ツール・ド・フランス2023第15st:名アシストのポエルスが念願のツール初勝利を逃げ切りで決める!UAEチーム戦仕掛けるもヴィンゲガード単独で総合死守!(ダイジェストあり)
休息日前の山岳ステージは、激しいバトルが繰り広げられることが多い。そして今年はそうでなくとも激しく繰り返される総合優勝上位争いが、その予想通りこの日も繰り広げられた。ステージ優勝をめぐる合争いではアシストとしてグランツール覇者を献身的にサポートするなど、所属してきたチームでエースを常に支え続けたワウト・ポエルス(バーレーン・ヴィクトリアス)が自らのために走り続け、35歳で念願のグランつーつ初ステージ優勝を成し遂げた。
総合上位争いはこの日も激しく動いた。UAEチームエミレーツがチーム戦術で総合リーダーのヨナス・ヴィンゲガード(ユンボ・ヴィズマ)に襲い掛かるが、これをヴィンゲガードはことごとく対処、さらにはカウンターアタックを仕掛けるなど、ゴールラインまでタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)とのバトルは続いた。そしてそのポガチャルのアシストとして大活躍をしたアダム・イェーツ(UAEチームエミレーツ)はアシストをしながらも自
らも総合表彰台を狙う走りを披露、このステージでの逆転こそならなかったが、総合3位のカルロス・ロドリゲス(イネオス・グレナディアス)までのタイム差を一気に縮めた。
そんな第15ステージは、昨日の第14ステージ同様に大規模落車が発生してしまった。沿道の観衆が挙げた手に選手が接触、そのままメイン集団が将棋倒しになってしまったのだ。セップ・クス(ユンボ・ヴィズマ)を含むユンボ・ヴィズマの選手数名が落車に巻き込まれたが、総合上位の主力選手たちは足止めこそ食らったが、怪我などは回避することができた。すでにこの日の逃げが決まっており、昨日のように主催者によるニュートラル化はなかったが、メイン集団はこの落車した選手たちが合流するまでペースを上げずに自主的にニュートラル化を選択した。これにより、この日の逃げとメイン集団との差は、40秒から6分弱分にまで広がってしまう。
この日の逃げは段階的に増えていき38名、山岳賞ジャージのニールソン・パウレス(EFエデュケーション・イージーポスト)に加え、その奪取を狙うギウリオ・チッコーネ(リドル・トレック)、更にはワウト・ファン・アールト(ユンボ・ヴィズマ)、ジュリアン・アラフィリップ(ソウダル・クイックステップ)、マティアス・スケルモース(リドル・トレック)、ミケル・ランダ(バーレーン・ヴィクトリアス)、アレクセイ・ルチェンコ(アスタナ・カザフスタン)、ティボー・ピノー(グルーパマFDJ)、マイケル・ウッズ(イスラエル・プレミアテック)ら、各チームの主力級選手たちが名を連ねることとなった。
後続と大きく差が開いた逃げ集団では、激しいアタックの応酬が繰り広げられた。山岳ポイントではチッコーネとパウレスが仕掛け、結果同ポイントとなったが、この日の獲得ポイントの関係で、チッコーネが山岳賞ジャージ奪取に成功した。
その後もアタックと吸収を繰り返したが、ゴールまでのモンブラン峠に突入直前の残り11㎞でポエルスが飛び出し独走態勢を築いていく。ファン・アールとはこの日も活発に動き続けたが、ポエルスの走りについていくことができず、ゴールまで単独2位を走行し続けることとなった。ポエルスは見事独走勝利、ツール・ド・スイスで亡くなったチームメイトのジーノ・メイダーに勝利を捧げた。
メイン集団ではペッロ・ビルバオ(バーレーン・ヴィクトリアス)、ジャイ・ヒンドリー(ボーラ・ハンスグロエ)、サイモン・イェーツ(ジェイコ・アルーラ)が残り7㎞で脱落、総合上位集団を形成するのは、ラファル・マイカ、アダム・イェーツ、ポガチャルのUAEチームエミレーツトリオ、更にはクスとヴィンゲガードのユンボ・ヴィズマコンビ、それにロドリゲスとダビ・ガウドゥ(グルーパマFDJ)のみとなった。
