ブエルタ・ア・エスパーニャ2023第17st:もうユンボは止まらない!超絶急勾配アングリルで、最強トップ3が今大会2度目の1‐2‐3達成!クスは粘りの走りで総合リーダー死守(ダイジェストあり)
もはや最強のユンボ・ヴィズマ3トップを止められるチームはあるのだろうか?総合でもトップ3を独占するセップ・クス、ヨナス・ヴィンゲガード、プリモズ・ログリッチのユンボ・ヴィズマの3エースが今大会最難関ステージとも言える平均勾配20%越えの超絶急勾配山岳アングリルの頂上バトルで、今大会2度目のステージ1‐2‐3を達成して見せた。ログリッチとヴィンゲガードが先行しゴール、そしてそれに遅れたクスも踏ん張り切りミケル・ランダ(バーレーン・ヴィクトリアス)との3位争いを制しゴール、ヴィンゲガードのタイム差は一気に8秒まで縮まったが、自らの誕生日に自力で総合首位をキープして見せた。
クスはもしかしたら試されたのかもしれない。自力でこのアングリルをクリアしなければ、総合リーダーの座はログリッチかヴィンゲガードの物になってしまう。だからこそ遅れながらもそこからズルズルと離されることなく堪え粘ったことで総合リーダーの座をキープ、これによりステージ終了後のヴィンゲガードの「クスが総合優勝をするのを見たい」、ログリッチの「最後まで戦い続けろ」という言葉からも、クスに明確に本来のアシストの役割を求めることはせずに、明確なエースというのを決めないままにフリーな形で走らせ続けるのかもしれない。
総合上位争いはステージ4位に入ったランダが順位を上げたが、トップ3とそれ以外の選手たちとの差はこのステージでさらに大きく広がってしまった。ホァン・アユソ(UAEチームエミレーツ)は後れをとったものの踏ん張り切り総合4位を死守、だがチームメイトのマルク・ソレル(UAEチームエミレーツ)が大きく遅れ、トップ10陥落となってしまった。
難関アングリルでのゴール、そんなゴールが待ち構える僅か124.4㎞のショートコースで逃げ切り勝利を狙ったのは、またしてもレムコ・エヴァネポエル(ソウダル・クイックステップ)だった。今大会総合脱落後は、山岳賞ジャージ奪取とステージ優勝のダブル狙いで逃げまくっているエヴァネポエルは、この日もスタート直後から飛び出していく。
一度は吸収されるも再びアタックを決めると、最終的には11名の逃げとなる。だが後続のメイン集団もそれをやすやすとは許さずハイペースでの追いかけっこが続く。そしてこの日最初の山岳が始まるころにはその逃げはエヴァネポエルとそのチームメイト、マッティア・カッタネオ(ソウダル・クイックステップ)の二人にまで絞られていた。
この日総合上位勢でまず動いたのはマルク・ソレル(UAEチームエミレーツ)。何とかエヴァネポエルに合流を果たそうとメイン集団から飛び出し追走を開始する。しかしこの動きに反応したのはユンボ・ヴィズマではなくミケル・ランダの総合順位を守りたいバーレーン・ヴィクトリアスだった。
先行するエヴァネポエルが1分20秒のリードを保って残り12㎞からのアングリルの突入するが、ソレルの逃げはその前につかまってしまい、UAEチームエミレーツの作戦は空振りに終わる。そしてここでエネルギーを使いい果たしたソレルはこの日最大の敗者となってしまう。
エヴァネポエルは好調にペースを刻むが、この日攻撃的だったのは追走を仕掛けていたバーレーン・ヴィクトリアスだった。そのままハイペース牽引を続けるのはランダ、サンティアゴ・ブイトラゴ、とワウト・ポエルスの3人。特にポエルスの先頭での驚異的なまでのペースに、エヴァネポエルは上り中盤で捉まり、残り4.6㎞の段階では何とユンボ・ヴィズマのトップ3以外の全ての選手が脱落してしまう。
これで状況はバーレーン・ヴィクトリアスとユンボ・ヴィズマの3対3となる。だがそこから最初に脱落したのは総合ジャンプアップを狙っていたブイトラゴ、だがそれでもポエルスはランダ優先でペースを緩めない。すると残り2.9㎞で突然ログリッチがペースアップしながらそのままアタックを仕掛ける。これであっという間に先頭はログリッチ、ヴィンゲガード、クスのユンボ・ヴィズマ3トップ体制となる。実質的にはこれで勝負ありだったが、それでもペースを緩めずさらに加速していくログリッチに対し、総合リーダージャージのクスは残り1.9㎞で遅れてしまう。
