ツール・ド・フランス2022St.14:スプリンターのマシューズが驚きの逃げ切り勝利!上りで逆転されるも再逆転!メインチェスが総合7位までジャンプアップ、攻撃的ポガチャル健在(ダイジェスト動画あり)


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ゴール前に勝負どころになりうる10%以上の勾配の上りが待ち構えるこのステージ、逃げが容認される可能性は高く、また総合勢も直接対決で動くと思われた。そしてその予想通りの大所帯の逃げから飛び出し、最後は独走勝利を決めたのはなんとスプリンターのマイケル・マシューズ(バイクエクスチェンジ・ジェイコ)、上りで一度は猛追してきたアルベルト・ベッティオール(EFエデュケーション・イージーポスト)に逆転されるもそこから粘り、踏ん張り、勾配が緩やかになったところで再逆転、そのまま一気にアタックを仕掛けて突き放し、ゴール前では沿道の観衆にパフォーマンスをしながらツール・ド・フランス5年ぶり、通算4勝目を挙げた。そしてこの逃げに乗っていたルイス・メインチェス(インターマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオー)は、メイン集団に対し大きなタイム差をつけてゴール、一気に総合13位から7位へと順位を上げただけでなく、総合表彰台圏内争いへも参入するかたちとなった。

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「この勝利は特別だよ。人生アップダウンがあり、ここ何年も大きな結果を残せず来た。そして選手として共にいる時間を削るなど家族にも大きな犠牲を強いてきた。ようやくその恩に報いることができた。全てはこの勝利のためだったと伝えられるよ。最後の上りではずっと娘のことを考えていた。それが最後まで背中を押してくれた。この勝利は娘のための勝利だよ。今大会何度も2位になったけど、僕がただのスプリンターじゃないことを示したかったんだ。このステージが最後のチャンスだと思っていたから、思い切って仕掛けたんだよ。」マシューズは家族への思いと感謝を口にした。

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192.5㎞のこの日のステージは序盤から予想外のことが起きる。スタート直後に逃げが発生するが、その背後でなんとタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)がアタックを仕掛けたのだ。これにマイヨ・ジョーヌのヨナス・ヴィンゲガード(ユンボ・ヴィズマ)は何とか対応、しかしそれをサポートするチームメイトはワウト・ファン・アールト(ユンボ・ヴィズマ)しかいない状況となる。まさかのアーリーアタックに加え、いきなりのペースアップはまだ体が温まっていないメイン集団を粉砕するには十分だった。一度は落ち着くも、ポガチャルは執拗に揺さぶりをかけるアタックを敢行、隙あれば逃げるという姿勢を貫いた。しかしヴィンゲガードとファン・アールトはこれにしっかりと対応し続け、集団は落ち着きを取り戻したが、メイン集団はこの時点で二つに分断される形となった。そしてそれによりヴィンゲガードは、プリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ)を含む半分のアシストを失うこととなった。
50名ほどになった先頭のメイン集団はユンボ・ヴィズマが徹底してコントロール、3分弱後方のログリッチ集団の合流を待とうしたが、スタートから40㎞を過ぎ、逃げをもくろむアタックが頻発、ユンボ・ヴィズマも人数を減らしているためそのすべてには対応できず、逃げが決まることとなる。山岳ポイントを獲得したい山岳賞ジャージのサイモン・ゲシュケ(コフィディス)のアタックを号砲に、リゴベルト・ウラン(EFエデュケーション・イージーポスト)、ティボー・ピノー(グルーパマFDJ)、ダニエル・マルチネス(イネオス・グレナディアス)ら総合争いから脱落している実力者たちが次々とアタック、さらにはマシューズらもそれに加わり最終的には23名の大所帯の逃げが決まる。ユンボ・ヴィズマはこれにより、明確に後続のログリッチらを待つ選択しかなくなった。
そうなれば先頭の逃げ集団と追走集団の差はどんどんと開いていき、レース中盤では10分差にまで広がった。逃げ集団には総合リーダーから15分46秒差メインチェスが入っており、これがユンボ・ヴィズマに、これ以上のタイム差を広げさせまい追走のペースを上げさせる。しかしステージ優勝を狙う先頭集団は、総合争いなどには興味がないため、さらに活発に動きじわじわとタイム差が広がっていく。

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そして残り40㎞以上を残してマシューズが動く。スプリントまで持ち込まれて勝利を逃すよりも、積極的にまずはライバルを削る作戦に出たマジューズのこの動きに対応できたのは、ルイス・レオン・サンチェス(バーレーン・ヴィクトリアス)、アンドレアス・クロン(ロット・ソウダル)とフェリックス・グロスシャルトナー(ボーラ・ハンスグロエ)だけだった。そしてその背後でもアタック合戦が始まり、徐々に逃げは縦に伸びいくつもの小集団へと形を変えていく。

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そしてそのまま迎えたゴールまでの最後の上り、マシューズがアタックを決め独走体制となる中、追走グループからはベッティオールがアタック、その加速で最大勾配10%を超えるセクションでマシューズを捉え、逆転する。マシューズは一旦はその差がじわじわと広がるも、ここから脅威的な粘りを見せる。何とか踏ん張り切ると、勾配が緩んだ瞬間に一気に加速して先頭に躍り出ると、そのままゴールラインまで独走で逃げ続けた。ベッテイオールも追走し続けたが2位、上りで加速してきたピノーが3位に入った。

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一時はタイムが14分差に状にまで広がりバーチャルでのマイヨ・ジョーヌも見えてきたメインチェスだったが、無理をしすぎることなく逃げのメンバーとともにゴール、あとは後続を待つこととなった。そのメイン集団は最後の上りでポガチャルが予想通りアタック、そしてそれに最後までついていけたのはヴィンゲガードのみだった。ゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアス)、ロメイン・バルデ(チームDSM)ら総合トップ10の選手たちは何とかタイムロスを抑えるべく奮闘、パラパラ順次ゴールを果たした。これで総合トップ2と残りの差は広がることとなり、メインチェスが総合表彰台争いに割り込んでくる形となった。

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ツール・ド・フランス第14ステージダイジェスト
ツール・ド・フランス第14ステージ順位
1位 マイケル・マシューズ(バイクエクスチェンジ・ジェイコ) 4h30’53”
2位 アルベルト・ベッティオール(EFエデュケーション・イージーポスト) +15”
3位 ティボー・ピノー(グルーパマFDJ) +34”
4位 マルク・ソレル(UAEチームエミレーツ) +50”
5位 パトリック・コンラッド(ボーラ・ハンスグロエ) +58”
6位 ヤコブ・フグルサング(イスラエル・プレミアテック)
7位 フェリックス・グロスシャルトナー(ボーラ・ハンスグロエ) +1’06”
8位 レナード・カムナ(ボーラ・ハンスグロエ) +1’12”
9位 サイモン・ゲシュケ(コフィディス)
10位 ルイス・メインチェス(インターマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオー)
ツール・ド・フランス総合順位
1位 ヨナス・ヴィンゲガード(ユンボ・ヴィズマ) 55h31’01”
2位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ) +2’22”
3位 ゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアス) +2’43”
4位 ロメイン・バルデ(チームDSM) +3’01”
5位 アダム・イェーツ(イネオス・グレナディアス) +4’06”
6位 ナイロ・キンターナ(アルケア・サムシック) +4’15”
7位 ルイス・メインチェス(インターマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオー) +4’24”
8位 ダビ・ガウドゥ(グルーパマFDJ)
9位 トム・ピドコック(イネオス・グレナディアス) +8’49”
10位 エンリック・マス(モビスター) +9’58”
H.Moulinette