ブエルタ・ア・エスパーニャ2022St.15:クイーンステージを制したのはアレンスマン!逃げきり勝利で総合8位に、エヴァネポエルは連日ログリッチとマスに敗北もマイヨ・ロホをキープ(ダイジェスト動画あり)
今大会の最難関ステージ、カギとなる山岳ステージは、ステージ優勝、総合争い共に激しいバトルの応酬となった。逃げ切りでのステージ優勝を果たしたはサイメン・アレンスマン(チームDSM)、来シーズンのイネオス・グレナディアス入りが確実視されている男が、ブエルタのステージ優勝を言う最高の手土産を確保した。そのうえこれで総合で8位までジャンプアップ、成長著しい男が大きな仕事をやってのけた。
そして総合争いでは激しい応酬の末、総合3位のエンリック・マス(モビスター)が総合6位のミゲル・アンヘル・ロペス(アスタナ・カザフスタン)がアタックを仕掛け、マイヨ・ロホのレムコ・エヴァネポエル(クイックステップ・アルファヴァイニル)に対し30秒以上のタイムを奪い返した。さらにはプリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ)もチームの作戦がはまらず、エヴァネポエルに積極的な攻撃を仕掛けられないままに終わるかに思われたが、最後の最後で力を振り絞ってのアタック、何とか僅か15秒だがタイムを取り返すことに成功した。
エヴァネポエルはこの日もマイペースを崩さず、さらにはライバルたちのアタックにも動じず、淡々と上り切ったことでまたしても決定的なタイム差を失わずに済んだ。ペースの上げ下げで攻めるインターバル走法で攻める選手が多い中で、ジョアオ・アルメイダ(UAEチームエミレーツ)と同様の一定のリズムで上り続けるペース走法を常とするエヴァネポエルは、前半の貯金を切り崩しながらも、まだ1分半の貯金をログリッチ相手に保っている。
僅か149.6㎞のこの日のステージで、一級、超級が連なる22.5㎞までの標高2501mに駆け上がる上りでのゴール、激しい総合バトルが予想された。スタート間もなく総合8位のウィルコ・ケルデルマン(ボーラ・ハンスグロエ))が落車に巻き込まれるが、何とか隊列に復帰を果たす。そしてはまたしてもリチャード・カラパズ(イネオス・グレナディアス)がこの日の逃げに乗る。さらには総合12位のサイメン・アレンスマン(チームDSM)、ジロ覇者のジェイ・ヒンドリー(ボーラ・ハンスグロエ)、ツール総合7位のルイ・メインチェス(インターマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオー)ら強豪に加え、今シーズンで引退のヴィンチェンツォ・ニーバリ(アスタナ・カザフスタン)、ポイント賞ジャージのマッズ・ペデルセン(トレック・セガフレド)、山岳賞ジャージのジェイ・ヴァイン(アルペシン・ドゥクーニンク)も飛び出していく。そして各チーム、エースを勝負所でアシストするべく選手を送り込んだ逃げは、29名にまで膨れ上がった。
マイヨ・ロホ擁するクイックステップ・アルファヴァイニルはメイン集団をコントロール、そして連なる山岳の最初の難関1級山岳、最大勾配20%を超える激坂へと突入していく。逃げ集団ではローソン・クラドック(バイクエクスチェンジ・ジェイコ)が飛び出し、さらには山岳賞を狙うヴァインがこれに合流する。背後のメイン集団ももよそ4分半遅れで突入すると、こちらはあっという間に選手たちが脱落し始め、クイックステップ・アルファヴァイニルと総合10位のベン・オ・コナー擁するAG2Rシトロエンがペースを作る。
ステージ優勝を目指すは熾烈を極めるが、マルク・ソレル(UAEチームエミレーツ)が抜け出し後続に40秒ほどのタイム差をつけたが、アレンスマンがこれを猛追、これを捉えるとそのまま一気に抜き去り最後まで単独で走り切り、歓喜の涙を流した。「信じられないよ!ソレルに追いついたときは、そこからどのタイミングで仕掛けようかと考えたけど、彼が全く僕についていけなかったので、そのまま一気にペースを上げていったんだよ。」アレンスマンは勝負所の様子をそう説明した。
