ロンド・ファン・フランデーレン2023:ポガチャル独走で圧勝!史上最速273.4㎞を平均時速44.1㎞で駆け抜けレジェンドメルクスに並ぶ記録も達成!24歳にして歴代最高選手の呼び声も
あまりにも衝撃的な結末だった。今クラシックレースシーンで最強と呼ばれる新旧シクロ世界チャンピオンのワウト・ファン・アールト(ユンボ・ヴィズマ)とマシュー・ファン・デル・ポエル(アルペシン・ドゥクーニンク)、さらには並み居る猛者どもを豪快に力でねじ伏せ、自らの信条である「攻撃は最大の防御」をゴールまで完遂して見せたタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)が独走でクラシック最高峰のモニュメント制覇を果たした。これで24歳にして5つのモニュメントのうち3つ目の制覇、さらには1950年代に活躍したルイゾン・ボベ、更には伝説の最強の男エディ・メルクスに並ぶ史上3人目のツール・ド・フランスとロンド・ファン・フランデーレンの両方を制した選手となった。
メルクスもその勝利を絶賛、「エレガントで気品ある最高級の勝利」と評価、「彼ならすべてのレースを勝てる。」と言わしめた。弱冠24歳にして歴代最高選手に並ぶ結果を達成、さらにどこまで積み重ねていけるのか、今シーズンだけでもその可能性の行く先が早くも楽しみだ。
274.3㎞という長丁場のレース、残り100㎞過ぎで10人の逃げが発生、残り65㎞の時点で後続の集団に3分以上の差をつけ優位に展開を進めた。一発勝負のクラシックでは致命傷になり兼ねないタイム差だったが、ここからポガチャルは自らも動いて一気に展開を揺さぶる。向かい風も選手たちの行く手を何度となく阻んだこのレースは、ここから激しい攻撃の応酬となる。
残り55㎞、この日2度目のオウデ・クワレモントの上りでポガチャルが加速すると、先頭との差はあっという間に1分40秒ほどにまで縮まる。この動きにファン・デル・ポエルとファン・アールトは、トム・ピドコック(イネオス・グレナディアス)、クリストフ・ラポルト(ユンボ・ヴィズマ)らと共にポガチャルを必死に追走する。
ここからポガチャルは何度となく上りで加速、結果的にヴァン・デル・ポエルとファン・アールトのみがそれに対応、そしてモコり35㎞で先頭の逃げとの差は40秒にまで縮まっていた。ファン・デル・ポエル、ファン・アールト、ポガチャルは他のレースでも3名で仕掛けるシーンがあったが、別格の速さを持っている。しかしファン・アールトはレース序盤に落車に巻き込まれており、そのダメージからかいつものような切れ味は影を潜めている。そしてクルイスベルグの上りでファン・デル・ポエルがアタックし、それにポガチャルが波状攻撃を仕掛けると、残り25㎞ではついにファン・アールトは脱落、追走を余儀なくされる。するとレース先頭の逃げに乗っていたネイサン・ファン・ホーイドンク(ユンボ・ヴィズマ)がすぐさまアシストの為に下がって来たが、それも結果的には焼け石に水だった。
先頭集団まで追いついたポガチャルと・ファン・デル・ポエルは、明らかに逃げ続けてきた面々とは次元が違う。名物オウデ・クワレモントで満を持してポガチャルがアタックを決めると、それに辛うじて反応できたのはファン・デル・ポエルのみ。何とか歯を食いしばり必死に追走をするファン・デル・ポエルだったが、ポガチャルは独走態勢に入っても一向にその走りを緩めない。15秒ほどで推移し続けるそのタイム差は、最後まで縮まることがなかった。ポガチャルは表情を緩め、満面の笑みでゴール、それに対し全てを出し切ったファン・デル・ポエルは疲労困憊でゴールを果たした。ファン・アールトは何とか3位争いに踏みとどまりはしたが、逃げの集団の生き残りに混ざっての集団スプリントで必死のスプリントを見せたが、マッズ・ペデルセン(トレック・セガフレド)の馬力あるスプリントには及ばず4位に終わった。
「今日という日を忘れないと思うよ!もし今日引退したとしても、最高の選手生活が遅れたと納得できるし、誇りに思えるよ。勝つためには自分向きだったクワレモントで仕掛けて単独になるしかないと思っていたんだ。パリ~ルーベを狙うかって?(笑い)いずれ狙うかもね。でもその前に石畳の練習もをっとしないとね。あそこでは筋肉がプルプル振動し続けるからね。」歴史に名を刻んだポガチャルは笑顔で機嫌よく答えた。メルクスも一目置く存在となったポガチャル、まだ若手でありながらすでに伝説の域に達した男はさらに歴史を書き換え続ける。
ロンド・ファン・フランデーレン2023
優勝 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ) 6h12’07”
2位 マシュー・ファン・デル・ポエル(アルペシン・ドゥクーニンク) ∔16”
3位 マッズ・ペデルセン(トレック・セガフレド) ∔1’12”
4位 ワウト・ファン・アールト(ユンボ・ヴィズマ)
5位 ニールソン・パウレス(EFエデュケーションイージーポスト)
6位 ステファン・キュング(グルーパマFDJ)
7位 キャスパー・アスグリーン(ソウダル・クイックステップ)
8位 フレッド・ライト(バーレーン・ヴィクトリアス)
9位 マッテオ・ヨルゲンセン(モビスター) ∔1’19”
10位 マッテオ・トレンティン(UAEチームエミレーツ) ∔2”49”
ロンド・ファン・フランデーレン2023ダイジェスト
H.Moulinette