ツール・ド・フランス2023第8st:無双のフィリップセンを撃破したのはペデルセン!力技でねじ伏せ勝利!歴代最多勝狙うカベンディッシュは落車リタイア、観客と接触で総合争いに影響も(ダイジェストあり)
昨日までのヤスパー・フィリップセン(アルペシン・ドゥクーニンク)の無双を止めるのは誰になるのか、それこそがスプリント勝負になった場合の最大の関心ごとであった。そしてそれと同時にマーク・カベンディッシュ(アスタナ・カザフスタン)は歴代最多勝利者となれるのか、がもう一つの関心事となっていた。そしてその両方の答えがこの日のステージで示されることとなった。
スプリント勝負となるのか、逃げが容認されるのか、そのどちらになるのかがわからなかったステージは、スプリンターチームが逃げ切りを容認することなくハイペースで展開した。その結果早々とスプリントバトルが決定したが、昨日まで圧倒的優位に立っていたアルペシン・ドゥクーニンクの戦略に今度もはまるわけにはいかぬと各チームがよりハイペースで展開、その結果マッズ・ペデルセン(リドル・トレック)が真っ向勝負でフィリップセンをねじ伏せて今大会初勝利を挙げた。
そしてカベンディッシュは、残り60㎞で落車、苦悶の表情で地面に座り続けた名スプリンターは、最後のツール・ド・フランスでそのままリタイアとなってしまった。
そしてこのステージではさらに総合争いでも不運に魅入られた選手がいる。総合4位のサイモン・イェーツ(ジェイコ・アルーラ)、総合11位のミケル・ランダ(バーレーン・ヴィクトリアス)、総合16位のステフ・クラス(トータルエナジーズ)がゴールまで僅か6㎞で、沿道の観衆と接触して落車、サイモンとランダは大きくタイムを失い総合で順位を下げ、クラスはそのままリタイアとなってしまった。クラスはその後SNSで怒りを爆発させたが、集団最後部にポジショニングしていたこと自体が、リスク回避できていなかったという事だ。
この日のステージは200㎞越えの長丁場、さらにスタートから平均時速54㎞で推移するなど、かなりのハイペースな入りとなった。そんな中スタートから30㎞を過ぎ、ようやくこの日の逃げが容認される。ティム・デクレルク(ソウダル・クイックステップ)、アンソニー・デラプラス(アルケア・サムシック)、アンソニー・チュルギス(トータルエナジーズ)はようやく容認されたが、それでもメイン集団は大きくペースを落とすことはなかった。最大で5分差までその差は広がったが、中盤に入るとその差はじわじわとつまりはじめ、スプリンターチームが主導権を握り始める。
そして逃げも崩壊、最後の一人チュルギスが残り8.5㎞まで粘り続けたが、最後はエネルギー切れであっという間に集団に飲み込まれていった。そしてペースはさらに上がり、曲がりくねったコースでの位置取り合戦が始まる。この日も危険回避を目時としてユンボ・ヴィズマが先頭に躍り出る。それに遅れをとるまいと各スプリンターチームも激しく動き始めると、アルペシン・ドゥクーニンクが昨日同様にまたしても先頭でペースを作る。
しかしこの日のゴール前はただの平坦ではないことが展開を大きく左右した。昨日同様マシューファン・デル・ポエル(アルペシン・ドゥクーニンク)のスーパーアシストから発射したフィリップセンはそのまま昨日のリプレイのように先行したペデルセンの背後をとり、そこから一気にコース左へと展開し真っ向勝負に挑んだ。昨日はカベンディッシュを圧倒したが、この日はペデルセンの馬力あるスプリントの前に前に出ることはできなかった。ポイント賞ジャージは独走態勢だが、この日の表彰台では敗北の悔しさがにじみ出ていた。位置取りをミスし立ち遅れたワウト・ファン・アールト(ユンボ・ヴィズマ)は猛然と追い込み3位に入った。残り500mだけの速度ではトップスピードだっただけに、位置取りのミスの代償は大きかった。
マッズ・ペデルセン(ステージ1位):「今日は逃げ切り容認かスプリントかが予想がつかなかったので、戦略が立てられなかったんだ。だから前半で逃げを打とうとしたりしていたんだよ。でもスプリントチームがハイペースで、これはスプリントになると分かったので、そこからは冷静にそれに向けてチームで動いたんだよ。買ったのはすぐに分かったけど、脚がいっぱいっぱいで、残り50mで止めそうになったよ。」
ヤスパー・フィリップセン(ステージ2位):「今日はコースにより合っているマシュー・ファン・デル・ポエルで行くべきだったかもしれないんだけど、チームの目的がグリーンジャージだから僕がスプリントをしたんだよ。でも結果的にペデルセンの力負けしたよ。」
タデイ・ポガチャル(ステージ10位、総合2位):「実は今日はスプリントで勝利を狙いに行ったんだよ。でも全く脚がなかったね。」
ツール・ド・フランス第8ステージダイジェスト
ASO 公式ダイジェスト https://youtu.be/lpiFaowrHe0
ツール・ド・フランス第8ステージ
1位 マッズ・ペデルセン(リドル・トレック) 4h12’26”
2位 ヤスパー・フィリップセン(アルペシン・ドゥクーニンク)
3位 ワウト・ファン・アールト(ユンボ・ヴィズマ)
4位 ディラン・グローネウェーヘン(ジェイコ・アルーラ)
5位 ニルス・エーコフ(チームDSMフィルメニッヒ)
6位 ブライアン・コカード(トータルエナジーズ)
7位 ヤスパ・デ・ブイスト(ロット・デスティニー)
8位 ラムス・ティリエール(UNO-Xプロサイクリング)
9位 コルビン・ストロング(イスラエル・プレミアテック)
10位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)
ツール・ド・フランス総合順位
1位 ヨナス・ヴィンゲガード(ユンボ・ヴィズマ) 34h09’38”
2位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ) +25”
3位 ジャイ・ヒンドリー(ボーラ・ハンスグロエ) +1’34”
4位 カルロス・ロドリゲス(イネオス・グレナディアス) +3’30”
5位 アダム・イェーツ(UAEチームエミレーツ) +3’40”
6位 サイモン・イェーツ(ジェイコ・アルーラ) +4’01”
7位 ダビ・ガウドゥ(グルーパマFDJ) +4’03”
8位 ロメイン・バルデ(チームDSMフィルメニッヒ) +4”43”
9位 トム・ピドコック(イネオス・グレナディアス)
10位 セップ・クス(ユンボ・ヴィズマ) +5’28”
H.Moulinette