ジロ・デ・イタリア2022第20ステージ:最後の山岳でヒンドリーがカラパズを逆転でマリア・ローザ獲得!ステージ優勝はチマ・コッピを制し逃げ切ったコヴィ!(ダイジェスト動画あり)


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今大会最後の山岳ステージにドラマが待っていた。2020年のジロ、第20ステージでマリア・ローザを獲得したものの、最終ステージの個人TTでタオ・ゲイガンハート(イネオス・グレナディアス)に逆転されマリア・ローザを失ったのが、当時はチームサンウェブに所属していたジェイ・ヒンドリー(ボーラ・ハンスグロエ)だった。そして今回もまたしてもイネオス・グレナディアスとのマッチアップ、だが機能しなかったチーム戦略がズバリとはまり、最大ライバルのカラパズを残り2㎞で置き去りにすることに成功、そのままペースを上げ続けその差を広げ最終的には1分差以上の大差をつけての逆転に成功した。最終日の個人TTの距離が短いだけに、再逆転される可能性、2020年度の二の舞はなさそうだ。

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そんな168㎞のステージを制したのはアレッサンドロ・コヴィ(UAEチームエミレーツ)、大会の最高峰チマ・コッピをトップ通過し、そのままゴールまで鮮やかな独走勝利でチームに貴重な一勝をもたらした。だが激しい総合バトルの前では、その勝利も霞んでしまった。

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昨日とはボーラ・ハンスグロエが大きく作戦を変えた。昨日はすべてのメンバーが逃げに乗らずヒンドリーを守る形で走っていたが、それ以前のステージのようにこの日は先頭にレナード・カムナ(ボーラ・ハンスグロエ)を送り込んだ。これは総合争いが後方で生じた際に、先頭から体力を温存しながら下がってきてアシストするためであり、王道のアシスト戦略だ。だがそれもエースがしっかりと活躍してこその戦略でもある。この日はカムナに加え、総合3位のミケル・ランダ(バーレーン・ヴィクトリアス)もドメン・ノヴァック(バーレーン・ヴィクトリアス)を逃げに送り込んだ。しかし総合バトルが勃発する前に、逃げから飛び出し独走を続けるコヴィを追ってステージ優勝を狙えとのチーム戦略に切り替わり、アシストとして機能することはなかった。対してイネオス・グレナディアスは典型的な組織的アシスト、前方にアシストを送り込むことなく、集団のペースをチーム一丸となってあげることでライバルたちを削る作戦を取り続けている。

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この日は逃げの14役名を追うメイン集団ではバーレーン・ヴィクトリアスがペースをコントロール、イネオス・グレナディアスは棚ぼた的にアシストを温存することに成功したかに思えた。しかし実はこのバーレーン・ヴィクトリアスの作戦こそが、カラパズに狂いをもたらしていた。自らのアシストがペースを作っていれば、自分の走りやすいペースを伝え、そのペースで走れるのだが、棋院泊したステージの中でライバルチームのペースで走らされ続け、予想以上の体力を消費することとなった。

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ゴールまでの最後の急勾配の上りに持ち込まれた勝負は、ステージ争いでは先頭ではコヴィをノヴァクとギウリオ・チッコーネ(トレック・セガフレド)が個別に追う展開となり、一時はその差が詰まり1分差いないまで縮まったが、そこから伸び悩んだノヴァクに対しコヴィは粘りの走りで最後まで独走を貫いた。そのゴールまでの最後5.5㎞は平均勾配が二桁のハードなステージ、こここそが勝負と狙っていたのはヒンドリーとボーラ・ハンスグロエだった。この時点でメイン集団に残っているのはカラパズ、ヒンドリー、ランダの総合トップ3に加え、総合6位のヤン・ヒルト(インターマルシェ・ワンティゴベール・マテリオー)、さらには総合10位のヒュー・カーシー(EFエデュケーション・イージーポスト)だった。この日はカラパズが消耗の影響か自ら攻めの姿勢を見せることはなく、直接対決の口火を切ったのもヒンドリーだった。

