ブエルタ・ア・エスパーニャ2023第16st:ステージを制したのは復調のヴィンゲガード、総合トップ3体勢変わらずもタイムはぐっと縮まる、事故のファン・ホーイドンクに捧げる勝利(ダイジェストあり)
今大会にツール・ド・フランス覇者として乗り込んできたヨナス・ヴィンゲガード(ユンボ・ヴィズマ)、当初はログリッチとのダブルエース体制かと思われたが、前半戦疲れと思われたのは実は腹痛からであったことを明かした。「第4ステージでは”デュムラン”をしなきゃならなかったんだよ。」と元チームメイトのトム・デュムランがジロ・デ・イタリアを制した際に腹痛で道路わきで雉撃ち(野グソ)をする羽目になったことを揶揄しながら明かした。
しかしここへきて総合3位のヴィンゲガードは絶好調、チームメイトでスーパーアシストのセップ・クス(ユンボ・ヴィズマ)が総合リーダーを守る中、第13ステージに引き続きゴールまでの激坂でアタックを敢行、ライバルたちは誰もそれに反応ができずそのまま独走態勢でステージ2勝目を挙げた。チームオーダーはわからないが、現実的に最強とも呼べる走りは、同年度ツール・ド・フランスとブエルタ・ア・エスパーニャのダブル勝利が可能であることは間違いないだろう。そしてレース前にチームメイトのネイサン・ホーイドンク(ユンボ・ヴィズマ)が自動車を運転中に意識を失い事故を起こし人工的な昏睡状態での治療が行われていたが、最後の上りゴールバトルを前に容態が安定したことを報告を受け、爆発的な加速で勝利、安堵の表情を浮かべながら勝利をファン・ホーイドンクに捧げた。
これで総合争いでもクスに29秒差の総合2位へとジャンプアップを果たした。総合トップ3は引き続きユンボ・ヴィズマが独占、しかしライバルチームのユンボ・ヴィズマの3エースはお互いにアタックはしない、という事前の予想を覆し、この日はクス以外のヴィンゲガードとログリッチはアタックを見せるなど、妥協なき攻撃をチームは続けている。
平坦のち激坂、通常のレースではあまり考えられないそんな変則ステージが用意されるのはいつでもブエルタ・ア・エスパーニャ、そしてそんなステージは意地の張り合いと消耗戦になることが極めて多い。そんな第16ステージは残り80㎞で先行していた逃げが捉まると、ポイント賞ジャージのカデン・グローヴス(アルペシン・ドゥクーニンク)らが新たな逃げを形成するが、これはグローヴスが中間スプリントを狙ったため、この日の仕事を終えると、逃げはまたも集団に飲み込まれ、そのまま最後の激坂バトルへと向かった。
そして迎えた最終決戦、なんと先に仕掛けたのは追う展開のUAEチームエミレーツ勢ではなくヴィンゲガードだった。残り3.9㎞で渾身のアタック一閃、あっという間に後続との差を広げていく。これを単独で追走したのは弱冠21歳のフィン・フィッシャー・ブラック(UAEチームエミレーツ)、元ユンボ・ヴィズマの育成チームにいた男が、抵抗を見せる。
しかしヴィンゲガードは軽やかに激坂を上り、どんどんと後続との差を広げていく。フィッシャー・ブラックに引き続き、ワウト・ポエルス(バーレーン・ヴィクトリアス)、マイケル・ストーラー(グルーパマFDJ)が飛び出していくが、これもヴィンゲガードには全く届かない。
その背後ではプロモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ)がアタックを仕掛ける。これにはさすがにホァン・アユソ(UAEチームエミレーツ)やエンリック・マス(モビスター)らが反応する。ただこれにもクスはのらりくらりと反応をし、褪せる様子は全くない。結局ヴィンゲガードはチームメイトのログリッチとクスに1分以上の差を詰める形でステージを終えた。
ますます見えなくなったユンボ・ヴィズマの戦略、無駄な直接バトルはないものと思うが、誰で総合優勝を狙うのかはこれからのステージの調子でいかようにでも変化する可能性がありそうだ。
ヨナス・ヴィンゲガード(ステージ1位、総合2位):「今日はレース前に友人でありチームメイトのホーイドンクの事故を聞いていたから心穏やかではなかったよ。でも彼が無事だと知ってほっとしたよ。彼の為にも今日はどうしても勝ちたかったんだよ。総合争い?ただ僕はレースを楽しむだけだよ。」
ブエルタ・ア・エスパーニャ第16ステージダイジェスト
https://youtu.be/VbZc1ixatc0?si=dchvAI-KC1iFA28L
ブエルタ・ア・エスパーニャ第16ステージ順位
1位 ヨナス・ヴィンゲガード(ユンボ・ヴィズマ) 2h38’23”
2位 フィン・フィッシャー・ブラック(UAEチームエミレーツ) +43”
3位 ワウト・ポエルス(バーレーン・ヴィクトリアス) +49”
4位 マイケル・ストーラー(グルーパマFDJ) +55”
5位 ホァン・アユソ(UAEチームエミレーツ) +1’01”
6位 エンリック・マス(モビスター)
7位 アレクサンダー・ヴラソフ(ボーラ・ハンスグロエ)
8位 プリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ)
9位 ミケル・ランダ(バーレーン・ヴィクトリアス) +1’05”
10位 セップ・クス(ユンボ・ヴィズマ)
ブエルタ・ア・エスパーニャ総合順位
1位 セップ・クス(ユンボ・ヴィズマ) 57h18’10”
2位 ヨナス・ヴィンゲガード(ユンボ・ヴィズマ) +29”
3位 プリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ) +1’33”
4位 ホァン・アユソ(UAEチームエミレーツ) +2’33”
5位 エンリック・マス(モビスター) +3’02”
6位 マルク・ソレル(UAEチームエミレーツ) +3’28”
7位 ミケル・ランダ(バーレーン・ヴィクトリアス) +4’12”
8位 アレクサンダー・ヴラソフ(ボーラ・ハンスグロエ) +4’58”
9位 キアン・アイデブルックス(ボーラ・ハンスグロエ) +5’38”
10位 ジョアオ・アルメイダ(UAEチームエミレーツ) +8’43”
H.Moulinette