルペシン・ドゥクーニンク、グラベル世界王者のジャンニ・フェルメールシュ(アルペシン・ドゥクーニンク)を中心に6名を集団に残し、さらにライバルたちを削っていく。そのまま先行していた逃げも早々と吸収、そして40名ほどにまで人数を減らした先頭集団にはファン・デル・ポエルやフィリップセンのアルペシン勢の他に、ペデルセン、ティム・ウェレンス(UAEチームエミレーツ)、トム・ピドコック(イネオス・グレナディアス)、ステファン・キュング(グルーパマFDJ)らが顔を揃える。更には若手成長株のローランス・ピシー(グルーパマFDJ)も積極的な走りを披露、その存在感を示す。
まずは5つ星のアーレンベルグでファン・デル・ポエルが爆走、これで集団は一気に壊滅的に分散してしまう。しかし徐々に追いついてきたメンバーにより小集団が形成されるが、それも長くは続かなかった。激しい駆け引きが繰り返される中で、2つ目の5つ星モン・サ・ぺベルを前に、残り59.6㎞の3つ星の石畳区間でファン・デル・ポエルが一気にギアを踏み込んでいく。しかし誰もこれに反応することができず、これを見送ってしまう。まさかの場所でのロングスパートだったが、ファン・デル・ポエル自身もここで勝負を決めようと思っていたわけではなかった。「気が付いたら誰もついていていなかった。」と、レース後語る通り、ライバルたちへの陽動とふるい落としを目論んだところ、誰も反応できなかった、というところが本当のようだ。
しかしこれで独走態勢となったファン・デル・ポエルはあっという間にその差を広げていき、残り50㎞で早くも1分差としてしまう。後続では何度となくペデルセンやニルス・ポリット(ボーラ・ハンスグロエ)、らが追走を試みるが、これをフェルメールシュがことごとく対応し、追走の芽を潰す。このチームワークが成功したのは、この集団にさらにペデルセンが控え、ただひたすらに脚を貯めていたからだ。数的優位という理想の展開を作り出したアルペシン・ドゥクーニンクは、ファン・デル・ポエルがひたすら独走、フィリップセンがペデルセンらとの2位争いに集中という最高の展開となった。
そのままゴールまで逃げ切ったファン・デル・ポエルは余裕の勝利をガッツポーズで締めくくった。そして3分後方ではポリット、ペデルセンと表彰台を競い合ったペデルセンが力強いスプリントで2位を確保、ペデルセンは3位に終わった。レース後のインタビューでペデルセンは、「ファン・デル・ポエルは一人だけ別カテゴリーのレースをしていた。」と語るなど、その強さは圧倒的だった。そして勝利したファン・デル・ポエルの次の目標はリエージュ・バストーニュ・リエージュ、チームとしてシーズン4つ目の、自身シーズン3つ目のモニュメント制覇を狙う。
「世界チャンピオンジャーで勝てたのは嬉しいね。でもこうして勝ってみると、感動で言葉を失うよ。」ファン・デル・ポエルはレース後にその感動を語った。
パリ~ルーベ2024順位
優勝 マシュー・ファン・デル・ポエル(アルペシン・ドゥクーニンク) 5h25’28”
2位 ヤスパー・フィリップセン(アルペシン・ドゥクーニンク) +3’00”
3位 マッズ・ペデルセン(リドル・トレック)
4位 ニルス・ポリット(ボーラ・ハンスグロエ)
5位 ステファン・キュング(グルーパマFDJ) +3’15”
6位 ジャンニ・フェルメールシュ(アルペシン・ドゥクーニンク) +3’47”
7位 ローランス・ピシー(グルーパマFDJ) +3’48”
8位 ヨルディ・ミーウス(ボーラ・ハンスグロエ) +4’47”
9位 ソレン・ヴァーレンショルト(Uno-Xモビリティ)
10位 マディス・ミケルス(インターマルシェ・ワンティ)
H.Moulinette