ツール・ド・フランス2023第14st:ロドリゲスが下りで抜け出し独走勝利で総合3位に!ヴィンゲガードとポガチャルはアタックの応酬!序盤の落車も影響し総合大シャッフル(ダイジェストあり)
大会はまだ中盤だというのに、山岳ステージごとにまるで最終決戦かのような激しいバトルが繰り返され、このステージはさらにその集大成のようなサバイバルバトルが繰り広げられた。さらにはステージ序盤で大落車が発生し、多くの総合上位選手にリタイアが続出した事も影響し、総合順位が大きく変動するステージとなった。
ステージを制したのはカルロス・ロドリゲス(イネオス・グレナディアス)、一旦は激しいバトルを繰り広げるヨナス・ヴィンゲガード(ユンボ・ヴィズマ)とタディ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)に超級山岳の上りで置き去りにされ1分以上のタイム差をつけられた。しかし2人が駆け引きに入りペースダウンしたことで一気に差を詰めると、ゴールまでの下りでは総合表彰台を狙いリスクを冒しての攻めの走りで独走態勢へと持ち込み、グランツール初勝利を成し遂げるとともに、総合でも3位へとジャンプアップを果たした。
総合優勝争いは、超級山岳の上りで動き、一時はポガチャルが単独先頭に躍り出るもヴィンゲガードが追い付き、山頂でのボーナスポイントを取るべくポガチャルが再度仕掛けるが、なんとモトバイクが遅すぎ完全にその進路を塞いでしまう形となってしまう。これでペースダウンしたまま頂上付近を通過する際には、今度はヴィンゲガードが仕掛けボーナスタイムを獲得する。しかしゴールでは逆にポガチャルが先着しボーナスタイムを獲得、結果的に二人のタイム差は昨日に比べわずか1秒広がる形となった。
この日のステージは僅か150㎞のショートステージ、だがそれは波乱の幕開けを迎える。スタートから間もなく、まだ逃げが決まる前の段階で集団で大落車が発生、20名ほどの選手たちが路面に叩き付けられるとともに、多くの選手たちがその進路を塞がれてしまう形となった。すぐさま主催者判断でレースは止められ、ニュートラル状態が宣言される。レースは集団最後部に一定数の救急車やメディカルカーの帯同が義務付けられており、今回はこのクラッシュでそれらがフルに活動を余儀なくされたことから、レースの再スタートにはおよそ30分を擁した。
この落車で総合13位のルイス・メインチェス(インターマルシェ・サーカス・ワンティ)がまずリタイアを余儀なくされた。更にはエステバン・チャベス(EFエデュケーション・イージーポスト)も再スタート後にリタイアするなど、この落車でまず複数の選手たちがツールを去ることとなった。そしてさらに最初の山岳からの下りで、今度は総合12位のロメイン・バルデ(チームDSMフィルメニッヒ)が激しく落車、こちらもそのままリタイアとなってしまう。
この日は逃げが一度は決まったものの、マイケル・ウッズ(イスラエル・プレミアテック)、ミケル・ランダ(バーレーン・ヴィクトリアス)、ギウリオ・チッコーネ(リドル・トレック)らの強力なメンバーが逃げたこともあり、ユンボ・ヴィズマらが早めにペースを上げ潰しにかかった。そして残り60㎞以上を残し、ラマス峠の途中で早々と逃げは吸収されてしまう。そしてこのラマス峠でのペースアップで、昨日までの総合8位トム・ピドコック(イネオス・グレナディアス)、総合6位のサイモン・イェーツ(ジェイコ・アルーラ)、ギヨーム・マルタン(コフィディス)、フェリックス・ガル(AG2Rシトロエン)らが脱落してしまう。そのまま頂上を超えた段階で、先頭集団は僅か20名ほどに絞られたが、ピドコックを除く主力選手たちは下りで何とか合流を果たした。
しかしこの日最後の超級山岳、コル・デ・ジュ・プラン峠に入ると、ユンボ・ヴィズマがさらにペースを上げ、集団はどんどんとその人数を減らしていく。頂上まで残り9㎞、セップ・クス(ユンボ・ヴィズマ)が最後のアシストとして牽引するころには、先頭は僅か7名にまで絞られる。ヴィンゲガード、ポガチャル、アダム・イェーツ(UAEチームエミレーツ)、ロドリゲス、ジャイ・ヒンドリー(ボーラ・ハンスグロエ)、ガルが先頭集団を形成し、ペッロ・ビルバオ(バーレーン・ヴィクトリアス)、サイモン・イェーツ、ダビ・ガウドゥ(グルーパマFDJ)が脱落してしまう。
