ブエルタ・ア・エスパーニャ2022St.14:カラパズが今大会2度目の逃げ切り勝利!総合バトルに異変あり、エヴァネポエルがログリッチに振り切られるもマイペースでダメージを抑える(ダイジェスト動画あり)
すでに総合から大きく脱落していた、グランツール覇者のリチャード・カラパズ(イネオス・グレナディアス)が逃げに乗り勝利したのが僅か2日前、そしてこの日もカラパズは逃げに乗ると、そのまま最後までただ一人逃げ続け見事ステージ優勝、迫りくる総合バトルの先頭、プリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ)を僅かに振り切り、見事今大会二度目の逃げ切り勝利を挙げて見せた。総合でのジャンプアップでのトップ10入りはならなかったが、ベテランがきっちりと結果を残して見せた。「ここのコースは知っていたからね。だったらなぜ仕掛けないのか?ということになるでしょ。」と自らがこのコースを熟知していたことが勝利につながったことを明かした。
そして総合争いでも大きな動きがあった。ここまでのステージでハイペースで先頭で引き続ける作戦でライバルたちを撃破してきたレムコ・エヴァネポエル(クイックステップ・アルファヴァイニル)だったが、ここへきて手薄なアシストを痛感することとなる。ゴールまで残り3㎞、大会総合4連覇を狙うプリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ)がゆるりと前に出て、エヴァネポエルの動きを確認すると、そのままじわじわとペースアップし、その差を引き離していった。最終的に48秒の差をエヴァネポエルにつけてゴール、これで総合でも一気に1分49秒差まで迫ってきた。それでもエヴァネポエルは遅れてからも乱れぬマイペース走法でダメージを最小限に抑え、一部のライバルにタイム差をつけた。
明日の第15ステージのクイーンステージとも言われる難関山岳ステージを前に、この第14ステージでいかに総合争いで各選手たちが動くのかに注目が集まった。そんなステージは今シーズンで引退をするヴィンチェンツォ・ニーバリ(アスタナ・カザフスタン))らの積極的なアタックで幕を開ける。しかしクイックステップ・アルファヴァイニルを中心に、ハイペースでレースは進み最初の1時間を平均時速49.2㎞でクリア、逃げが決まらない。
しかし160㎞のレースは残り90㎞でメイン集団にコントロールに疲れが見え始めると、カラパズとアレクセイ・ルチェンコ(アスタナ・カザフスタン)らがアタックを敢行、これにさらにポイント賞のマッズ・ペデルセン(トレック・セガフレド)ら6名が合流し、ようやくこの日の逃げとなった。ペデルセンは明確にこの日の中間スプリントをターゲットとし、予定通りポイントを獲得した。
最大で4分ほどまで広がったその差は、この日最後の頂上ゴール、二つの山岳ポイントが連なった19㎞の山岳に突入する時点ではまだ3分半、カラパズにとっては理想的な展開となる。平坦でアシストを酷使したクイックステップ・アルファヴァイニルにとってはこの山岳はつらいものとなる。対してユンボ・ヴィズマ、イネオス・グレナディアスらライバルチームは山岳でのアシストに十分に残しており、エヴァネポエルにとっては我慢の連続となった。そしてユンボ・ヴィズマのペースアップで総合勢は大きく絞られていく。
先頭ではカラパズが単独となるが、後続の総合バトルが勃発したことでその差はぐんぐんと縮まっていく。そして総合バトルでついに大きな動きが発生する。残り3㎞以上を残し、総合2位のログリッチが仕掛ける。するすると抜け出しその差を広げていく。これに反応できないエヴァネポエルの様子を見た総合3位のエンリック・マス(モビスター)、さらには総合7位のミゲル・アンヘル・ロペス(アスタナ・カザフスタン)も動く。これで置いて行かれたエヴァネポエルは苦悶の表情を浮かべながらもなんとか自分のリズムを維持しようと必死の走りを見せる。さらには総合4位のカルロス・ロドリゲス(イネオス・グレナディアス)、総合8位のジョアオ・アルメイダ(UAEチームエミレーツ)にも先行を許してしまう。総合5位のホァン・アユソ(UAEチームエミレーツ)はここでまさかのパンク、エヴァネポエルからも遅れるが、シマノのニュートラルサービスからバイクを受け取ると、そのバイクのままでエヴァネポエルに追いつき追い越していく。
先頭のカラパズの背後にまで迫ったログリッチとロペスだったが、カラパズは最後まで逃げ切ることに成功、今大会2勝目をチームにもたらした。その背後ではロペス、ログリッチが相次いでゴール、少し離れてアルメイダ、ロドリゲス、マスの順でゴールを果たした。エヴァネポエルは一度はペースが落ちたものの、そこから踏ん張りを見せペースをうまく維持することができたことで、一度は話されたアユソに追いつき一緒にゴールした。ゴール後には笑顔を見せ、「何とか踏ん張ったけど、しんどかったよ。これが僕のバッドデイであって欲しいね。」と口にした。
総合争いは再び激化の様子を見せている。総合2位、3位、4位のログリッチ、マス、ロドリゲスはエヴァネポエルに対してタイムを詰め、難関ステージでの一発逆転が可能なタイム差につけている。そして総合トップ10争いも激化、3分半ほどのタイム差に6人がひしめき合っている。大ベテランのアレハンドロ・バルベルデ(モビスター)もその中につけている。
ブエルタ・ア・エスパーニャ第14ステージダイジェスト
ブエルタ・ア・エスパーニャ第14ステージ順位
1位 リチャード・カラパズ(イネオス・グレナディアス) 4h09’27”
2位 プリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ) +8”
3位 ミゲル・アンヘル・ロペス(アスタナ・カザフスタン)
4位 ジョアオ・アルメイダ(UAEチームエミレーツ) ∔27”
5位 カルロス・ロドリゲス(イネオス・グレナディアス) ∔36”
6位 エンリック・マス(モビスター)
7位 サイメン・アレンスマン(チームDSM) ∔51”
8位 レムコ・エヴァネポエル(クイックステップ・アルファヴァイニル) ∔56”
9位 ホァン・アユソ(UAEチームエミレーツ)
10位 ウィルコ・ケルデルマン(ボーラ・ハンスグロエ) ∔1’24”
ブエルタ・ア・エスパーニャ総合順位
1位 レムコ・エヴァネポエル(クイックステップ・アルファヴァイニル) 52h21’33”
2位 プリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ) +1’49”
3位 エンリック・マス(モビスター) +2’43”
4位 カルロス・ロドリゲス(イネオス・グレナディアス) +3’46”
5位 ホァン・アユソ(UAEチームエミレーツ) +4’53”
6位 ミゲル・アンヘル・ロペス(アスタナ・カザフスタン) +6’02”
7位 ジョアオ・アルメイダ(UAEチームエミレーツ) +6’49”
8位 ウィルコ・ケルデルマン(ボーラ・ハンスグロエ) +6’56”
9位 タオ・ゲイガンハート(イネオス・グレナディアス) +8’49”
10位 ベン・オ・コナー(AG2Rシトロエン) +9’12”
H.Moulinette