ミラノ~サンレモ2023:パリ~ニースからの連勝でモニュメントを狙ったポガチャル及ばず!制したのはシクロ世界王者のファン・デル・ポエル!祖父が62年前に制したモニュメントを孫が制覇!
勝利というのは時にあまりにも鮮やかに決まってしまう。例えそれが同じ実力者同士だったとしても、一瞬の勝利への嗅覚と反応で決着はついてしまう。気まぐれな勝利の女神を自らの力で手繰り寄せ、モニュメントと呼ばれる最高峰クラシックのミラノ・サンレモを制したのはマシュー・ファン・デル・ポエル(アルペシン・ドゥクーニンク)だった。祖父で名選手だったレイモンド・プリドールが62年前に勝利したレースで、国籍は違えど、その孫であるファン・デル・ポエルが見事にその頂点に立った。更には勝負所のポッジオの丘の登坂最短記録(平均時速39.18㎞で登坂)まで塗り替える激走、圧倒的なそのパフォーマンスは間違いなく歴史に残る勝利となった。
1990年の平均時速45.806㎞に次ぐ、歴代2位の平均時速45.773㎞をたたき出した今年の大会、最終盤の勝負所になり一気にその勝負は加速する。中でもパリ~ニースで総合優勝を果たしたばかりのタデイ・ポガチャルをエースに据えたUAEチームエミレーツは名所の勝負所、チプレッサでクラシックハンターのティム・ウェレンスらの猛烈なアシストでライバルチーを削りにかかる。縦一列に伸びていく集団はポッジオに差し掛かると一気に勝負の場となる。
力量はあまりにもはっきりしていた。残り6.0㎞で先頭がポガチャル、ファン・デル・ポエル、フィリッポ・ガンナ(イネオス・グレナディアス)、ワウト・ファン・アールト(ユンボ・ヴィズマ)の僅か4名に絞られると、その直後の残り5.5㎞で4人の先頭にいたファン・デル・ポエルが猛烈な加速を見せる。一瞬の間に開いた20mほどの距離、その距離を維持したままつづら折れの下りに入っていくと、シクロクロッサーのバイクコントロールが炸裂する。追走のファン・アールトも同じくシクロクロッサーとしての腕前を見せるが、同じ力量と技術ではその差は縮まらない。ガンナとポガチャルは二人に比べライン取りが異なり、180度ヘアピンのたびに僅かだが差が開く。これでは先頭のファン・デル・ポエルを捉まえることはできない。
結局目の前の背中は近くて遠かった。残り1㎞、ファン・デル・ポエルが優勝を確信したと同時に、追走のガンナ、アールト、ポガチャルは2位争いの駆け引きに入る。これで勝負あり、ファン・デル・ポエルが2度のツアー・オブ・フランダースに次ぐ、3度目のモニュメント制覇を成し遂げた。その背後ではスプリント勝負となり、ガンナが2位、クラシックシーズン本番へ向けチームの新たなクラシックエースに名乗りを上げた。ファン・アールトが3位、ステージレースの疲れ残るポガチャルは4位に終わった。
「ここでの勝利を僕自身誰よりも欲しがっていたのを皆知っていたよ。そしてチームにとっても待ちわびた勝利だったんだよ。チプレッサでもポッジオでも”走れてる”って感じてたんだよ。そして先頭で後ろを確認したときに、僅かにスペースが開いたのがわかったので、これはチャンスとばかりにそのまま一気に仕掛けたんだよ。下りではそんなリスクは取らずに安全に行ったよ。万が一追いつかれても、スプリントで勝てるという確信もあったので焦りは全くなかったよ。まあだから単独で逃げ切るほうがリスキーだったかもしれないね。でもせっかくなので最後まで逃げてみるかと腹をくくったんだよ。」ファン・デル・ポエルは攻めることなく下りであの速さだったことを明かした。
今シーズンさらに勝利を積み重ねることができるか、バイクコントロールとオフロードを駆け抜ける技術の両方が試されるレースが多い春先のクラシックでのさらなるパフォーマンスに期待がかかる。
ミラノ・サンレモ2023
優勝 マシュー・ファン・デル・ポエル(アルペシン・ドゥクーニンク) 6h25’23”
2位 フィリッポ・ガンナ(イネオス・グレナディアス) ∔15”
3位 ワウト・ファン・アールト(ユンボ・ヴィズマ)
4位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)
5位 ソレン・クラー・アンデルセン(アルペシン・ドゥクーニンク) ∔26”
6位 マッズ・ペデルセン(トレック・セガフレド)
7位 ニールソン・パウレス(EFエデュケーション・イージーポスト)
8位 マテイ・モホリッチ(バーレーン・ヴィクトリアス)
9位 アンソニー・チュルギス(トータルエナジーズ)
10位 ヤスパー・ストゥーヴェン(トレック・セガフレド)
H.Moulinette