ツール・ド・フランス2022St.12:MTB金メダリスト、現シクロ世界王者の22歳ピドコックが初出場で最難関アルプ・デュエズで独走勝利!フルームが復活のステージ3位!(ダイジェスト動画あり)


©ASO
MTB の金メダリスト、そして現役のシクロクロス世界王者でありながらまだ若干22歳のトム・ピドコック(イネオス・グレナディアス)がまたしてもその輝かしい戦歴に素晴らしい勲章を加えた。初出場の今年のツール・ド・フランス、獲得標高が4600mを超える最難関ステージとも言われていた名物アルプ・デュエズの頂上決戦を独走勝利という形で制した。残り130㎞近くを残してアタックを決めると、下りセクションでは誰よりも速く、そしてほかのロード選手より攻めたライン取りで後続を突き放す超攻撃的な走りを見せると、最後の上りでアタックを決め独走態勢へと持ち込み、最後まで逃げ切って見せた。これで総合でも再びトップ10入りを果たして総合8位、「悪くないだろ。」ゴール後のインタビューでも冗談交じりに語るほどの余裕を見せたこの男は、これからまだ大きな成長カーブを描きそうだ。
昨日のハードな直接バトルの結果、この日は総合勢、特にタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)と総合リーダーとなったヨナス・ヴィンゲガード(ユンボ・ヴィズマ)の激しいバトルの応酬とはならなかった。ユンボ・ヴィズマが積極的にレースペースを支配、ライバルチームに攻撃の隙を全くと言っていいほど与えなかった。

©ASO
そんなステージはこの日もガリビエ峠、テレグラフ峠を通過するハードなステージ、そして最後にアルプ・デュエズを登ることから、最難関ステージの一つにも挙げられていた。そんなステージは序盤に6名の逃げが決まり、そこにルイス・メインチェス(インターマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオー)、クリス・フルーム(イスラエル・プレミアテック)、ギウリオ・チッコーネ(トレック・セガフレド)、ニールソン・パウレス(EFエデュケーション・イージーポスト)、ピドコックらが合流する。 ピドコックは下りセクションで、ライバルたちを軽く置き去りにするテクニックと速度の違いを見せつける。コーナーリングしながら時速80㎞以上でボトルの飲み物を口にするなど、もはや曲芸ともいえる走りで、その存在感を大いにアピールした。

©ASO
その逃げに乗っているフルームは、2019年のクリテリウム・ド・ドーフィネのコース下見中のクラッシュ以来となる積極的な走りを見せた。時速55㎞で壁に激突、大腿骨の複雑骨折、骨盤、脊椎、肋骨、肘の骨折、肺の破裂に大量の出血で生きていること自体が奇跡とも言われたあのクラッシュからの復活の走りは、全盛期ほどとはいかないまでも、本人が納得できるレベルまでようやく戻ってきたようだ。

©ASO
ピドコックのおかげで逃げ切りの十分なタイムを稼いだ逃げ集団はそのままアルプ・デュエズに突入すると、残り10㎞でピドコックがアタックし、独走態勢となる。それをメインチェスが単独追走、一時は2秒差まで迫るも、そこからピドコックが再加速し、最後まで追いつくことができなかった。そしてそのメインチェスの背後でフルームもあきらめることなく独走を続けた。ピドコックはステージ勝利、メインチェスとフルームがそれに続きステージ2位と3位、メインチェスは総合でも13位へと順位を上げた。過去2度ツール・ド・フランスで総合トップ10入りを果たしているメインチェスも、ようやくここ数年の低迷から脱却の走りとなった。パウレスも単独4位、初めて総合上位につけている若きアメリカンもまだまだ躍動を続けている。

©ASO
そしてメイン集団ではマイヨ・ジョーヌを守るユンボ・ヴィズマが総員を挙げてペースを上げていく。何枚もの攻撃的なアシスト勢の加速に、ライバルのエースたちは徐々に脱落していく。昨日総合リーダーの座を明け渡したものの、新人賞ジャージを着用するポガチャルも、このペースアップでアシストを失っていく。

©ASO
残り29㎞からアルプ・デュエズの上りが始まると、ユンボは元王者のプリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ)の加速でさらにペースアップ、総合上位勢も順番に脱落していく。それでもまだセップ・クス(ユンボ・ヴィズマ)というアシストのカードを残す総合リーダーのヴィンゲガードに対し、気が付けばライバルはポガチャル、ゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアス)、エンリック・マス(モビスター)のみとなり、それをアダム・イェーツ(イネオス・グレナディアス)と昨日までの総合2位ロメイン・バルデ(チームDSM)が追う展開となる。

©ASO
ポガチャルはこの日も元気に切れ味鋭いアタックを敢行、それにヴィンゲガードはきっちりと対応するが、その都度それ以外の選手たちが脱落するも、マイペースでトーマス、クス、マスが合流する。最後までどの形が崩れぬままにゴールではポガチャルがスプリント、総合リーダージャージを失ってもなお攻撃的な姿勢を貫き続けた。総合ではポガチャルが総合2位へと順位を上げ、トーマスが総合3位へ、バルデは4位へと順位を下げ、それ以外の選手たちはジワリとタイムを広げられる形となった。
ツール・ド・フランス第12ステージダイジェスト
ツール・ド・フランス第12ステージ順位
1位 トム・ピドコック(イネオス・グレナディアス) 4h55’24”
2位 ルイス・メインチェス(インターマルシェ・・ワンティゴベールマテリオー) +48”
3位 クリス・フルーム(イスラエル・プレミアテック) +2’06”
4位 ニールソン・パウレス(EFエデュケーション・イージーポスト) +2’29”
5位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ) +3’23”
6位 ヨナス・ヴィンゲガード(ユンボ・ヴィズマ)
7位 ゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアス)
8位 エンリック・マス(モビスター) +3’26”
9位 セップ・クス(ユンボ・ヴィズマ) +3’59”
10位 ギウリオ・チッコーネ(トレック・セガフレド) +3’32”
ツール・ド・フランス総合順位
1位 ヨナス・ヴィンゲガード(ユンボ・ヴィズマ) 46h28’46”
2位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ) +2’22”
3位 ゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアス) +2”26”
4位 ロメイン・バルデ(チームDSM) +2’35”
5位 アダム・イェーツ(イネオス・グレナディアス) +3’44”
6位 ナイロ・キンターナ(アルケア・サムシック) +3’58”
7位 ダビ・ガウドゥ(グルーパマFDJ) +4’07”
8位 トム・ピドコック(イネオス・グレナディアス) +7’39”
9位 エンリック・マス(モビスター) +9’32”
10位 アレクサンダー・ヴラソウ(ボーラ・ハンスグロエ) +10’06”
H.Moulinette