ブエルタ・ア・エスパーニャ2022St.12:山頂ゴールバトルを制したのは逃げから仕掛けたカラパズ!同じ逃げのケルデルマンとポランクが総合トップ10入り、エヴァネポエルマイペース登坂でまたもライバル撃破(ダイジェスト動画あり)
総合上位候補ながら、それから脱落してしまった選手は山岳ステージで逃げに乗ることがある。大博打ではあるが、それで大きくタイムを取り返すことも可能なそんなギャンブルは時として成功する。総合リーダーには届かなくとも、総合トップ10に返り咲ければ万々歳という攻撃的走りは、時に協調体制を強いものとし結果につながる。このステージではゴール前に19㎞の長い上りがあり、山岳も得意とする遅れてしまっていた総合系にとっては、最高の舞台が整っていた。その大逃げに乗りステージ勝利を掴み取ったのはリチャード・カラパズ(イネオス・グレナディアス)、東京五輪ロード金メダリストにしてグランツール覇者は、この大博打で総合順位を上げるとともに、ブエルタでの初めてのステージ優勝を挙げた。総合でも16位まで順位を上げてきた。
そして同じ逃げに乗ったウィルコ・ケルデルマン(ボーラ・ハンスグロエ)、さらにはヤン・ポランク(UAEチームエミレーツ)にとっては大成功のステージとなった。総合での順位を大きく上げ、それぞれ総合6位と9位へと大きくジャンプアップを果たした。
そして総合リーダーのレムコ・エヴァネポエル(クイックステップ・アルファヴァイニル)は、全ステージ途中で落車を喫するも、最後の上りに入ると、またしてもマイペースの高速ペダリングで延々とライバルたちを引きずり回し、アタックを仕掛ける隙を与えない完璧な走りでリーダージャージを守った。通常は先頭で脚を使うのを嫌い、ライバルに先頭を引かせたり、ペースの上げ下げなど駆け引きをするのが常だが、エヴァネポエルは全くお構いなし、自分のハイペースで走り続け駆け引きをしないというスタイルを貫き通している。
このステージは最後の上り以外平坦の192.7㎞の長丁場のレース、だからこそのチャンスに飛び津オタ逃げはみるみる間に膨れ上がり、最終的に32名の大所帯となった。総合トップ10圏外の選手たちばかりとは言え、実力ある総合系も混じったことで、メイン集団のペースは上がるかに思われたが、さすがに逃げ集団が大きすぎることもあり、タイム差はみるみる間に広がっていった。最大で10分以上にまで広がり、最後の上りに入る時点でもまだ10分差を維持したまま最後の上り勝負となった。
メイン集団ではエヴァネポエルが落車、擦り傷と切り傷を負いながらも「影響はなかった、ただバイクがぶっ壊れた。」とし、「走行に影響はなかった。」と話した。エヴァネポエルは調子よく集団復帰、そして上りに入っても一切手を緩めない走りを見せた。
先頭集団ではクライマーたちに絞られていったが、残り2㎞でカラパズがアタック、それにケルデルマンらが反応をするが、調子を戻してきているカラパズの走りに追いつくことはできなかった。そしてメイン集団ではひたすら引き続けるエヴァネポエルに、総合2位のプリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ)もただついていくだけ、積極的な攻撃を普段見せる男でさえ、エヴァネポエルの背中を見ながら走り続けるしかなかった。エンリック・マス(モビスター)と、ルイ・アンヘル・ロペス(アスタナ・カザフスタン)が辛うじてエヴァネポエルについていくことができた。総合4位のカルロス・ロドリゲス((イネオス・グレナディアス)を含む他の総合トップ10は軒並みタイムを失う形となった。
総合ではチームUAEエミレーツがこれで3名をトップ10に送り込む形となった。イネオス・グレナディアスもトップ10に2人、そしてカラパズも挙げてきただけに、攻撃的手札は整った感がある。
ブエルタ・ア・エスパーニャ第12ステージダイジェスト
ブエルタ・ア・エスパーニャ第12ステージ順位
1位 リチャード・カラパズ(イネオス・グレナディアス) 4h38’26”
2位 ウィルコ・ケルデルマン(ボーラ・ハンスグロエ) +09”
3位 マルク・ソレル(UAEチームエミレーツ) +24”
4位 ヤン・ポランク(UAEチームエミレーツ) +26”
5位 マルコ・ブレナー(チームDSM) +34”
6位 エリー・ジェスベール(アルケア・サムシック) +56”
7位 ジェイ・ヴァイン(アルペシン・ドゥクーニンク) +1’12”
8位 カール・フレドリック・ヘーゲン(イスラエル・プレミアテック) ∔1’23”
9位 ジェームス・シャウ(EFエデュケーション・イージーポスト) ∔3’04”
10位 マッテオ・ファブロ(ボーラ・ハンスグロエ) +3’17”
ブエルタ・ア・エスパーニャ総合順位
1位 レムコ・エヴァネポエル(クイックステップ・アルファヴァイニル) 44h25’09”
2位 エンリック・マス(モビスター) +2’41”
3位 プリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ) +3’03”
4位 カルロス・ロドリゲス(イネオス・グレナディアス) +4’06”
5位 ホァン・アユソ(UAEチームエミレーツ) +4’53”
6位 ウィルコ・ケルデルマン(ボーラ・ハンスグロエ) +6’28”
7位 ミゲル・アンヘル・ロペス(アスタナ・カザフスタン) +6’56”
8位 ジョアオ・アルメイダ(UAEチームエミレーツ) +7’18”
9位 ヤン・ポランク(UAEチームエミレーツ) +8’00”
10位 タオ・ゲイガンハート(イネオス・グレナディアス) +8’05”
H.Moulinette