ツール・ド・フランス2022St.15 :フィリップセンがスプリントでツール初勝利!ユンボ・ヴィズマには悪夢の一日、ログリッチ、クライズワイクがリタイアに、ヴィンゲガードも落車(ダイジェスト動画あり)
久しぶりのスプリントステージとなった第15ステージ、総合を狙うユンボ・ヴィズマにとっては休息日前の平坦ステージが悪夢の一日となった。ステージ前に総合勝利には必要不可欠なプリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ)が第5ステージの脱臼が原因でリタイア、さらに中盤ではもう一人のキーアシスト、スティーブン・クライズワイク(ユンボ・ヴィズマ)が落車でリタイアすることとなった。この落車にはワウト・ファン・アールト(ユンボ・ヴィズマ)も巻き込まれ、そしてその直後には別の落車で総合リーダーのヨナス・ヴィンゲガード(ユンボ・ヴィズマ)と、アシストのティス・ベノート(ユンボ・ヴィズマ)が落車、ヴィンゲガードはメイン集団に復帰を果たしたが、ジャージは落車の跡がしっかりと見て取れた。
そんな悪夢のようなステージも、だれかにとっては夢のステージとなる。今大会だけでも2度トップ3に、過去8度のトップ3に入っていたヤスパー・フィリップセン(アルペシン・ドゥクーニンク)が、マッズ・ペデルセン(トレック・セガフレド)、ファン・アールトとの三つ巴スプリント勝負を制し、うれしいツール・ド・フランス初勝利を飾った。「今日ようやく勝てるチャンスが巡ってきたよ。ずっと狙い続けて、今日、今大会の第15ステージまでかかってしまったよ。」歓喜の涙で声を詰まらせながら語った。
202.5㎞の長丁場となったこのステージ、ヨーロッパを熱波が襲い、選手とチームは肉体的にかなりつらいレースとなった。アイスパック入りベストなど、暑さ対策とともに、脱水症状を避けるために頻繁に給水、皿には水を体や頭からかけて気化熱で体を冷やすなど、選手たちは様々な方法で暑さと戦った。
スタート直後からアタックがかかり、ワウト・ファン・アールト(ユンボ・ヴィズマ)がまたしても逃げに乗る。僅か3名の逃げとなったため、ユンボ・ヴィズマはチーム戦略を優先、30㎞ほどでファン・アールトをメイン集団に呼び戻す。これにより戦闘はニルス・ポリット(ボーラ・ハンスグロエ)とミケル・ホノレ(クイックステップ・アルファヴァイニル)の二人だけとなる。
そしてそのまま何事もなく進んでいたレースが慌ただしくなったのは残り64㎞、クライズワイクの落車だった。痛みで放送禁止用語を叫ぶクライズワイク、肩の脱臼でそのままリタイアとなってしまう。そしてそれから程なくして、今度はロータリーを左右から抜けて合流した集団で、べノートが落車、それにヴィンゲガードが巻き込まれてしまう。ほんのわずかの間にユンボ・ヴィズマは一気に今大会での今後の戦略を変えなければいけないほどの事態となってしまった。
その後逃げの二人が捉まると、今度は新たな逃げが発生する。ベンジャミン・トーマス(コフィディス)とアレクシス・グジャール(B&BホテルズKTM)が飛び出していく。トーマスは逃げ続け、コフィディスに2008年以来の勝利をもたらすかに思われたが、残り400mでスプリント集団に飲み込まれてしまった。
スプリントで先行したのはペデルセン、それをファン・アールトが右へ、フィリップセンが左へと展開、ペデルセンは左右からの加速に飲み込まれステージ3位、ファン・アールトはまたもステージ2位、そして勝利がなかったフィリップセンが念願の勝利を挙げた。
このステージでユンボ・ヴィズマがアシストを失ったことに対し、エースで総合リーダーのヴィンゲガードは「レースなのでこういう日もあるし仕方がない。」と割り切りを見せ、ライバルのゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアス)は、「残念な結果」としながらも、「これからの山岳は間違いなくより面白くなるだろう。」とライバルのアシストの弱体化が大会を混沌とさせる可能性に言及した。
ツール・ド・フランス第15ステージダイジェスト
ツール・ド・フランス第15ステージ順位
1位 ヤスパー・フィリップセン(アルペシン・ドゥクーニンク) 4h27’27”
2位 ワウト・ファン・アールト(ユンボ・ヴィズマ)
3位 マッズ・ペデルセン(トレック・セガフレド)
4位 ピーター・サガン(ダイレクトエナジーズ)
5位 ダニー・ファン・ポッペル(ボーラ・ハンスグロエ)
6位 ディラン・グローネウェーヘン(ダイレクトエナジーズ)
7位 フロリアン・セネシャル(クイックステップ・アルファヴァイニル)
8位 ルーカ・モッツァート(B&BホテルズKTM)
9位 アンドレア・パスカロン(インターマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオー)
10位 フレッド・ライト(バーレーン・ヴィクトリアス)
ツール・ド・フランス総合順位
1位 ヨナス・ヴィンゲガード(ユンボ・ヴィズマ) 59h58’28”
2位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ) +2’22”
3位 ゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアス) +2’43”
4位 ロメイン・バルデ(チームDSM) +3’01”
5位 アダム・イェーツ(イネオス・グレナディアス) +4’06”
6位 ナイロ・キンターナ(アルケア・サムシック) +4’15”
7位 ルイス・メインチェス(インターマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオー) +4’24”
8位 ダビ・ガウドゥ(グルーパマFDJ)
9位 トム・ピドコック(イネオス・グレナディアス) +8’49”
10位 エンリック・マス(モビスター) +9’58”
H.Moulinette