ツール・ド・フランス2023第5st:ツール初出場のジロ覇者ヒンドリーが逃げ切り勝利と総合合リーダージャージ奪取!総合大シャッフル!ヴィンゲガード猛追、ポガチャル撃沈(ダイジェストあり)
第5ステージと言えばまだまだ序盤戦のはずだが、最初の本格的山岳ステージは一気に総合の大シャッフルとセレクションをもたらすステージとなった。ツール・ド・フランス初出場ながら、2022年にジロ・デ・イタリアを制したジャイ・ヒンドリー(ボーラ・ハンスグロエ)が序盤から大逃げに乗り躍動、そのまま最後まで逃げ切りを達成するとともに、総合でもリーダーに躍り出た。2020年のジロ総合2位、2022のジロ制覇以外に大きな戦績がないが、やはりそこはグランツールウィナー、ツボにはまれば圧倒的なパフォーマンスを見せるポテンシャルは伊達ではなかった。
総合争いも激しく動いた。メイン集団でヒンドリーら逃げを猛追していたヨナス・ヴィンゲガード(ユンボ・ヴィズマ)がタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)を残り19.5㎞で振り切り、そのままゴールまでに1分の大差をつけてゴールを果たした。最大ライバルであると思われたポガチャルのこの段階での脱落、代わりにヒンドリーとエマニュエル・ブッフマンのボーラ・ハンスグロエのコンビが総合1位と4位に入り、想定外のライバルが登場した形となりそうだ。
この日は今大会初の超級山岳が用意されたステージ、ある程度の総合バトルが勃発することは予想された。山岳賞ジャージを着用するニールソン・パウレス(EFエデュケーション・イージーポスト)が何度も仕掛けるが容認されない中、ワウト・ファン・アールト(ユンボ・ヴィズマ)に加えクリストフ・ラポルト、ティス・ベノートらユンボ・ヴィズマ3人を中心とした37名の大所帯の逃げが容認された。この中にはヒンドリーとブッフマンに加え、ギウリオ・チッコーネ(リドル・トレック)、カルロス・ロドリゲス(イネオス・グレナディアス)ら前日まで総合上位に名を連ねて居た面々も加わっていた。
このことからもメイン集団は逃げに大きなタイムアドバンテージを与えられず、最大で4分差までにしか広がらない。逃げ集団は何度となく分裂と合流を繰り返しつつも、タイム差を維持し続ける。ファン・アールト、ジュリアン・アラフィリップ(ソウダル・クイックステップ)、クリス・ニーランズ(イスラエル・プレミアテック)が順番にアタックを仕掛けるが、どれも決定打とはならない。そして最後の一級山岳コル・ドゥ・マリ・ブランクの頂上4㎞手前でフェリックス・ガル(AG2Rシトロエン)がアタック、それについていったヒンドリーは、満を持してアタック、あっという間に独走態勢を築く。
ガルはそれに単独で追走、その後ろにはチッコーネとブッフマンが続く。その背後ではUAEチームエミレーツが長時間にわたり牽引をしライバルを減らしていくが、それと同時にポガチャルのアシストを失っていくこととなる。対してユンボ・ヴィズマはアシストがしっかりと残ったうえに逃げに乗っていた3名が順次下がってきてアシストに加わることで、優位な立場に立った。UAEチームエミレーツの牽引が終わると、あっという間にユンボ・ヴィズマが牽引を開始、すると生き残っていた総合系集団はあっという間に木っ端みじんになってしまう。最後はセップ・クス(ユンボ・ヴィズマ)、ヴィンゲガード、ポガチャルの3人に絞られると、コル・ドゥ・マリ・ブランクの頂上まで1.5㎞を残しヴィンゲガードがアタックを決めると、ポガチャルとのタイム差をグングンと広げていった。
そのころ先頭ではヒンドリーが独走で快走を続け、そのままガッツポーズでゴールを決めた。そしてそれにぐんぐんと迫っていったヴィンゲガードは、単独で猛追を仕掛けるとチッコーネとブッフマン、そしてガルを吸収しそのままタイム差を縮めながらゴールへ向かうが、追走への協力を得られなかったことでゴール勝負には敗れ、ボーナスタイム獲得とはならなかった。それでもポガチャルには大きなアドバンテージをつけてゴール、最大ライバルに対しては優位に立った。
このステージ3位に入ったガルは山岳賞ジャージを獲得、2位に入ったチッコーネは総合3位にジャンプアップを果たすなど、大きく順位は変動した。ポガチャルは追いついてきたチームメイトアダム・イェーツ(UAEチームエミレーツ)、カルロス・ロドリゲス(イネオス・グレナディアス)、マティアス・スケルモース(リドル・トレック)らとともにゴール、総合で6位まで順位を下げた。
ジャイ・ヒンドリー(ステージ1位、総合1位):「本当にレースを純粋に楽しんでいるんだよ。それが結果につながったと思うよ。今は感極まって言葉を失っているよ。」
ヨナス・ヴィンゲガード(ステージ5位、総合2位):「今日は僕向けのステージではなかったんだけど、脚の調子が良かったんで、ポガチャルを試したんだよ。正直タイムを稼げたことには驚いているよ。でもこのタイムアドバンテージが得られたという事が今後の戦略において大きな意味があるんだよ。」
タデイ・ポガチャル(総合6位):「今日は脚がなかっただけだよ。でも今日タイムを失った以上に、さっきジロ・ドンネに出場している彼女が落車して脳震盪を負ったこと事の方が心配だよ。僕自身の体の状態はいいので、明日以降にタイムを取り戻していきたいね。」
ツール・ド・フランス第5ステージダイジェスト
ASO 公式ダイジェスト https://youtu.be/xCYOYN3XYuM
ツール・ド・フランス第5ステージ
1位 ジャイ・ヒンドリー(ボーラ・ハンスグロエ) 3h57’07”
2位 ギウリオ・チッコーネ(リドル・トレック) +32”
3位 フェリックス・ガル(AG2Rシトロエン)
4位 エマニュエル・ブッフマン(ボーラ・ハンスグロエ)
5位 ヨナス・ヴィンゲガード(ユンボ・ヴィズマ) +34”
6位 マティアス・スケルモース(リドル・トレック) +1’38”
7位 ダニエル・マルチネス(イネオス・グレナディアス)
8位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)
9位 ダビ・ガウドゥ(グルーパマFDJ)
10位 カルロス・ロドリゲス(イネオス・グレナディアス)
ツール・ド・フランス総合順位
1位 ジャイ・ヒンドリー(ボーラ・ハンスグロエ) 22h15’12”
2位 ヨナス・ヴィンゲガード(ユンボ・ヴィズマ) +47”
3位 ギウリオ・チッコーネ(リドル・トレック) +1”03”
4位 エマニュエル・ブッフマン(ボーラ・ハンスグロエ) +1’11”
5位 アダム・イェーツ(UAEチームエミレーツ) +1’34”
6位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ) +1’40”
7位 サイモン・イェーツ(ジェイコ・アルーラ)
8位 マティアス・スケルモース(リドル・トレック) +1”56”
9位 カルロス・ロドリゲス(イネオス・グレナディアス)
10位 ダビ・ガウドゥ(グルーパマFDJ)
H.Moulinette