そして頂上から5.5㎞ではガル、そしてヒンドリーの順でさらに脱落、先頭はついに5人に絞られる。しかし残り4.5㎞で今度はアダム・イェーツが先頭に出てポガチャルのアシストを始めると、ロドリゲス、そしてクスが脱落する。更にアダム・イェーツは目一杯まで牽引をし終えると、ついにポガチャルがアタック、そのままヴィンゲガードを引き離しにかかる。一旦はその差が開いていったが、ここからがヴィンゲガードの走り、じわりじわりとその差を詰めていくと、頂上まで1.5㎞でついにポガチャルを捉える。こうなれば山頂でのボーナスタイムを巡り駆け引きが始まってしまい、ペースが一気に落ちていく。
これを生かしたのがロドリゲスとアダム・イェーツだった。テンポよく上り続けると、そのまま頂上からの下りで先行する2人に追いつくと、ロドリゲスはそのままさらに加速、ダウンヒルでのアタックを決める。総合3位のヒンドリーとのタイム差を考えれば、ぎりぎり逆転の可能性があるだけに、リスクを承知の上での神風ダウンヒルとなった。そしてそのまま見事ゴール、僅か1秒ではあるが、ヒンドリーを追い落として総合3位へと上り詰めた。これでチームは連勝、ピドコックが総合で脱落したが、ロドリゲスは好調さを維持、新たな才能が台頭してきた。
ヴィンゲガードはこの流れの中で山岳賞ジャージも獲得、総合争いの副産物として、思わぬジャージを手にすることとなった。
カルロス・ロドリゲス(ステージ1位、総合3位):「ツールに出場するだけでも夢のようなのに、勝利できてしまうなんて!言葉にならないよ。今日の目的の一つは総合順位を上げるためにタイムを稼ぐことだったから、そもそも大成功だよ。下りでリスクはとったけど、限界までは攻めなかったよ。そこはバランスをとってベストな選択をしたんだ。」
タデイ・ポガチャル(ステージ2位、総合2位):「ヴィンゲガードとはタイトだね。このままずっとこんな感じで行って、差がつくのは個人TTと最後の山岳ぐらいしかないかもしれないね。」
ヨナス・ヴィンゲガード(ステージ3位、総合1位):「モトバイクが進路を塞いだおかげで、山頂は獲れたね。まあでも僕とポガチャルの差はないと思うよ。本当にイーブンだと思う。このままパリまで行くかもしれないね。だからただベストを尽くすだけだよ。」
ツール・ド・フランス第14ステージダイジェスト
ASO 公式ダイジェスト https://youtu.be/qD5AJuTii58
ツール・ド・フランス第14ステージ
1位 カルロス・ロドリゲス(イネオス・グレナディアス) 3h58’45”
2位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ) +05”
3位 ヨナス・ヴィンゲガード(ユンボ・ヴィズマ)
4位 アダム・イェーツ(UAEチームエミレーツ) +10”
5位 セップ・クス(ユンボ・ヴィズマ) +57”
6位 ジャイ・ヒンドリー(ボーラ・ハンスグロエ) +1’46”
7位 フェリックス・ガル(AG2Rシトロエン)
8位 ペッロ・ビルバオ(バーレーン・ヴィクトリアス) +3’19”
9位 サイモン・イェーツ(ジェイコ・アルーラ) +3’21”
10位 ギヨーム・マルタン(コフィディス) +5’57”
ツール・ド・フランス総合順位
1位 ヨナス・ヴィンゲガード(ユンボ・ヴィズマ) 57h47’28”
2位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ) +10”
3位 カルロス・ロドリゲス(イネオス・グレナディアス) +4’43”
4位 ジャイ・ヒンドリー(ボーラ・ハンスグロエ) +4’44”
5位 アダム・イェーツ(UAEチームエミレーツ) +5’20”
6位 セップ・クス(ユンボ・ヴィズマ) +8’15”
7位 ペッロ・ビルバオ(バーレーン・ヴィクトリアス) +8’32”
8位 サイモン・イェーツ(ジェイコ・アルーラ) +8’51”
9位 ダビ・ガウドゥ(グルーパマFDJ) +12’26”
10位 フェリックス・ガル(AG2Rシトロエン) +12’56”
H.Moulinette