ツール・ド・フランス2022St.8:総合とステージ優勝狙う選手が大乱戦!無尽蔵なスタミナで馬力全開のファン・アールトが上りスプリントでポガチャルを撃破しステージ2勝目!(ダイジェスト動画あり)


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ここまで今大会を圧倒的に盛り上げているのは総合優勝争いを演じている選手たちではない。序盤3ステージ連続で2位、そのあとでステージ勝利を挙げ、さらには獅子奮迅の活躍でエースをゴールまで導いた男が、このステージでも勝利をもぎ取って見せた。ワウト・ファン・アールト(ユンボ・ヴィズマ)は間違いなく今大会で自身が世代最強の一人であることを強く印象付けただろう。

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この日は大集団の逃げが予想されたが、わずか3人の逃げ決まる形となる。そして追走のメイン集団内では大きな落車が発生し、プリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ)や、総合リーダーのタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)に加え、多くの主力級選手が巻き込まれてしまう展開となる。ただしほとんどの選手が軽傷でそのまま集団へと復帰を果たした。
この日も勝負はゴール手前5㎞から始まる上り勝負に絞られた。しかし昨日とは違い、この日は総合系のみならずパンチャー系の選手たちもステージ優勝を狙うことができるステージだけに、各チームステージ優勝狙いと総合系との思惑が入り乱れる展開となる。逃げの最後の一人が吸収される中、昨日ステージ優勝を挙げたポガチャルが常時先頭付近で走行するのに対し、イネオス・グレナディアスの総合トップ10の4人とユンボ・ヴィズマ勢は集団中盤にいる。ポガチャルがそのままアタックを仕掛けることもできたかもしれないが、ここでポガチャルは後ろを確認しながらも動かない。

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実はこの段階でポガチャルが確認していたのはライバルの位置取りではなく、自らのアシストをすべきチームメイトの姿だった。昨ステージ終了後にライバルのゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアス)が、「ポガチャルのアシストは層が薄く弱い」と発言しており、ライバルチームはUAEのアシストに仕事をさせるべく全くこの日は動くことがなかった。

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そして残り3㎞を切るとようやくイネオス・グレナディアスとユンボ・ヴィズマ勢は前方にまとまり、さらにはそこにステージ優勝を狙うマイケル・マシューズのバイクエクスチェンジ勢なども姿を見せる。ペースを作り続けたのはパトリック・コンラッド(ボーラ・ハンスグロエ)だったが、コンラッドが外れるとUAEのアシストがようやく動く。ラファル・マイカとブランドン・マクナルティ(ともにUAEチームエミレーツ)が先頭に躍り出るが、マクナルティーは仕事をする前に離脱、そして昨日同様に歯を食いしばりながらマイカが残り350mまで牽引し続けた。

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そして一気にスプリントと勝負へと流れ込むが、この時点でポイント賞ジャージのファン・アールトは位置取りが悪く前方がふさがれてしまっていた。しかしそこで焦らず冷静に足を止め進路が開くのを待つ。残り150mでマシューズがスプリントを開始、その横でポガチャルがスプリントを開始すると、その脇にできた空間めがけてファン・アールトが一気に加速する。そしてそのまま一人別次元の加速を見せたファン・アールトはそのまま先頭で余裕のガッツポーズを決めた。マシューズが2位、ポガチャルは3位に終わった。

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「今日は残り4.5㎞からきつかったね。急激に上って平坦の繰り返しだったからね。僕はステージを狙っていたので、ポガチャルをマークしていたよ。ポガチャル向きなステージなのはわかっていたし、間違いなく動くと思っていたから、最後まで残れたらいけると思っていたんだ。今日はポイント賞争いの直接ライバルたちが苦手としているステージなのを知っていたから、ここでポイントをさらに積み重ねられて圧倒的優位に立てていることには大満足だよ。」ファン・アールトに笑顔で答えた。
「今日はステージは狙っていなかったんだけど、勝てるチャンスがあったから残念だよ。でも3位でも立派な結果だと思う。しかしファン・アールトの加速はすごいね。」ポガチャルはファン・アールトの爆発的スプリントに納得の表情を見せた。総合ではボーナスタイム分ライバルたちを突き放した。
ツール・ド・フランス第8ステージダイジェスト
ツール・ド・フランス第8ステージ順位
1位 ワウト・ファン・アールト(ユンボ・ヴィズマ) 4h13’06”
2位 マイケル・マシューズ(バイクエクスチェンジジェイコ)
3位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)
4位 アンドレアス・クロン(ロット・ソウダル)
5位 アルベルト・ベッティオール(EFエデュケーション・イージーポスト)
6位 アレクサンダー・ヴラソフ(ボーラ・ハンスグロエ)
7位 ベンジャミン・トーマス(コフィディス)
8位 ヨナス・ヴィンゲガード(ユンボ・ヴィズマ)
9位 ボブ・ユンゲルス(AG2Rシトロエン)
10位 トム・ピドコック(イネオス・グレナディアス)
ツール・ド・フランス総合順位
1位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ) 28h56’16”
2位 ヨナス・ヴィンゲガード(ユンボ・ヴィズマ) +39”
3位 ゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアス) +1’14”
4位 アダム・イェーツ(イネオス・グレナディアス) +1’22”
5位 ダビ・ガウドゥ(グルーパマFDJ) +1’35”
6位 ロメイン・バルデ(チームDSM) +1’36”
7位 トム・ピドコック(イネオス・グレナディアス) +1’39”
8位 ニールソン・パウレス(EFエデュケーション・イージーポスト) +1’41”
9位 エンリック・マス(モビスター) +1’47”
10位 ダニエル・マルチネス(イネオス・グレナディアス) +1’59”
H.Moulinette