ツール・ド・フランス2022St.9:ユンゲルスが会心の逃げ切り勝利!総合勢ではポガチャルがゴール前でアタックを決めライバルにまた僅かな差を広げる(ダイジェスト動画あり)
ボブ・ユンゲルス(AG2Rシトロエン)、2020年まで曲者集団のクイックステップに所属し勝利を量産していた男は、新天地移籍後結果を残せず怪我との戦いが続ていた。エースとして移籍したのに結果が残せないことから、走りのリズムも崩れ悪循環に陥っていた。しかしこの第9ステージ、冷静に最後までペースを刻み続ける走りで独走を続け、見事山岳ステージで勝利の雄たけびを上げた。また総合でも明暗が分かれ、総合トップ10入りを目指す選手たちの数名が大きくタイムを失う結果となった。
この日も動いたのはワウト・ファン・アールト(ユンボ・ヴィズマ)だった。スタミナお化けともいえるこの男はこの日も積極的な走りで、ユンゲルス、ヨナタン・カストロビエホ(イネオス・グレナディアス)、ティボー・ピノー(グルーパマFDJ)や、リゴベルト・ウラン(EFエデュケーション・イージーポスト)ら21人の大所帯の逃げに乗ることに成功した。しかし大所帯は、それぞれの思惑が違うため、必ず積極的に動くものとそうでないものとに分かれ、最後まで一枚岩でいることは難しい。ファン・アールトが中間スプリントでのポイントを確保、さらに山岳賞争いではサイモン・ゲシュケ(コフィディス)がマグナス・コルト(EFエデュケーション・イージーポスト)からこの日ジャージを奪うこととなった。そしてゴールまでまだ60km以上を残し、ユンゲルスが頂上からの下りで時速100㎞でリスク覚悟の大博打に打って出る。これでタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)らのいるメイン集団との差も、1分半から3分近くまで広げることに成功した。
ファン・アールトは最後まで仕事を続ける。ニュートラルサービスからドリンクを受け取ると、逃げ集団から脱落しながらメイン集団に合流、エースのヨナス・ヴィンゲガードとプリモズ・ログリッチ(共にユンボ・ヴィズマ)らドリンクを手渡し、この日の役目を終えた。
ユンゲルスのは快走を続け、ここからゴールまで一人旅を続けた。きっちりとリズムを刻み続けるユンゲルスに対し、追走からはピノー、カストロビエホ、カルロス・ヴェローナ(モビスター)が飛び出し合流を狙う。さらにはピノーはそこからも抜け出し単独でユンゲルスの背後20秒ほどまで迫るが、そこから徐々に遅れていき、ゴール手前でマイペースで走ってきたカストロビエホとヴェローナにも逆転されてしまいステージ4位に沈んだ。ユンゲルスはゴールで雄たけびを挙げる歓喜の勝利、それにカストロビエホ、ヴェローナと続いた。
「ただただこの勝利が嬉しいよ。チームにとってもこの勝利はとても貴重なものとなったよ。こういう勝ち方は僕が得意としているところだしね。ピノーに追われたけど、”リズムを刻んで…”って言い聞かせながら走り続けたよ。最後の数キロは永遠にも感じたよ。」ユンゲルスの目には力強さが戻っていた。
そしてその背後ではUAEチームエミレーツの淡々としたペースの前に、総合10位のダニエル・マルチネス(イネオス・グレナディアス))が犠牲になる。さらにはアレクサンダー・ヴラソウ(ボーラ・ハンスグロエ)、逃げから脱落してきたウランも大きくタイムを失う結果となった。ゴールまではまたしてもポガチャルがアタック、これについていけたのはヴィンゲガードだけだった。これでまた3秒ほどライバルとのタイム差を広げることに成功したポガチャル、「攻撃は最大の防御」の信念通りにこの日も最後まで手を抜くことはなかった。
ツール・ド・フランス第9ステージダイジェスト
ツール・ド・フランス第9ステージ順位
1位 ボブ・ユンゲルス(AG2Rシトロエン) 4h46’39”
2位 ヨナタン・カストロビエホ(イネオス・グレナディアス) +22”
3位 カルロス・ヴェローナ(モビスター) +26”
4位 ティボー・ピノー(グルーパマFDJ) +40”
5位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ) +49”
6位 ヨナス・ヴィンゲガード(ユンボ・ヴィズマ)
7位 ゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアス) +52”
8位 アダム・イェーツ(イネオス・グレナディアス)
9位 エンリック・マス(モビスター)
10位 ナイロ・キンターナ(アルケア・サムシック)
ツール・ド・フランス総合順位
1位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ) 33h43’44”
2位 ヨナス・ヴィンゲガード(ユンボ・ヴィズマ) +39”
3位 ゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアス) +1’17”
4位 アダム・イェーツ(イネオス・グレナディアス) +1’25”
5位 ダビ・ガウドゥ(グルーパマFDJ) +1’38”
6位 ロメイン・バルデ(チームDSM) +1’39”
7位 トム・ピドコック(イネオス・グレナディアス) +1’46”
8位 エンリック・マス(モビスター) +1’50”
9位 ニールソン・パウレス(EFエデュケーション・イージーポスト) +1’55”
10位 ナイロ・キンターナ(アルケア・サムシック) +2’13”
H.Moulinette