ブエルタ・ア・エスパーニャ2023第21st:逃げ集団がゴール前大集団に飲み込まれるもグローヴスがスプリント勝利!歴史的瞬間!クス、ヴィンゲガード、ログリッチでユンボ表彰台独占(ダイジェストあり)
ブエルタ・ア・エスパーニャは最終ステージも最後の瞬間まで目が離せない激戦となった。逃げ続けた6名がゴール前500mで追いつかれるが、今日も逃げに乗ったレムコ・エヴァネポエル(ソウダル・クイックステップ)が追いつかれると同時にロングスパート、それに反応したのはポイント賞ジャージのカデン・グローヴス(アルペシン・ドゥクーニンク)だった。エヴァネポエルがポイント賞ジャージ興味がないそぶりを見せてはいたが、ステージ勝利を狙って逃げられてステージを制されては、結果的に危険と判断し単騎で逃げに乗った。グローヴスは先行したエヴァネポエルを追走すると、自らのスタイルではないロングスパートをゴールラインまで継続して今大会3勝目を挙げるとともに、自らのポイント賞を確定させた。
そして総合順位も確定、総合優勝がスーパーアシストとしてプリモズ・ログリッチとヨナス・ヴィンゲガードのユンボ・ヴィズマツートップを支えてきたセップ・クス(ユンボ・ヴィズマ)がブエルタ・ア・エスパーニャ2023の頂点に立った。そして総合2位がヴィンゲガード、3位がログリッチと表彰台をユンボ・ヴィズマが独占して見せた。これは1966年以来57年ぶりとなった。そしてこの勝利により、異なる選手ですべてのグランツールをスイープ(勝利)した史上初のチームとなった。3者が大きなトラブルもなく走り切った凄さ、そしてエースが誰であるかを流動的にしながらも、しっかりとクスがそれを守り続けての勝利、チームワークと共に、戦術と技術だけでは計り知れない凄さを感じさせた。またこの日は、罰金を払ってでも3大グランツール制覇を表現した未登録のスペシャルジャージを着用した。
山岳賞は総合で脱落したことを機に気持ちを切り替えてステージ勝利狙い、連日のように山岳で逃げまくったエヴァネポエルが獲得した。ステージ勝利の副産物的に獲得した後は、明確な意思をもってそのジャージをキープし続けた。最終ステージでも逃げるなど、無尽蔵なスタミナは圧巻だが、たった一日の大ブレーキで総合争いから脱落したのは痛かった。エヴァネポエルはこの走りで総合敢闘賞も獲得、大会連覇こそ逃したが、きっちりと結果を残すあたりが、世代最強の一角を占める男といえるだろう。
そして新人賞ジャージは装具4位のホァンアユソ(UAEチームエミレーツ)が獲得した。実はUAEチームエミレーツも異なる選手で今シーズンのグランツールの新人賞を総なめにしており、これからがとても楽しみなチームと言えるだろう。ジロ・デ・イタリアではジョアオ・アルメイダが、ツール・ド・フランスではタデイ・ポガチャルが、そしてアユソと、若い世代が確実に成長してきている。数年後今シーズンのユンボ・ヴィズマの軌跡を再現できるとすればこのチームかもしれない。
チーム総合は文句なしでユンボ・ヴィズマ、各ステージで各チームのトップ3人のタイムの合計できそうこのタイトルだが、総合トップ3をユンボ・ヴィズマが、それも山岳ステージでもこの3人が1‐2‐3を2度も決めているのだから、他チームは全く太刀打ちができないだろう。
記録づくめ、記憶にも深く刻まれた今大会、若い世代の台頭とともに、改めてこのスポーツがチームスポーツであること、そして信頼と人間性はリンクしていることを感じさせる大会となった。10年ぶりのアメリカ人選手の勝利、「僕はエースの器ではないので」と語っていた男が、エースとして立派に総合リーダージャージを最終日まで守る抜いたことは、今後のクスの人生を大きく変えるかもしれない。
ブエルタ・エ・エスパーニャ第21ステージダイジェスト
https://youtu.be/zt_BxLBGq2o?si=_dUgbvWAlVjtNJ0s
ブエルタ・ア・エスパーニャ第21ステージ順位
1位 カデン・グローヴス(アルペシン・ドゥクーニンク) 2h24’13”
2位 フィリッポ・ガンナ(イネオス・グレナディアス)
3位 ニコ・デンツ(ボーラ・ハンスグロエ)
4位 ユーゴ・ページ(インターマルシェ・サーカスワンティ)
5位 イヴァン・ガルシア(モビスター)
6位 ルイ・コスタ(インターマルシェ・サーカスワンティ)
7位 マレィン・ファン・デン・ベルグ(EFエデュケーション・イージーポスト)
8位レムコ・エヴァネポエル(ソウダル・クイックステップ)
9位 ドリエス・ファン・ヘステル(ダイレクトエナジーズ)
10位 レナード・ケムナ(ボーラ・ハンスグロエ)
ブエルタ・ア・エスパーニャ総合順位
1位 セップ・クス(ユンボ・ヴィズマ) 76h48’21”
2位 ヨナス・ヴィンゲガード(ユンボ・ヴィズマ) +17”
3位 プリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ) +1’08”
4位 ホァン・アユソ(UAEチームエミレーツ) +3’18”
5位 ミケル・ランダ(バーレーン・ヴィクトリアス) +3’37”
6位 エンリック・マス(モビスター) +4’14”
7位 アレクサンダー・ヴラソフ(ボーラ・ハンスグロエ) +7’53”
8位 キアン・アイデブルックス(ボーラ・ハンスグロエ) +8’00”
9位 ジョアオ・アルメイダ(UAEチームエミレーツ) +10’08”
10位 サンティアゴ・ブイトラゴ(バーレーン・ヴィクトリアス) +11’38”
山岳賞
レムコ・エヴァネポエル(ソウダル・クイックステップ)
総合敢闘賞
レムコ・エヴァネポエル(ソウダル・クイックステップ)
ポイント賞
カデン・グローヴス(アルペシン・ドゥクーニンク)
新人賞
ホァン・アユソ(UAEチームエミレーツ)
チーム総合
ユンボ・ヴィズマ
H.Moulinette