この日のUAEチームエミレーツはここから攻めの姿勢を見せる。数的優位もありマイカがペースを上げると、まずはガウドゥが脱落、さらにはロドリゲスとクスも残り5㎞までに脱落する。そしてここからアダム・イェーツがポガチャルを牽引しながらさらに加速する。そして残り2.5㎞でアダム・イェーツがアタック、ヴィンゲガードへの牽制と自らの総合順位アップの一石二鳥攻めに出る。
ポガチャルはあえてこれを追わず、ヴィンゲガードもポガチャルマークでアダム・イェーツの動きは切り捨てる。焦りを誘発しようという目論見だったが、ここでペースが落ちたことで何とロドリゲスが追いついてくる。ロドリゲスにはアダム・イェーツを追う理由があり、これに便乗する形でヴィンゲガードはポガチャルの前に出る。しかし警戒心を解かないヴィンゲガードは、常に背後のポガチャルを確認し続ける。
そして満を持してポガチャルがアタックを決めてもそれに冷静に対処、更には前方のアダム・イェーツに加え、マルク・ソレル(UAEチームエミレーツ)を経由してのさらなるアタックにも対応、それどころかゴール前では逆にカウンターアタックを仕掛け、これにポガチャルが対応するなど、ゴールラインを超えるまで二人のバトルは続いた。
ワウト・ポエルス(ステージ1位):「いつも夢見ていたのがツール・ド・フランスのステージ優勝だったよ。それにメイダーの為にという思いも背中を押してくれたよ。正直ゴール前1㎞までは勝利の確信はなかったよ。今までチームスカイなどでアシストとしてツールを楽しんできたけど、今日は純粋に自分のために走ったんだ。そんなチャンスをくれたチームに感謝したい。」
ヨナス・ヴィンゲガード(総合1位):「今日の僕らのバトルも激しかったね。でもどんどんとお互い状態が良くなっていっているから、みんなもそれを楽しめているんじゃないかな。」
タデイ・ポガチャル(総合2位):「今日はヴィンゲガードを脱落させられなかもという思いがあったんで、アダム・イェーツには自分の総合順位の為に仕掛けてもらったんだよ。ああいう動きが展開を呼ぶからね。」
ツール・ド・フランス第15ステージダイジェスト
ASO 公式ダイジェスト https://youtu.be/ykWLPqoH4v8
ツール・ド・フランス第15ステージ
1位 ワウト・ポエルス(バーレーン・ヴィクトリアス) 4h40’45”
2位 ワウト・ファン・アールト(ユンボ・ヴィズマ) +2’08”
3位 マシュー・ブルガドー(トータルエナジーズ) +3’00”
4位 ローソン・クラドック(ジェイコ・アルーラ) +3’10”
5位 ミケル・ランダ(バーレーン・ヴィクトリアス) +3’14”
6位 ティボー・ピノー(グルーパマFDJ)
7位 ギヨーム・マルタン(コフィディス) +3’32”
8位 マティアス・スケルモース(リドル・トレック) +3’43”
9位 サイモン・ググリエルミ(アルケア・サムシック) +3’59”
10位 ワーレン・バルギル(アルケア・サムシック) +4’20”
ツール・ド・フランス総合順位
1位 ヨナス・ヴィンゲガード(ユンボ・ヴィズマ) 62h34’17”
2位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ) +10”
3位 カルロス・ロドリゲス(イネオス・グレナディアス) +5’21”
4位 アダム・イェーツ(UAEチームエミレーツ) +5’40”
5位 ジャイ・ヒンドリー(ボーラ・ハンスグロエ) +6’38”
6位 セップ・クス(ユンボ・ヴィズマ) +9’16”
7位 ペッロ・ビルバオ(バーレーン・ヴィクトリアス) +10’11”
8位 サイモン・イェーツ(ジェイコ・アルーラ) +10’48”
9位 ダビ・ガウドゥ(グルーパマFDJ) +14’07”
10位 ギヨーム・マルタン(コフィディス) +14’18”
H.Moulinette