ティレーノ・アドリアティコ2024総括:総合優勝は盤石のヴィンゲガード、別格の走りで完勝、総合2位のアユソに”僕は人間だった”と言わせるほどの敵なし圧勝、スプリンターではミランが2勝


©Tirreno Adriatico
パリ~ニースと同時開催のティレーノ・アドリアティコ、こちらではツール・ド・フランス連覇を狙うヨナス・ヴィンゲガード(ジャンボ・ヴィズマ)が山岳ステージで圧倒的過ぎるパフォーマンスを連続して披露、全く一人だけ別次元の仕上がりで総合優勝を決めた。敵無しともいえるほどの圧倒的な勝利に、総合2位に入ったホァン・アユソ(UAEチームエミレーツ)も「僕は人間だった、ヴィンゲガードだけが違う次元でレースをしていたよ。ただただ脱帽だよ。」と完敗を認めた。
グランツールでも総合優勝争いを繰り広げるだろうライバルたちを前に、ヴィンゲガードは容赦なくその攻撃力を最大限爆発させた。連戦となった山岳ステージの2日目、第6ステージのゴールまで10㎞の上りにリチャード・カラパズ(イネオス・グレナディアス)に1分以上先行された状況で突入していく。しかしそこからチームメイトたちのアシストを得て猛追を仕掛けるとカラパズを吸収、さらに残り5㎞ではライバルのアユソとジャイ・ヒンドリー(ボーラ・ハンスグロエ)も脱落させて独走でステージ連勝、後続に大きなタイム差をつけて最終日を前に総合優勝を確定的なものとした。

©Tirreno Adriatico
「シーズンは何もツール・ド・フランスだけじゃないんだよ。常に勝利を狙って、勝利を積み重ねていくのが選手としてやるべきことだよ。ここで調子が良かったからと言ってツールでも調子が良いかと言われれば、そうではないからね。ツールにはツールに向けた準備が別に必要なんだよ。僕はまだまだ進化している途中だし、7月にピークを持っていくようにはしているので、さらにここからツールまでに進化していきたいと思っているよ。」ヴィンゲガードはあくまでもツールがシーズン最大の目的としながらも常に貪欲に勝利を狙っていることを明かした。
2022年のジロ・デ・イタリアで表彰台に上がったヒンドリーは、チームにプリモズ・ログリッチが加入したことで単独でのチーム総合系エースから、チームの2本柱の一角となったことで、プレッシャーから解放されたのか久しぶりに素晴らしい走りを見せた。今大会総合での表彰台を獲得、今シーズンのグランツールでの活躍に期待が持てそうだ。

©Tirreno Adriatico
しかし今年のティレーノ・アドリアティコで総合系以外で注目を浴びたのがスプリンターたちの覇権争いだ。中でも今シーズンからリドル・トレックに移籍したヨナタン・ミラン(リドル・トレック)は今大会ステージ2勝を挙げ、新天地でその存在感を見せつけた。昨シーズン大きく飛躍を遂げたスプリンターはこれで今シーズン早くも3勝目だ。対してヤスパー・フィリップセン(アルペシン・ドゥクーニンク)は勝利こそ上げたが、今回はその1勝にとどまった。昨シーズンはツール・ド・フランスでのステージ4勝を含む19勝を挙げるなど大活躍だったが、更なる高みを目指し、スプリントトレインが充実するチームへの移籍も口にするなど、勝利へのハングリーさを見せている。
今大会で気になった選手と言えばヴィンゲガードのアシストをしていたキアン・アイデブルックス(ヴィズマ・リース・ア・バイク)だろう。昨年度走ったメジャーなステージレースではすべて総合トップ10入り、初参加となったグランツールのブエルタ・ア・エスパーニャでは総合8位に入るなど、21歳としては驚異的な結果を残している。このレースでも総合7位に入り、今後のレースではエースとしての役割を与えられる可能性も高いだろう。レムコ・エヴァネポエル(ソウダル・クイックステップ)との比較もされるが、どちらかと言えば勝利を量産するよりはステージレースやグランツールでの総合を狙える安定感が最大の武器の選手と言えるだろう。

©Arkea B&B Hotels
そしてもう一人気になったのがケヴィン・ヴォークラン(アルケアB&Bホテルズ)だ。フランス期待の22歳の若手はトラック出身の選手ではあるが、TTでも山岳でもそこそこ走れてしまうオールラウンドの選手であり、これからが楽しみな選手の一人と言えるだろう。

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ティレーノ・アドリアティコ総合順位(全7ステージ)
優勝 ヨナス・ヴィンゲガード(ヴィズマ・リース・ア・バイク) 26h22’23”
2位 ホァン・アユソ(UAEチームエミレーツ) +1’24”
3位 ジャイ・ヒンドリー(ボーラ・ハンスグロエ) +1’52”
4位 アイザック・デル・トロ(UAEチームエミレーツ) +2’20”
5位 ベン・オ・コナー(デカスロンAG2R) +2’24”
6位 サイメン・アレンスマン(イネオス・グレナディアス) +2’25”
7位 キアン・アイデブルックス(ヴィズマ・リース・ア・バイク) +3’10”
8位 レナード・カムナ(ボーラ・ハンスグロエ) +3’12”
9位 ティム・ピドコック(イネオス・グレナディアス) +4’05”
10位 ケヴィン・ヴォークラン(アルケアB&Bホテルズ) +4’24”
H.Moulinette
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