ロンド・ファン・フランデーレン2024:世界チャンピオンのファン・デル・ポエルが混戦から抜け出し3度目の制覇!スプリント勝負の2位争いはモッツァート、3着のマシューズは降格処分で涙
モニュメント制覇というのは歴史に残る偉業となる。過去に世界チャンピオンジャージを着用してこのロンド・ファン・フランデーレンを制したのは3人、そしてマシュー・ファン・デル・ポエル(アルペシン・ドゥクーニンク)が歴代最多タイの3度目の大会制覇を世界チャンピオンの証、アルカンシエルで成し遂げて見せた。大混戦となったこのレースは、悪天候も重なり優勝したファン・デル・ポエルは独走勝利こそしたものの、ゴール後のインタビューでは「自分史上最も辛いレースだった」と語るほど、すべての選手がヘロヘロになってゴールをするというサバイバルとなった。
強さとは速さのみではない、勝負勘に加え、悪天候時のバイクコントロールの巧みさも、勝利を大きく左右するという事を明確に示すレースとなった。勝負を決めたコッペンベルグの石畳の丘では、ファン・デル・ポエルが後輪を滑らせながらもそのまま上り切る中、先頭を走っていたイヴァン・ガルシア(モビスター)が後輪を滑らせストップ、そこから再騎乗できずに押して上がることになったのを始めとしほとんど多くのトップ選手たちがバイクを降りて押して上がらざるを得ない状況に追い込まれた。何とか乗ったまま上り切ったマッテオ・ヨルゲンセン(ヴィズマ・リースアバイク)も体力を大幅に失いその後失速するなど、ファン・デル・ポエルの圧倒的な悪路でのバイクコントロールが明確に勝敗を分けるポイントとなった。
今シーズンのここまでのクラシックレース同様に、このレースでも落車が頻発する。そしてそれに加え石畳と丘の繰り返しでめまぐるしく展開が代わっていくこととなる。270㎞の長丁場だが、展開は思いのほか早く激変する。残り90㎞以上を残して早くもヘント・ウェベレヘムでゴールまで激しいバトルを演じたマッズ・ペデルセン(リドル・トレック)とファン・デル・ポエルの2強が動き出す。
まず飛び出したのはペデルセン、ファン・デル・ポエルのアシスト役でもあるジャンニ・フェルメールシュ(ヴィズマ・リースアバイク)と二人抜け出していく。これを追走する集団は20秒ほどのタイム差を保ったまま、ファン・デル・ポエルを中心に駆け引きを続ける。しかし悪天候も重なり、先行する2人を捉えようという動きにはならず、ただ泳がせている状況が続く。
しかし追走集団はペデルセンらを吸収すると 、残り55㎞を残した二度目のオウド・クワレモントの上りで、ファン・デル・ポエルが加速をする。これによって一気に人数が絞られていくと、今度はガルシアがするすると抜け出し、先頭で最大勾配20%越えのコッペンベルグへと突入していく。しかし降り始めた雨で濡れた石畳は滑りやすくなっており、後輪が空転したガルシアはバイクを止めてしまう・トラクションを失ったことで、チェーンが外れたと思ったがガルシアはバイクを直そうとするが、その脇をシクロクロスで鍛えられた悪路走行技術を持つファン・デル・ポエルが後輪を滑らせながらも上っていく。ガルシアは一度はバイクにまたがるが、滑る路面に再スタートは不可能と判断、バイクを押して歩いて上る羽目になった。これが起因となりにペースが落ちてコッペンベルグに突入した多くの選手たちも滑りやすい路面をバイクを押して上る状況となった。
残り44㎞、これで一気に先頭に立ったヴァン・デル・ポエルを追走するのは成長著しいヨルゲンセン、さらにその後ろにパラパラと選手たちが続いていく。しかし快調に飛ばすファン・デル・ポエルに対し、一気に疲弊したヨルゲンセンやペデルセンら多くの選手たちはペースが伸びず、結局一つにまとまり追走集団を形成することとなる。
快調に飛ばすファン・デルポエルがそのまま独走していくのに対し、その差がじわじわと広がっていく中、2位争いは激化する。ヨルゲンセンやペデルセンらが脱落していく中、背後からじわじわと追い上げてた集団はヴァン・デル・ポエルを追っていた強豪が顔を揃えた追走集団を追いつき、さらには脱落させて前へ進んでいく。ディラン・テウンス(イスラエル・プレミアテック)とアルベルト・ベッティオール(EFエデュケーション・イージーポスト)はそこからも抜け出して表彰台を狙ったが、結局ゴールライン直前で猛然とスプリントしてきた一団に飲み込まれてしまう。
ファン・デル・ポエルがバイクを掲げてゴールした1分後にスプリントでなだれ込んだ集団だったが、2位を獲得したのはルーカ・モッツァート(アルケアB&Bホテルズ)だった。3位に入ったマイケル・マシューズ(ジェイコ・アルーラ)だったが、斜行したと判断され降格処分、裁定後に号泣する姿が見られた。代わりに繰り上げで表彰台に上ったのはニルス・ポリット(UAEチームエミレーツ)だった。優勝候補が軒並み脱落、中堅どころがトップ10を占める珍しい結果となった。
ロンド・ファン・フランデーレン順位
優勝 マシュー・ファン・デル・ポエル(アルペシン・ドゥクーニンク) 6h15’17”
2位 ルーカ・モッツァート(アルケアB&Bホテルズ) +1’02”
3位 ニルス・ポリット(UAEチームエミレーツ)
4位 ミケル・ビョルグ(UAEチームエミレーツ)
5位 アントニオ・モルガド(UAEチームエミレーツ)
6位 マグナス・シェフィールド(イネオス・グレナディアス)
7位 オリビエ・ナーセン(デカスロンAG2R)
8位 ディラン・テウンス(イスラエル・プレミアテック)
9位 アルベルト・ベッティオール(EFエデュケーション・イージーポスト)
10位 トム・スクインス(リドル・トレック)
H.Moulinette