ツール・ド・フランス2023第13st:鮮やかクウィアトコウスキーが難関グラン・コロンビエールで逃げ切り勝利!UAEがチームプレイからポガチャルがカミソリアタックでタイム削る(ダイジェストあり)
難関山岳ステージで逃げ切りが容認された場合、ステージ優勝争いと総合争いの二つの争いを楽しむことができる。そして難所であるグラン・コロンビエール峠の決戦は、逃げ切りを目論む選手たちによる必死な走りと、総合争いを見据えた駆け引きを動きの両方が繰り広げられた。
曲がりくねったきつい勾配は観衆で埋め尽くされるなか、先行する逃げを猛追していたミカル・クウィアトコウスキー(イネオス・グレナディアス)は先頭に躍り出るとそのまま快調に独走、総合争いをするメイン集団と遜色ないペースで最後まで走り続け、通算31勝目を難関山岳ステージで上げた。
そして総合争いではグラン・コロンビエール峠ではUAEが終始集団をコントロールし続けた。大きくペースを上げることなく、淡々とペースを作り続ける。ライバルチームにアタックをさせないギリギリのペースで走り続けることで、徐々に集団はその数を減らしていくと同時に、ペースに合わせて走り続けることを強いることで体力を削っていった。そしてゴールまで残り1㎞を切った急勾配で満を持してタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)がアタック、これに唯一反応できたのは総合リーダーのヨナス・ヴィンゲガード(ユンボ・ヴィズマ)のみだった。結果的にポガチャルは急加速でステージ3位に入りボーナスタイムを獲得するとともに、4秒にタイム差をヴィンゲガードに付けてゴール、これでまたしてもタイム差を縮め一桁台の9秒まで詰めてきた。
パリの革命記念日であるこの日のステージは、フランス人選手たちが積極的に動くステージとなる。それに加え、総合系チームはのちの戦略のために選手を送り込みたいという思惑、そして逃げ切りが容認される可能性があるのでステージ勝利の為に逃げに乗りたいという思う枠が交差し、この日はスタートの瞬間から激しいバトルが幕を開ける。
しかしそれでもなかなか決まらない逃げだったが、スタートから27㎞を過ぎ、ようやくクウィアトコウスキー、マテイ・モホリッチ(バーレーン・ヴィクトリアス)、ジェームス・シャウ(EFエデュケーション・イージーポスト)、ピエール・ラトゥール(トタルエナジーズ)ら19名の逃げが成立する。
しかしこの日の主導権はUAEチームエミレーツが握り続け、この逃げに大きなタイムアドバンテージを許さない。射程圏内のとどめたまま展開し続けると、そのまま最後のグラン・コロンビエールにそのまま突入していく。通常の戦略では、このようなステージでは決定打がない限り総合では同タイムでゴールをすることが多い。UAEチームエミレーツとしては、総合で大きくタイム差が動かないこのようなステージだからこそ、ゴールで先着しての僅かなタイム差とボーナスタイムを刻んでいく戦略を立てており、その狙い通りに事を進める。
逃げは徐々に人数を減らしていたが、その中からクエンティン・パシャール(グルーパマFDJ)がアタック、さらにそこにシャウとマクシム・ファン・ギルス(ロット・デスティニー)、ハロルド・テハダ(アスタナ・カザフスタン)が合流する。そしてこの背後からひたひたと忍び寄ったクウィアトコウスキーは合流を果たすとそのまますぐに残り11㎞で独走態勢へと持ち込んでいく。力強いクウィアトコウスキーの走りはあっという間に後続との差を広げただけでなく、そのさらに背後にいるメイン集団のペースと遜色ない快走、残り1㎞で勝利を確信し表情を緩めたが、脚はゴールまで緩めることはなかった。
そしてその背後では総合の主力選手たちを引き連れたUAEチームエミレーツが、ラファル・マイカ(UAEチームエミレーツ)の牽引からアダム・イェーツ(UAEチームエミレーツ)が残り1.5㎞で仕掛ける。これにはセップ・クス(ユンボ・ヴィズマ)が対応せざるを得ない。そしてポガチャルとヴィンゲガードがそれに続く。更にトム・ピドコック、カルロス・ロドリゲス(共にイネオス・グレナディアス)とジャイ・ヒンドリー(ボーラ・ハンスグロエ)、サイモン・イェーツ(ジェイコ・アルーラ)がついていく。
しかし急勾配になった瞬間ポガチャルが別次元の加速で一気に仕掛ける。全開も似たような状況があったが、あの時同様にヴィンゲガードは付いていくがじわじわとその差が開いていく。距離が短いこともありタイム差は大きく開くことはなかったが、ポガチャルはゴール前で逃げを交わしステージ3位でゴールを果たし、タイム差とボーナスタイムを獲得して見せた。これでヴィンゲガードとの差がさらに縮まり、完全に一騎打ちの様相となってきた。
ヒンドリーは粘って総合3位を死守、その他総合ではペッロ・ビルバオ(バーレーン・ヴィクトリアス)とティボー・ピノー(グルーパマFDJ)が順位を下げた。
ミカル・クウィアトコウスキー(ステージ1位):「沿道のファンの声援が本当に背中を押してくれたよ。UAEがかなりプッシュしているのは知っていたけど、僕の脚は過去最高によく回っていたんだよ。」
タデイ・ポガチャル(ステージ3位、総合2位):「ステージ勝利はできなくても、結果に繋がったことでモチベーションは上がるし、自身も湧くよ。でもマイヨ・ジョーヌ争いという意味では勝利だったね。」
ヨナス・ヴィンゲガード(ステージ4位、総合1位):「焦ってはいないよ。勝ったら勝ったという事、負けたら負けたという事。その時々でベストを尽くしたのであればよしという事だよ。」
ツール・ド・フランス第13ステージダイジェスト
ASO 公式ダイジェスト https://youtu.be/g5eMTJGbaB4
ツール・ド・フランス第13ステージ
1位 ミカル・クウィアトコウスキー(イネオス・グレナディアス) 3h17’33”
2位 マクシム・ファン・ギルス(ロット・デスティニー) +47”
3位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ) ∔50”
4位 ヨナス・ヴィンゲガード(ユンボ・ヴィズマ) +54”
5位 トム・ピドコック(イネオス・グレナディアス) +1’03”
6位 ジャイ・ヒンドリー(ボーラ・ハンスグロエ) +1’05”
7位 ジェームス・シャウ(EFエデュケーション・イージーポスト)
8位 ハロルド・テハダ(アスタナ・カザフスタン)
9位 サイモン・イェーツ(ジェイコ・アルーラ) +1’14”
10位 アダム・イェーツ(UAEチームエミレーツ) +1’18”
ツール・ド・フランス総合順位
1位 ヨナス・ヴィンゲガード(ユンボ・ヴィズマ) 53h48’50”
2位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ) +9”
3位 ジャイ・ヒンドリー(ボーラ・ハンスグロエ) +2’51”
4位 カルロス・ロドリゲス(イネオス・グレナディアス) +4’48”
5位 アダム・イェーツ(UAEチームエミレーツ) +5’03”
6位 サイモン・イェーツ(ジェイコ・アルーラ) +5’04”
7位 ペッロ・ビルバオ(バーレーン・ヴィクトリアス) +5’25”
8位 トム・ピドコック(イネオス・グレナディアス) +5’35”
9位 ダビ・ガウドゥ(グルーパマFDJ) +6”52”
10位 セップ・クス(ユンボ・ヴィズマ) +7’11”
H.Moulinette