ツール・ド・フランス2023第10st:天に届け!メイダーに捧げる勝利!容認された逃げ集団による小集団スプリントを制したのはビルバオ!総合でも5位まで一気に順位を上昇(ダイジェストあり)
休息日明けのステージは、そのコース設定から逃げ切りが容認されやすい雰囲気はあった。しかし前半は総合勢までもがアタックを繰り広げる荒れた展開となった。だが一旦落ち着いてからは、メイン集団を総合上位に2名を送り込んでいるイネオス・グレナディアスがコントロール、無駄な総合バトルをさせない走りで無難に最後まで走り抜いた。
だからこそ激しくなったステージ優勝争い、逃げに乗ったペッロ・ビルバオ(バーレーン・ヴィクトリアス)が逃げ集団から飛び出した5名によるスプリントで、豪快な走りで見事に勝利を射止めて見せた。これで総合でも一気に5位までジャンプアップを果たし、表彰台圏内に入った。先月のツール・ド・スイスで命を落とした盟友ジーノ・メイダー、その元チームメイトに捧げるべく勝利を狙ってきたバーレーン・ヴィクトリアスの走りが遂に実を結んだ。
この日はクラシックのようなアップダウンのあるコース、レースはスタートからパンチャーがアタックを繰り返す展開となる。その流れの中で総合リーダーのヨナス・ヴィンゲガード(ユンボ・ヴィズマ)と総合2位のタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)までもがアタックに乗る展開となる。これに乗り遅れたのは、総合3位のジャイ・ヒンドリー(ボーラ・ハンスグロエ)、総合4位のカルロス・ロドリゲス(イネオス・グレナディアス)らの総合上位勢、そうなれば何とか逃げをつぶそうと必死の抵抗が始まった。
逃げのレミ・カヴァニャ(ソウダル・クイックステップ)はそれでも容赦なくペースを上げていく。対して追走はイネオス・グレナディアスが主導権を握り猛追を仕掛ける。しかしこの状況は得策でないと判断したヴィンゲガードとポガチャルはここで逃げから離脱、これでようやくこの日の逃げは容認されるかに思われたが、結局逃げは上りで吸収され、ここで再びアタックが開始される。最初のアタックに乗ったが失敗に終わったミカル・クウィアトコウスキー(イネオス・グレナディアス)、クリス・ニーランツ(イスラエル・プレミアテック)に加え、マティアス・スケルモース(リドル・トレック)らが動くが、それでもこの日の逃げはまだ決まらなかった。
そしてようやくジュリアン・アラフィリップ(ソウダル・クイックステップ)、エステバン・チャベス(EFエデュケーション・イージーポスト)、ビルバオを含む実力者らが顔を揃え、この日の逃げが落ち着くかに思われたが、ここでワーレン・バルギル(アルケア・サムシック)とチャベスが山岳ポイント狙いで飛び出し、逃げ集団は二つに分かれてしまう。しかしアラフィリップらが猛追し、何とか逃げ集団が一つとなる。
落ち着かない逃げ集団は、ここからニーランツが単独アタックを見せる。先日のウッズ同様のパターンでの攻撃は、結果逃げ集団を細かく分断する形となった。ビルバオ、チャベスら4人の追走とその背後にアラフィリップらが分かれての追走に対し、メイン集団は3分台でそれを追いかける展開となる。
ニーランツは粘りの破城を見せたが、最後は力尽きビルバオらに吸収され、先頭集団は5人となり、そのままアラフィリップらに30秒ほど後方にまで迫られながらもゴールまで逃げ続けた。そしてゴールスプリントではビルバオが渾身のペダリングで勝利、表彰台では天を見上げ指を指し、メイダーへ勝利を手向けた。ステージ2位にはゲオルグ・ジマーマン(インターマルシェ・サーカス・ワンティ)が入り、3位には総合争いから脱落しているベン・オコナー(AG2Rシトロエン)が入った。
ペッロ・ビルバオ(ステージ1位):「ツールに出場して13年、念願の勝利だよ。ゴールではずっと抑え込んできた感情が爆発してしまったよ。メイダーの死は受け入れがたいものだったからね。このツールには、メイダーに勝利を捧げるためだけに来たようなものだよ。そのためにずっとチーム一丸で勝利を狙って来たんだよ。」
ヨナス・ヴィンゲガード(総合1位):「今日はポガチャルが動いたから反応せざるを得なかったんだよ。かき回されたね。でそのあとももう少しいろいろなチームが協力してくれていたら追走も楽だったんだけどね。」
クリス・ニーランツ(敢闘賞):「ただ悔しいよ。ツールでの勝利が目の前にまで来ていたんだよ。もうこんなチャンス二度とないかもしれないからね。」
ツール・ド・フランス第10ステージダイジェスト
ASO 公式ダイジェスト https://youtu.be/6GetkwaLiBg
ツール・ド・フランス第10ステージ
1位 ペッロ・ビルバオ(バーレーン・ヴィクトリアス) 3h52’34”
2位 ゲオルグ・ジマーマン(インターマルシェ・サーカス・ワンティ)
3位 ベン・オコナー(AG2Rシトロエン)
4位 クリス・ニーランツ(イスラエル・プレミアテック)
5位 エステバン・チャベス(EFエデュケーション・イージーポスト)
6位 アントニオ・ペドレロ(モビスター) +03”
7位 マティアス・スケルモース(リドル・トレック) +27”
8位 ミカル・クウィアトコウスキー(イネオス・グレナディアス)
9位 ワーレン・バルギル(アルケア・サムシック) +30”
10位 ジュリアン・アラフィリップ(ソウダル・クイックステップ) +32”
ツール・ド・フランス総合順位
1位 ヨナス・ヴィンゲガード(ユンボ・ヴィズマ) 42h33’13”
2位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ) +17”
3位 ジャイ・ヒンドリー(ボーラ・ハンスグロエ) +2’40”
4位 カルロス・ロドリゲス(イネオス・グレナディアス) +4’22”
5位 ペッロ・ビルバオ(バーレーン・ヴィクトリアス)
6位 アダム・イェーツ(UAEチームエミレーツ) +4’39”
7位 サイモン・イェーツ(ジェイコ・アルーラ) +4’44”
8位 トム・ピドコック(イネオス・グレナディアス) +5’26”
9位 ダビ・ガウドゥ(グルーパマFDJ) +6”01”
10位 セップ・クス(ユンボ・ヴィズマ) +6’45”
H.Moulinette