ジロ・デ・イタリア2022第19ステージ:難関山岳で5人のスプリントバトル、制したのは山岳賞のボウマン!総合トップ3はお互い譲らず互角の走り(ダイジェスト動画あり)


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今年のジロも残すは山岳は2ステージのみ、総合上位勢、特に1位と2位がわずか3秒差という僅差の中で、いかに相手を突き放せるか、いかに相手に対してタイムを失わないか、というせめぎあいが続いている。攻めてタイムを逆に失う可能性すらあるのが山岳、5mの差がつけばタイム差がしっかりと開いてしまうのが山岳、それだけにこれだけ拮抗すれば攻め方もむつかしくなる。ただアシストの能力には差があり、リチャード・カラパズ(イネオス・グレナディアス)が優位には立っている。今まで総合優勝をしたことがないボーラ・ハンスグロエにとっては初めてのグランツール総合優勝へ向けたアシストであり、まだ本来の実力を発揮できないでいる。そんなステージで、案の定総合トップ3はお互い一歩も譲らず、総合2位のジェイ・ヒンドリー(ボーラ・ハンスグロエ)はカラパズの背中にぴたりと張り付き、最後まで逃がさなかった。
そんなステージを制したのはコーエン・ボウマン(ユンボ・ヴィズマ)、後続の総合系メイン集団と大きくタイム差が開いた中で、逃げ5人による駆け引きを何キロにもわたり続け、最後はゴールスプリントに持ち込むと、ゴール前最初のコーナーを先頭でクリアし、そのままガッツポーズでステージ優勝、あとは完走さえすれば山岳賞確定となった。

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第19ステージは12名の逃げから始まった。昨日も逃げたマグナス・コート(EFエデュケーション・イージーポスト)やエドアルド・アフィニ(ユンボ・ヴィズマ)に加え、マウロ・シュミット(クイックステップ・アルファヴァイニル)、ボウマンら山岳を得意とする面々も顔を揃える。この逃げは容認されると、最大で12分差をメイン集団につけ快走を続ける。メイン集団ではイネオス・グレナディアスとボーラ・ハンスグロエがお互いを警戒しながらも攻めのペースコントロールを続ける。

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この日のレースはスロベニアの山岳も駆け抜けるステージでもあり、各選手たちにとっては馴染みのないコースそれだけに戦況は読みにくいものとなった。逃げではボウマンが仕掛け、それに反応したのはシュミット、アッティラ・ヴァルター(グルーパマFDJ)、アレッサンドロ・トネッリ(バルディアー二CSFファイザネ)、さらにそこにアンドレア・ヴェンドラメ(AG2Rシトロエン)が合流し、先頭は5人となる。
この5人は後続とのタイム差が大きくあることから、繰り返しお互いにアタックを仕掛け続ける。ただしどれも決定打には至らず、そのまま勝負の行方はゴールスプリントにまで持ち越された。そして明暗を分けたのはゴール前100mの左コーナー、先頭でボウマンが入るが、それに進路をふさがれる形となったシュミットは接触を避けるためにブレーキを何度もロックさせバイクコントロール、しかしそのあおりを受けたのはその背後のヴェンダラメ、伴走車用のエスケープゾーンに頭から突っ込み怒りと抗議の声を上げた。このすべてはほんの一瞬の出来事だったが、この一瞬が勝敗を分ける形となった。ボウマンは今大会2勝目、山岳賞ジャージのみならずステージ勝利も積み重ね、エースを失ったチームに最高の結果をもたらしている。シュミットは2位、トネッリが3位となった。

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「正直ゴール前のコーナーがあんなに鋭角に曲がっているとは思わなかったよ。ブレーキングを思いきしりしないと曲がり切れなかったよ。今日も目的は明確で、山岳賞ジャージ確定のための山岳ポイント獲得だった。それが勝利までついてきたんだから、もう言うことないよ。」ボウマンは喜びを爆発させた。シュミットらは抗議の姿勢を示すも最終的にレースの流れの一環と主催者は判断、順位がそのまま確定した。
その背後ではイネオス・グレナディアスのペースアップにより各チームのアシスト勢が崩壊していく。さらにそこからカラパズが切れ味鋭いアタックを仕掛けると、対応できたのはヒンドリーとランダのみだった。総合での逆転がむつかしい総合トップ10の選手たちは、自分たちの順位を死守することに専念せざるを得ない形となった。

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ステージ2位をキープしたヒンドリーだったが、ゴール後に「チームの戦略が何一つうまくいかなかった。総合をキープできたのでよしとしよう。」と語り、イネオス・グレナディアスや、バーレーン・ヴィクトリアスに対する攻撃が空振りに終わったことを示唆した。
ジロ・デ・イタリア第19ステージダイジェスト
ジロ・デ・イタリア第19ステージ順位
1位 コーエン・ボウマン(ユンボ・ヴィズマ) 4h32’55”
2位 マウロ・シュミット(クイックステップ・アルファヴァイニル)
3位 アレッサンドロ・トネッリ(バルディアー二CSFファイザネ) +3”
4位 アッティラ・ヴァルター(グルーパマFDJ) +6”
5位 アンドレア・ヴェンドラメ(AG2Rシトロエン) +10”
6位 トビアス・ベイヤー(アルペシン・フェニックス) +2’45”
7位 ギヨーム・マルタン(コフィディス) +3’49”
8位 リチャード・カラパズ(イネオス・グレナディアス) +3’56”
9位 ジェイ・ヒンドリー(ボーラ・ハンスグロエ)
10位 ミケル・ランダ(バーレーン・ヴィクトリアス)
ジロ・デ・イタリア総合順位
1位 リチャード・カラパズ(イネオス・グレナディアス) 81h18’12”
2位 ジェイ・ヒンドリー(ボーラ・ハンスグロエ) +3”
3位 ミケル・ランダ(バーレーン・ヴィクトリアス) +1’05”
4位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(アスタナ・カザフスタン) +5’53”
5位 ペッロ・ビルバオ (バーレーン・ヴィクトリアス) +6’22”
6位 ヤン・ヒルト(インターマルシェワンティゴベール・マテリオー) +7’15”
7位 エマニュエル・ブッフマン(ボーラ・ハンスグロエ) +8’21”
8位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(インターマルシェワンティゴベール・マテリオー) +12’55”
9位 ホァン・ペドロ・ロペス(トレック・セガフレド) +15’29”
10位 ヒュー・カーシー(EFエデュケーション・イージーポスト) +17’10”
H.Moulinette