ジロ・デ・イタリア2023第11ステージ(ダイジェスト動画あり):アッカーマンが写真判定でスプリント勝利!イネオス悪夢の一日、総合上位勢落車でゲイガンハート骨折、シヴァコフ大幅タイムロス
レースは生き物だとはよく言われるが、昨日終了時点で総合トップ10に4人もの選手を送り込み、そのうちタオ・ゲイガンハートとゲラント・トーマスの二人が優勝争いに絡んでいたイネオス・グレナディアスだったが、その優位性は儚くも僅か一日で潰えることとなった。総合上位勢がことごとく巻き込まれた落車により、マリア・ローザのトーマス、総合2位のプリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ)、総合3位のゲイガンハートらが揃って落車を喫したが、結果ゲインガンハートは骨盤骨折、総合シヴァコフは大幅にタイムを失う結果となった。総合優勝を目指しログリッチ包囲網が出来上がっていたが、一撃の不運な巻き添え落車はその戦況を大きく変えることとなった。
そんなステージは何度も発生した落車で削られた小集団スプリントとなった。マッズ・ペデルセン(トレック・セガフレド)、マーク・カベンディッシュ(アスタナ・カザフスタン)、パスカル・アッカーマン(UAEチームエミレーツ)による三つ巴スプリントかに思われたが、はるか後方から単独で超速馬力スプリントを見せたヨナタン・ミラン(バーレーン・ヴィクトリアス)がゴール前に忽然と姿を現し同時にその体位を投げ出した。アッカーマン、ミランの双方が自らが勝者であると固辞したが、写真判定の結果軍配はアッカーマン、ミランのステージ2勝目はならなかったが、ポイント賞リーダーとしての貫禄が感じられ始めている。
ソウダル・クイックステップ内でのコロナ集団感染も発覚、未出走などを含め人数を減らし続けている今年のジロ・デ・イタリア第11ステージは219㎞のスタート時点でわずか142名になっていた。序盤に発生した逃げはローレンス・レックス(インターマルシェ・サーカス・ワンティ)を含む6人、このメンバーが獲得標高2100mを超えるこのステージのペースメーカーとなった。
レースは大きな波乱なく進んでいったが、突如としてその静寂は破られることとなる。残り69㎞の下りで、集団前方を走行していたアレッサンドロ・コヴィ(UAEチームエミレーツ)が濡れた路面で落車、そのすぐ背後を走っていた総合リーダーのトーマスを含むイネオス・グレナディアス勢、更にはログリッチらを巻き込んでしまう。ゲイガンハートはその場から動けず、救急車により搬送された。その直後には別の場所で、メイン集団先頭を走っていたオスカル・ロドリゲス(モビスター)がほかの選手と接触し落車、転倒したまま高速で道路わきの標識に激突した後レンガの壁にもぶつかりようやく止まった。この落車でロドリゲスもそのままリタイアとなってしまった。
逃げていた先頭はレックスが最後まで諦めることなく逃げ続ける。最終的にメイン集団は残り5㎞でレックスを吸収し、そのままスプリント勝負へと向かっていく。しかし残り3㎞を切りまたしても落車が発生する。これによりっフェルナンド・ガヴィリア(モビスター)は後方に取り残され、この日の勝負から姿を消す。大きく人数を減らした先頭集団ではトレック・セガフレドがペデルセンの為に完璧なお膳立てをする。
先頭で加速を開始したペデルセン、その真後ろにはカベンディッシュ、そしてその背後にアッカーマンという隊列から一気にカベンディッシュとアッカーマンがコース左側へと展開し横並びでのスプリントとなる。しかしその背後から猛然とスパートしてきたのはミラン、位置取りが悪くはるか後方から広地スパートを仕掛けてきたが、その速さは群を抜いていた。そのままコース右側へと展開すると、圧倒的な速度のままゴールラインへと突っ込んだ。アッカーマンは勝利を確信、ミランはそれを左手人差し指で否定、しかし写真判定の結果僅かタイヤの厚み以下の1㎝ほどの差でアッカーマンがステージを制した。「ようやく去年の骨折から復帰できた。」アッカーマンは勝利に胸をなでおろした。
総合では1位と3位でダブルエース体制に加え総合8位と10位に総合力ある選手を揃えログリッチを包囲していたイネオスが、総合3位と8位を失ったが、それにより繰り上がったローレンス・デ・プラスがトップ10入りをすることで、辛うじて優位は維持した形だ。だが今年のジロはサバイバル、これから本格的なステージが始まるのだが、その前に各チーム戦略の変更を余儀なくされている。
ジロ・デ・イタリア第11ステージダイジェスト
ジロ・デ・イタリア第11ステージ順位
1位 パスカル・アッカーマン(UAEチームエミレーツ) 5h09’02”
2位 ヨナタン・ミラン(バーレーン・ヴィクトリアス)
3位 マーク・カベンディッシュ(アスタナ・カザフスタン)
4位 マッズ・ペデルセン(トレック・セガフレド)
5位 ステファノ・オルダーニ(アルペシン・ドゥクーニンク)
6位 ヴィンチェンツォ・アルバニース(エオロコメタ・サイクリングチーム)
7位 マウリス・メイホファー(チームDSM)
8位 ダビデ・バレリー二(ソウダル・クイックステップ)
9位 シモーネ・コンソーニ(コフィディス)
10位 アルネ・マリット(インターマルシェ・サーカス・ワンティ)
ジロ・デ・イタリア総合順位
1位 ゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアス) 44h35’35”
2位 プリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ) ∔02”
3位 ジョアオ・アルメイダ(UAEチームエミレーツ) ∔22”
4位 アンドレアス・レクネサンド(チームDSM) ∔35”
5位 ダミアーノ・カルーソ(バーレーン・ヴィクトリアス) ∔1’28”
6位 レナード・カムナ(ボーラ・ハンスグロエ) ∔1’52”
7位 エドワード・ダンバー(ジェイコ・アルーラ) ∔2’32”
8位 サイメン・アレンスマン(イネオス・グレナディアス)
9位 ローレンス・デ・プラス(イネオス・グレナディアス) ∔2’36”
10位 オーレリアン・パレ・パントレ(AG2Rシトロエン) ∔2’48”
H.Moulinette