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そして残り2.6㎞、絶妙のタイミングでケムナがひんどりーを待っていた。合流したケムナはここで最後の粘りでペースを上げると、残り2㎞でついにカラパズに今大会初の綻びが出る。沿道を観衆が埋め尽くすまさにその場所で、カラパズがヒンドリーに遅れを取ったのだ。これを見逃さなかったケムナとヒンドリーはさらにペースアップ、そしてそこからヒンドリーがさらに加速して、その差をグングンと広げていく。牽引の役目を終えたケムナはここでもう一仕事、カラパズにぴったりと張り付き、重石のようにまとわりつく。ライバルに逃げられているカラパズにとっては、これはさらに重いプレッシャーとなる。ペースの上がらないカラパズは、一度は置き去りにしたはずのランダ、そしてカーシーにもかわされていく。

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ペースが上がらないカラパズに対し、モチベーションが一気に上がったヒンドリーは火が付いたようにさらに加速、カラパズに1分22秒もの大差を僅か2㎞でつけての大逆転マリア・ローザ獲得となった。これで総合1位のヒンドリーと総合2位に落ちたカラパズのタイム差は1分25秒、さらにカラパズに先着した総合3位のランダとカラパズのタイム差はわずか26秒にまで縮まった。

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「信じられないよ。今日はとにかく戦略がドンピシャではまったね。ケムナが最高の場所で待っていてくれた。あれが勝因だよ。カラパズが遅れていると分かった瞬間に、僕の中ですべてがモチベーションに切り替わったんだよ。あとはもうがむしゃらにゴールまで走り続けたよ。明日のTTね…まああの時のトラウマはあるからね、気を引き締めていくよ。」26歳のオーストラリア人は、明日ジロ初のオージー勝者を狙う。

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対してカラパズをアシストし続けたパヴェル・シヴァコフ(イネオス・グレナディアス)がカラパズを代弁した。「ヒンドリーを振り落とそうとしたけど無理だったね。標高が高くなればカラパズが有利になると思っていたけど、そうはならなかったよ。でもこれがレース、ヒンドリーには脱帽だよ。」
ジロ・デ・イタリア第20ステージダイジェスト
ジロ・デ・イタリア第20ステージ順位
1位 アレッサンドロ・コヴィ(UAEチームエミレーツ) 4h46’34”
2位 ドメン・ノヴァック(バーレーン・ヴィクトリアス) +32”
3位 ギウリオ・チッコーネ(トレック・セガフレド) +37”
4位 アントニオ・ペドレロ(モビスター) +1’36”
5位 サイメン・アレンスマン(チームDSM) +1’50”
6位 ジェイ・ヒンドリー(ボーラ・ハンスグロエ) +2’30”
7位 ハイス・レームレイゼ(ユンボ・ヴィズマ) +3’04”
8位 ヒュー・カーシー(EFエデュケーション・イージーポスト) +3’19”
9位 ミケル・ランダ(バーレーン・ヴィクトリアス)
10位 レナード・カムナ(ボーラ・ハンスグロエ) +3’39”
ジロ・デ・イタリア総合順位
1位 ジェイ・ヒンドリー(ボーラ・ハンスグロエ) 86h07’19”
2位 リチャード・カラパズ(イネオス・グレナディアス) +1’25”
3位 ミケル・ランダ(バーレーン・ヴィクトリアス) +1’51”
4位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(アスタナ・カザフスタン) +7’57”
5位 ペッロ・ビルバオ (バーレーン・ヴィクトリアス) +8’55”
6位 ヤン・ヒルト(インターマルシェワンティゴベール・マテリオー) +9’07”
7位 エマニュエル・ブッフマン(ボーラ・ハンスグロエ) +11’18”
8位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(インターマルシェワンティゴベール・マテリオー) +16’04”
9位 ホァン・ペドロ・ロペス(トレック・セガフレド) +17’29”
10位 ヒュー・カーシー(EFエデュケーション・イージーポスト) +17’56”
H.Moulinette