ジロ・デ・イタリア2023第18ステージ(ダイジェスト動画あり):今シーズン限りで引退のピノー、またしても勝利を逃す、頂上を制したのはザナ!総合はログリッチとトーマスがライバルたちを置き去りに
人は引退を決めた時、その本来のパフォーマンスを超える力を発揮することがある。しかしそれが必ずしも勝利につながらないというのもまたレース。ティボー・ピノー(グルーパマFDJ)は長年総合候補と呼ばれながら、下り恐怖症など、様々な障壁によりグランツールの頂点に立つことはなかった。それでもステージ優勝という称号を狙い、再びこのステージで大逃げを敢行した。しかしその夢はまたしても打ち砕かれた。今回のその夢を打ち砕いたのはフィリッポ・ザナ(ジェイコ・アルーラ)、イタリアなちょなるチャンピオンジャージに身を包んだ男が、母国開催の世界最高峰の大会の山岳ステージで、最高の頂上勝利を掴み取った。
そして総合優勝をめぐる争いでも、ついにプリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ)が動いた。しかしながら最大ライバルでこの日37歳を迎えたのゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアス)を振り切るには至らなかった。しかしジョアオ・アルメイダ(UAEチームエミレーツ)からタイムを奪う事には成功し、総合2位へと順位を上げた。
この日のステージは5つの山岳ポイントがあり総合バトルが勃発することは確定的、そうなれば逃げ切りの容認の可能性は高く、そのままステージ勝利を得られる可能性は高かった。今シーズン限りで引退を決めているピノーは有終の美を飾るべく逃げを敢行した。ステージ優勝ももちろんだが、山岳賞ジャージを競い合うベン・ヒーリー(EFエデュケーション・イージーポスト)が序盤から挑戦して逃げを決められなかったことも追い風となり、ピノーはオーレリアン・パレ・パントレ(AG2Rシトロエン)、デレック・ジー(イスラエル・プレミアテック)、ザナと共に快調に後続との差を広げていく。
マリア・ローザのトーマス擁するイネオス・グレナディアスは、メイン集団のコントロールをするが、逃げに総合で7分差のピノーがいるがために、ある程度の速度を維持せねばならず、これが結果的に消耗戦となる。7人の逃げは最大でその差を6分だに乗せたが、そこからはイネオス・グレナディアスの追走が本格化、そのタイム差は縮まっていくこととなる。
先頭ではピノーが積極的に山岳ポイントを稼ぎ、残り26㎞で迎えた山頂通過で山岳賞ジャージを奪還することに成功する。こうなれば後はステージ優勝を狙って積極的な動きを続ける。ザナ、ジー、ワーレン・バルギル(アルケア・サムシック)の4人のバトルが続いたが、頂上ゴールへの細い上りに入るとピノーとザナの一騎打ちとなる。こちらも今大会何度となく逃げに乗り続けているジーは、平坦のみならず山岳でも素晴らしい走りを披露するが、この日も勝利には届かなかった。
その背後ではセップ・クス(ユンボ・ヴィズマ)のペースアップで一気に選手が絞られていく。あっという間にクス、ログリッチ、トーマス、エドワード・ダンバー(ジェイコ・アルーラ)の4人となり、アルメイダは後れを取る。しかしジェイ・ヴァイン(UAEチームエミレーツ)がアルメイダを救う素晴らしいアシストを見せる。そんな中ログリッチはさらにアタックを仕掛けダンバーが脱落するが、トーマスを振り切るには至らなかった。アルメイダはヴァインのアシストのおかげでこの二人を視野に入れたまま踏ん張りを見せる。
先頭では一騎打ちとなりゴールスプリント勝負となったが、ザナが冷静にピノーの動きを見てスプリント、快心の勝利を挙げた。ピノーはまたしても2位に終わり、がっくりとした表情を見せた。「こんなチャンスはまたとないし、ピノーとの一騎打ちなら勝負は五分五分だと思ったんだ。だから途中からはそれを想定して脚を温存したんだよ。」ステージ勝利を挙げたザナは想像以上に冷静だった。
その背後ではゴールまでログリッチとトーマスが並走、しかしアルメイダにはわずかながらタイム差をつけることに成功した。総合ではダンバーが順位を上げ総合4位に、またピノーは一気に総合7位まで順位を上げた。
「ログリッチは加減速を繰り返すから、残り2㎞でどんな動きをするかが全く読めなかったんだ。でも最後まで対応できてよかったよ。」トーマスは総合優勝へ向けて安定した走りを見せた。タイムを失ったが、アルメイダは「別に何か最悪が起きたわけではないよ。チームメイトのおかげでタイムロスも最小限に抑えられたし、調子が悪いなりに最大限の結果が出せたからね。」と納得の表情を見せた。
ジロ・デ・イタリアぢ18ステージダイジェスト
ジロ・デ・イタリア第18ステージ順位
1位 フィリッポ・ザナ(ジェイコ・アルーラ) 4h25’12”
2位 ティボー・ピノー(グルーパマFDJ)
3位 ワーレン・バルギル(アルケア・サムシック) +50”
4位 デレック・ジー(イスラエル・プレミアテック) +1’03”
5位 オーレリアン・パレ・パントレ(AG2Rシトロエン) +1’24”
6位 マルコ・フリゴ(イスラエル・プレミアテック)
7位 プリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ) +1’56”
8位 ゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアス)
9位 ジョアオ・アルメイダ(UAEチームエミレーツ) +2’17”
10位 エドワード・ダンバー(ジェイコ・アルーラ) +2’32”
ジロ・デ・イタリア総合順位
1位 ゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアス) 76h25’51”
2位 ジョアオ・アルメイダ(UAEチームエミレーツ) +29”
3位 プリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ) +39”
4位 エドワード・ダンバー(ジェイコ・アルーラ) +3’39”
5位 ダミアーノ・カルーソ(バーレーン・ヴィクトリアス) +3’51”
6位 レナード・カムナ(ボーラ・ハンスグロエ) +4’27”
7位 ティボー・ピノー(グルーパマFDJ) +4’43”
8位 アンドレアス・レクネサンド(チームDSM) +4’47”
9位 サイメン・アレンスマン(イネオス・グレナディアス) +4’53”
10位 ローレンス・デ・プラス(イネオス・グレナディアス) +5’52”
H.Moulinette