ブエルタ・ア・エスパーニャ2022St.6:26歳ヴァインがプロ初勝利を濃霧の山岳ステージで決める!エヴァネポエルが2位で総合首位!6日で6人目の日替わりマイヨ・ロホ(ダイジェスト動画あり)
今年のブエルタ初登場の山岳ステージ頂上ゴールは、初めてプロレースで使用されるということもあり、すべての選手にとって未開の地だった。さらに雨との有無という悪天候がレースの展開をより難しくする中で、最後の上りで先頭のマーク・パドゥン(EFエデュケーション・イージーポスト)に対し単独猛追を仕掛けたジェイ・ヴァイン(アルペシン・ドゥクーニンク)が鮮やかな逆転独走勝利を飾った。26歳のオーストラリア人選手にとってはプロ初勝利、それがグランツールでの山岳ステージ勝利という最高の形となった。
「現実感がないよ。スタートから5㎞でパンク、残り70㎞では逃げに乗るのも失敗、でもそれでもチーム戦略としては僕が最終局面まで残れるようにということだったんだ。それをまさか総合上位勢のいるメイングループから飛び出して勝利が奪えるなんて、本当に信じられないよ!去年は紙一重で勝利を逃したけど、今年は勝ったんだよ!夢のようだよ!」ヴァインは喜びを爆発させた。
そんなステージで総合争いにも大きな動きが発生する。今大会最も総合優勝に近いと思われていたプリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ)が、今大会を来年度のジロ・デ・イタリアでの総合狙いのための「実験」と称しているレムコ・エヴァネポエル(クイックステップ・アルファヴァイニル)のアタックに対応できず脱落、1分以上もタイム差をつけられ総合順位でも逆転をされた。エヴァネポエルはヴァインから15秒差の単独2位でゴール、これで昨日総合リーダージャージを獲得したルディー・モラード(グルーパマFDJ)からマイヨ・ロホを奪取、これでグランツール史上2度目の開幕から6日で6人目の総合リーダーというレアケースとなった。
バスク地方へと突入した第6ステージの悪天候は間違いなく選手たちの戦術を狂わせた。ブエルタ・ア・エスパーニャと言えば乾いた大地のイメージが強い中、この地域は雨も多く緑豊かな地域、しかしそれは同時に選手たちにとっては温度変化や湿度変化など、調子を狂わせる要因が多いということでもある。さらには最初の山岳ステージ、そして知らないコースということもあるスタート直後から金星を狙いパドゥンを含めた10名の逃げが決まる。
逃げとメイン集団との差は5分ほどで推移、グルーパマFDJとクイックステップ・アルファヴァイニルが積極的な動きでその差を詰めていたが、エヴァネポエルのメカトラで一旦落ち着きを見せる。しかし残り60㎞を切ると今度はイネオス・グレナディアスが追走のペースアップ、するとその差はみるみる縮まっていく。しかしアップダウンのぬれた路面は容赦なく選手たちを落車へと導き、逃げ集団もメイン集団も神経質にならざるを得ない。
そして終盤の1級山岳に入るとその差はわずか2分程度、逃げ集団ではパドゥンが飛び出し単独走となり、メイン集団ではジュリアン・アラフィリップ(クイックステップ・アルファヴァイニル)が先頭でペースを作り始める。雨で濡れた路面は、総合上位勢にとっては絶対に落車してはいけないというプレッシャーともなり、なかなか下りが得意な選手が攻めの一手を打つことができない。
そして迎えたカテゴリー1級ピコ・ヤノまでの上りゴール、今度は雨だけではなく濃霧が選手たちの視界を遮る。前の選手たちが見えれば、それがペースづくりには目安になるが、その情報がないうえに、道も狭い個所などがありなかなか攻めにくい展開が続く。それを逆手にとってパドゥンは1分差で突入したこの上りで検討を見せる。その上り初めで追走を仕掛けたのはヴァイン、そのまま単独で快調に先頭を追っていく。そしてそれを追うように残り10㎞でサイモン・イェーツ(バイクエクスチェンジ・ジェイコ)がアタックを仕掛けると、これで一気に総合上位勢のサバイバルバトルが開幕する。その中から抜け出したのはエヴァネポエルとエンリック・マス(モビスター)、快調に飛ばしていく二人をよそに、ログリッチが伸びない。それに合わせるように他のライバルたちもエヴァネポエルとマスの二人を追走することができない。
そして先頭争いでは粘り続けていたパドゥンをヴァインが残り6.5㎞で捉えるとそのまま独走態勢へと持ち込んでいく。そのヴァインの背後15秒差までエヴァネポエルは迫るが、濃霧が影響し、その差が目視できない。そのためこの差は最後まで縮まることなく、ヴァインは見えない背後を振り返りエヴァネポエル達の雰囲気をそばに感じながらも勝利を確信、見事ステージを制した。
エヴァネポエルは最後にマスを振り切り2位でゴールタイム差をつけることに成功した上にタイムボーナスも獲得した、さらにモラードが最後の上りで大きく後れを取ったことでマイヨ・ロホまで獲得してしまった。またエヴァネポエルらを単独追走し続けたホァン・アユソ(UAEチームエミレーツ)が粘り続けてステージ4位、長期契約を結んだばかりの若者がその大器の片鱗を見せた。ログリッチは「純粋に脚がなかった」としながらも、「雨と濃霧に対応できなかった」灯しており、エヴァネポエルから1分22秒遅れてのステージ5位となった。これで総合は大シャッフル、このステージでは優勝候補の一角リチャード・カラパズ(イネオス・グレナディアス)はログリッチからも1分半ほど遅れ、このステージ最大の犠牲者となった。
ブエルタ・ア・エスパーニャ第6ステージダイジェスト
ブエルタ・ア・エスパーニャ第6ステージ順位
1位 ジェイ・ヴァイン(アルペシン・ドゥクーニンク) 4h38’00”
2位 レムコ・エヴァネポエル(クイックステップ・アルファヴァイニル) +15”
3位 エンリック・マス(モビスター) +16”
4位 ホァン・アユソ(UAEチームエミレーツ) +55”
5位 プリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ) +1’37”
6位 パヴェル・シヴァコフ(イネオス・グレナディアス)
7位 タオ・ゲイガンハート(イネオス・グレナディアス)
8位 ジェイ・ヴァイン(ボーラ・ハンスグロエ)
9位 カルロス・ロドリゲス(イネオス・グレナディアス)
10位 サイモン・イェーツ(バイクエクスチェンジ・ジェイコ)
ブエルタ・ア・エスパーニャ総合順位
1位 レムコ・エヴァネポエル(クイックステップ・アルファヴァイニル) 20h50’07”
2位 ルディー・モラード(グルーパマFDJ) +21”
3位 エンリック・マス(モビスター) +28”
4位 プリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ) +1’01”
5位 ホァン・アユソ(UAEチームエミレーツ) +1’12”
6位 パヴェル・シヴァコフ(イネオス・グレナディアス) +1’27”
7位 タオ・ゲイガンハート(イネオス・グレナディアス)
8位 カルロス・ロドリゲス(イネオス・グレナディアス) +1’34”
9位 サイモン・イェーツ(バイクエクスチェンジ・ジェイコ) +1’52”
10位 ジョアオ・アルメイダ(UAEチームエミレーツ) +1’54”
H.Moulinette