その背後ではさまざまなドラマが起きていた。ローハン・デニスとサム・オーメンの二人を逃げに送り込んだが、超級山岳を前に早々と合流、このまま一気に仕掛けるかに思われた。しかし超級山岳の上り初めでペースアップをした二人のアシストに対し、ログリッチは反応できず、この作戦は空振りに終わる。そしてエヴァネポエルは相変わらずのマイペース走法で淡々と走り始めると、今大会見られてきた総合リーダーの鬼引きが始まった。
この日の隊列はエヴァネポエル、ログリッチ、マスに加え、ロペスとオ・コナーがそれに加わる形となる。そして残り13.6㎞の緩斜面で逃げに乗っていたルイ・ファルファエケ(クイックステップ・アルファヴァイニル)が完璧なタイミングで合流、エースをアシストすべくペースを作る。しかし残り10.5㎞でロペスがアタックを決めると、遅れてマスが飛び出していく。ログリッチは脚がないのか、ここでこれを追走しない。そしてエヴァネポエルもアシストを失い、ログリッチとオ・コナーを引き連れ通常営業のマイペース走法を貫キ30秒ほどの差で踏みとどまる。
さらにはゴールが近づきログリッチとオ・コナーがアタックを決めても、エヴァネポエルは冷静沈着、マイ・ペースを貫き通した。タイムは失ったものの、昨日同様に致命的とはならず、結果的にライバルたちに差は詰められたものの、総合リーダージャージをがっちりとキープしたままステージを終えた。「こんなに標高が高いところでゴールしたことないよ。落車の影響がまだ少しあって筋肉がこわばるんだけど、よくなってきているよ。だから明日は休めるのが嬉しいね。今日のタイムロスは想定範囲内だよ。」エヴァネポエルに焦りは全くないようだ。
ブエルタ・ア・エスパーニャ第15ステージダイジェスト
ブエルタ・ア・エスパーニャ第15ステージ順位
1位 サイメン・アレンスマン(チームDSM) 4h17’17”
2位 エンリック・マス(モビスター) +1’23”
3位 ミゲル・アンヘル・ロペス(アスタナ・カザフスタン) +1’25”
4位 ジェイ・ヴァイン(アルペシン・ドゥクーニンク) ∔1’30”
5位 プリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ) ∔1’44”
6位 ベン・オ・コナー(AG2Rシトロエン)
7位 ホァン・アユソ(UAEチームエミレーツ) ∔1’55”
8位 ジェイ・ヒンドリー(ボーラ・ハンスグロエ
9位 ルイ・メインチェス(インターマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオー)
10位 レムコ・エヴァネポエル(クイックステップ・アルファヴァイニル) ∔1’59”
ブエルタ・ア・エスパーニャ総合順位
1位 レムコ・エヴァネポエル(クイックステップ・アルファヴァイニル) 56h40’49”
2位 プリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ) +1’34”
3位 エンリック・マス(モビスター) +2’01”
4位 ホァン・アユソ(UAEチームエミレーツ) +4’49”
5位 カルロス・ロドリゲス(イネオス・グレナディアス) +5’16”
6位 ミゲル・アンヘル・ロペス(アスタナ・カザフスタン) +5’24”
7位 ジョアオ・アルメイダ(UAEチームエミレーツ) +7’00”
8位 サイメン・アレンスマン(チームDSM) +7’05”
9位 ベン・オ・コナー(AG2Rシトロエン) +8’57”
10位 ジェイ・ヒンドリー(ボーラ・ハンスグロエ) +11’36”
H.Moulinette