ジロ・デ・イタリア2022:大ベテランたちのジロ、引退を公表しているニーバリが総合4位、春先まで所属先のなかったポッツォヴィーヴォが総合8位、 究極のオールラウンダー、バルベルデが総合11位
今年のジロ・デ・イタリアでは、昨今のグランツールで多く見られた若手が総合上位独占ではなく、ベテランたちの奮闘が目についた。総合トップ10も30代の選手が半数を占めており、特に総合3位から6位までにずらりと中堅とベテランが顔を揃えた。
今シーズン限りでの引退を公言している37歳のヴィンチェンツォ・ニーバリ(アスタナ・カザフスタン)は総合トップ3にバトルに何度となく顔を出し総合4位を獲得した。2010年にブエルタ・ア・エスパーニャ、2013年と2016年にジロ・デイタリア、そして2014年にはツール・ド・フランスと全てのグランツールを制覇しており、これはニーバリを含め7人しかいない偉業だ。しかしここ数年はなかなか上位争いに割って入れなくなってきていた。それでも今年のジロでは躍動、第16ステージではニーバリらしい豪快なアタックを仕掛けるなどその存在感を見せつけた。
第16ステージでニーバリがそのアタックをやめた理由が、親友でもありもう一人のベテラン、ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(インターマルシェ・ワンティゴベール・マテリオー)だった。ニーバリが飛び出したメイン集団の中にいたポッツォヴィーヴォは、落車を喫し、単独での追走を余儀なくされていた。総合でも上位に付けているこのベテランの窮地を救ったのもニーバリの配慮だった。
ポッツォヴィーヴォは今シーズン39歳、春先まで所属チームすら決まらなかった男は経済学の学位を持っており、論文も書いている。頭脳明晰さからプロフェッサーとも呼ばれており、クレバーな走りができることでも有名だ。引退後は政治家を目指すと公言しており、プロサイクリスト後の活動も、異色な存在だ。165cmと小柄でありながら総合力があり、今回のジロ・デ・イタリア総合8位が、グランツールで通算8度目のトップ10フィニッシュとなった。今大会でも吐出した動きはなかったものの、総合上位勢の争いに常に顔をだしており、安定した結果を出し続けた。
そしてもうひとり大ベテランのアレハンドロ・バルベルデ(モビスター)も今シーズン限りでの引退を公言している。グランツールのみならず、ステージレース、ワンデイクラシックと、まさにオールラウンドに勝利を積み重ね、5度の年間ポイント首位は、世代最強と言っても過言ではないだろう。コロナ禍もあり引退を先延ばしにしても、まだ勝利できるポテンシャルを秘めており、今大会も総合11位と結果を残した。クライマーステージのみならず、スプリントステージでも勝負に絡むなど、常に活発に動き続けるその姿に、衰えは感じられない。
まだ結果が残せる体力も技術もありながら、それでも3者とも選手生活の締めくくりを迎えている。若手世代の台頭に負けないベテランたちだが、昨今より高速化するレースに対し、揃って「かなりしんどい」と口にしており、機材バトルがもたらしている影響も感じさせる。それでも今大会で結果を残した3人の大ベテランの今後のシーズンの活躍から目が離せない。
H.Moulinette