万事休すかと思われたが、ここで天はクスに味方をする。一度は追い落としたランダが合流、二人となった追走はペースが安定、一度は20秒越えまで広がったランダとヴィンゲガードとのタイム差を徐々にだが詰めていく。
先頭ではログリッチがヴィンゲガードを引き連れゴール、そしてその後方では頂上後の僅から急勾配の下りで全力で加速したクスが19秒差でゴールを果たし、自らのバースデーを総合リーダージャージキープという形で祝った。
ランダの後方ではアシストし続けたポエルスがそのまま5位でゴール、更にその後ろにhジョアオ・アルメイダ(UAEチームエミレーツ)、近い将来エースになるであろうキアン・アイデブルックス(ボーラ・ハンスグロエ)が素晴らしい猛追を見せ入った。
これで総合順位はまたしても4位以降でまたしてもシャッフル、山岳での激しい展開が続いている。
プリモズ・ログリッチ(ステージ1位、総合3位):「クスが脱落したのは知っていたよ。でも彼なら闘えるし、自分を信じて走り抜けばやれると思っていたよ。」
ヨナス・ヴィンゲガード(ステージ2位、総合2位):「正直まだクスが総合リーダーでほっとしているよ。個人的にはクスがブエルタを制するのを見たいと思っているよ。」
セップ・クス(ステージ3位、総合1位):「正直こんなポジションでこの日を迎えるとは夢にも思っていなかったよ。いつも通りのアシストとしてきたはずが、この最高のジャージに袖を通すことができただけではなくキープし続けるという最高の経験を積み重ねているよ。これは僕の中で新たな自信につながったし、新たな自分を発見できたよ。最強のチームメイト二人と走れるのは光栄なことだし、彼らはチャンピオンだからね。アシストに切り替えろと言われれば喜んで彼らのために走るけど、でも僕自身チャンスは狙いたいとは正直言えば思ってるよ。」
ブエルタ・エ・エスパーニャ第17ステージダイジェスト
https://youtu.be/aOF7BJu74Dg?si=tsjpJcZW-acreUxc
ブエルタ・ア・エスパーニャ第17ステージ順位
1位 プリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ) 3h15’56”
2位 ヨナス・ヴィンゲガード(ユンボ・ヴィズマ)
3位 セップ・クス(ユンボ・ヴィズマ) +19”
4位 ミケル・ランダ(バーレーン・ヴィクトリアス)
5位 ワウト・ポエルス(バーレーン・ヴィクトリアス) +44”
6位 ジョアオ・アルメイダ(UAEチームエミレーツ) +58”
7位 キアン・アイデブルックス(ボーラ・ハンスグロエ) +1’20”
8位 サンティアゴ・ブイトラゴ(バーレーン・ヴィクトリアス)
9位 ホァン・アユソ(UAEチームエミレーツ) +1’42”
10位 エンリック・マス(モビスター) +1’43”
ブエルタ・ア・エスパーニャ総合順位
1位 セップ・クス(ユンボ・ヴィズマ) 60h34’21”
2位 ヨナス・ヴィンゲガード(ユンボ・ヴィズマ) +08”
3位 プリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ) +1’08”
4位 ホァン・アユソ(UAEチームエミレーツ) +4’00”
5位 ミケル・ランダ(バーレーン・ヴィクトリアス) +4’16”
6位 エンリック・マス(モビスター) +4’30”
7位 キアン・アイデブルックス(ボーラ・ハンスグロエ) +6’43”
8位 アレクサンダー・ヴラソフ(ボーラ・ハンスグロエ) +7’38”
9位 ジョアオ・アルメイダ(UAEチームエミレーツ) +9’26”
10位 サンティアゴ・ブイトラゴ(バーレーン・ヴィクトリアス) +11’26”
H.Moulinette