ブエルタ・ア・エスパーニャ2023第2st :二日続けてまさかの雨模様で落車オンパレード、主力ログリッチやトーマス、総合リーダーのミレッシらも落車、荒れた展開を制したのは飛び出したクロン!(ダイジェストあり)
スペインのブエルタ・ア・エスパーニャと言えば乾いた大地と灼熱のレース、しかし今年は開幕ステージに引き続きこの第2ステージでも雨に祟られた。2か月ほど雨が降っていなかった地域に大雨が降ったことで、たまっていた砂ぼこりなどが選手たちのタイヤを滑らせ、このステージでは何度となく落車が発生、プリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ)、ゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアス)、更には昨日総合リーダージャージを獲得したロレンツォ・ミレッシ(チームDSMフィルメニッヒ)も落車してしまう。
そんなレースは悪天候が加味され、残り9㎞地点の通過が総合タイム差となることがレース前に発表され、ゴール順位によるボーナスタイムはそのまま通常通り与えられると発表された。複雑となったレースは、残り9㎞で総合勢がリスク回避の為にペースを落としたのに対し、ステージ優勝を狙うメンバーが動く。そしてその中から飛び出したアンドレアス・クロン(ロット・デスティニー)が見事グランツール初優勝を果たした。そしてクロンは天を指さし、先日事故死したロット・デスティニー育成チームで来シーズンのトップチーム昇格が決まっていた今年のU-23パリ~ルーベ勝者のティル・デ・デッカーにその勝利を捧げた。
そしてまさかの手集計で9㎞地点でのデータを確認した結果、この日序盤から逃げていたアンドレア・ピッコロ(EFエデュケーション・イージーポスト)が新たな総合リーダーに立った。昨年度のジャパンカップにも来日しており2位に入っていた22歳の若者がブエルタでも躍動している。
この日のステージはスタートから雨、暑さを予想していた選手たちからすれば、想定外の路面コンディションに気を遣わねばならない。そんな中救済措置の拡大のみならず、冠水したコースを避けるためにスタート地点も変更になるなど、バタバタのまま迎えた第2ステージは序盤から動く。ピッコロ、ハビエル・ロモ(アスタナ・カザフスタン)、マッテオ・ソブレロ(ジェイコ・アルーラ)ら5人がこの日の逃げを形成するが、総合リーダーを抱えるチームDSMフィルメニッヒが大きなタイムアドバンテージを許さない。
そしてこの日は落車のみならず、道路に流れ出した落ち葉やごみなどによるパンクも続出する。総合優勝候補のレムコ・エヴァネポエル(ソウダル・クイックステップ)、ヨナス・ヴィンゲガード(ユンボ・ヴィズマ)、トーマスらはパンクでのバイク交換を余儀なくされるが、雨のレースではペースが上がり切らない為、比較的容易に集団復帰を果たすことができた。
残り60㎞を切ると再び雨脚が強まる。これにより落車が次々と発生する。まずは逃げていたピッコロが落車、水からバイクのチェーンを直そうとするが諦めてバイク交換となる。ここから何とか先頭集団への復帰を果たし、この日の総合リーダージャージ奪取へとつなげて見せた。
更にはトーマス、ログリッチら主力が落車すると、ヴィンゲガードらがメイン集団内でペースを落として主力の復帰を待つように促すが、ソウダル・クイックステップ、チームDSMフィルメニッヒらはそれを拒否し、ペースを緩めない。
残り15㎞を切り先頭に残るはピッコロとロモの二人だけ、しかしこの二人は昨日の総合リーダーのミレッシが落車で遅れているために、残り9㎞までタイム差を確保したまま逃げ続ければ総合リーダージャージの可能性がある。そのモチベーションで逃げ続ける2人、特に総合順位が上位のピッコロはそのままペースを緩めることなく山岳ポイントのボーナスタイムも獲得、猛追するメイン集団を抑えて残り9㎞を通過しこの日の総合リーダージャージをこの段階で暫定的に獲得する。追走のメイン集団も残り9㎞に入るが、ここで総合勢は一斉に足を休め、ステージ優勝はスプリンターらの出番となる。一気に25名ほどに絞られた集団だったが、残り3㎞でクロンがチャンスと見るやアタックを敢行する。ドンピシャのタイミングで飛び出したクロンは、そのままゴールまで逃げ切り鮮やかに勝利を上げた。2位争いはスプリント勝負となり、カデン・グローブス(アルペシン・ドゥクーニンク)が入った。
主催者は集計に時間を要したが、最終的にピッコロの勝利が確定、新たなヒーローが誕生した。開幕2ステージで二人の若手総合リーダーが誕生、だがそれは同時に今年のブエルタが波乱含みであることを連想させる。すでに2ステージとも雨となり、明日第3ステージのの頂上ゴールバトル第1ラウンドも雨予想が出ている。
アンドレアス・クロン(ステージ1位):「今日はレース前から混沌とするだろう予想ができていたので、なんとなく勝てる気がしていたんだ。この勝利を母に捧げようと思ったけど、今チームはデッカーの死で大変な時にある。だからこの勝利はデッカーへの手向けにするよ。母にはもうちょっと待ってもらって、2勝目を届けたいね。」
アンドレア・ピッコロ(総合1位):「レースが残り9㎞で終わりになるようなものだったから、それを踏まえて逃げ切りステージ勝利と総合リーダー獲得という二つのシナリオを用意していたんだよ。うまくはまってよかったよ。」
ゲラント・トーマス:「アイススケートリンクの上を走っているようだったよ。」
ブエルタ・ア・エスパーニャ第2ステージダイジェスト
https://youtu.be/O_Lr_2l8Z-I?si=7Msj12GApKnoWovs
ブエルタ・ア・エスパーニャ第2ステージ順位
1位 アンドレアス・クロン(ロット・デスティニー) 4h10’06”
2位 カデン・グローブス(アルペシン・ドゥクーニンク)
3位 アンドレア・ヴェンダラメ(AG2Rシトロエン)
4位 アンドレア・バジョーリ(ソウダル・クイックステップ)
5位 フェルナンド・バルチェロ(カハルーラル・セグロスRGA)
6位 イヴァン・ガルシア(モビスター)
7位 ロメイン・グレゴイレ(グルーパマFDJ)
8位 レナート・ファン・イートヴェルト(ロット・デスティニー)
9位 マレィン・ファン・デン・ベルグ(EFエデュケーション・イージーポスト)
10位 コービー・ゴッセンス(インターマルシェ・サーカス・ワンティ)
H.Moulinette
ブエルタ・ア・エスパーニャ総合順位
1位 アンドレア・ピッコロ(EFエデュケーション・イージーポスト) 4h27’33”
2位 ハビエル・ロモ(アスタナ・カザフスタン) +11”
3位 イヴァン・ガルシア(モビスター) +13”
4位 ロメイン・バルデ(チームDSMフィルメニッヒ)
5位 マックス・プール(チームDSMフィルメニッヒ)
6位 ネルソン・オリベイラ(モビスター)
7位 イマノール・エルヴィーティ(モビスター)
8位 エンリック・マス(モビスター)
9位 エイナー・ルビオ(モビスター)
10位 シャーン・フリン(チームDSMフィルメニッヒ)
H.Moulinette