ジロ・デ・イタリア2022第17ステージ:コロンビアの新星!15ステージで2位で悔し涙のブイトラゴが独走勝利で歓喜の号泣!総合はアルメイダが表彰台圏内脱落(ダイジェスト動画あり)


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本命なき総合バトルは、日に日に激しさを増している。それとともに、ステージ勝利という栄光をつかむために、クライマーたちもマイステージ全力で挑んでくる。総合勢によるバトルは、マリア・ローザ、総合首位のリチャード・カラパズ(イネオス・グレナディアス)、総合2位のジェイ・ヒンドリー(ボーラ・ハンスグロエ)、そして総合4位のミケル・ランダ(バーレーン・ヴィクトリアス)による激しい三つ巴のバトルが勃発、これにより他の総合上位勢が軒並みタイムを失う結果となった。これで現状総合優勝争いはこの3人に絞られつつある。そんなステージを制したのは、第15ステージでギウリオ・チッコーネ(トレック・セガフレド)に次ぐステージ2位となり悔し涙を流したサンティアゴ・ブイタラゴ(バーレーン・ヴィクトリアス)が、逃げ集団内で一度は落車で遅れるも自力で追走、そのまま最後の難関の激坂山岳で先頭に躍り出ると、ゴールまで逃げ切って喚起の雄叫びを上げた。

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変わりやすい山の天候と、低気温が波乱を予感させた168kmの第17ステージ、スタート直後の山岳は山岳ポイントではないものの標高1883mと、いきなり各チームにダメージを与えるには十分すぎた。スタート早々に集団は分裂、完走狙いのグルペットが形成される。だがそれは同時に攻めの合図でもあった。昨日も動いたヒュー・カーシー(EFエデュケーション・イージーポスト)とシーメン・アレンスマン(チームDSM)ら実力者を筆頭にまずは4人が動く。するとその背後では昨日の勝者ヤン・ヒルト(インターマルシェ・ワンティゴベール・マテリオー)や、山岳賞のコーエン・ボウマン(ユンボ・ヴィズマ)らが動き、最終的にはこの山岳を下りきった時点でギウリオ・チッコーネ(トレック・セガフレド)やマシュー・ファン・デル・ポエル(アルペシン・フェニックス)らを含む25名の大所帯となる。
追走のメイン集団はイネオス・グレナディアスが主導権を握るが、昨日まで活発に動いていたボーラ・ハンスグロエはこの日は逃げに誰一人送り込まず、完全にヒンドリーシフトに切り替える。先頭の逃げ集団との差は大きく開くことはなく、昨日同様に総合トップ20以内の選手が含まれることで、メイン集団自体のペースも高く維持することとなった。

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先頭ではボウマンとチッコーネが山岳ポイントを巡ってバトルを繰り広げるが集団は人数が多すぎるため足並みがなかなか揃わない。そんなか逃げ集団にいたブイトラゴは下りコーナーで単独落車、バイク交換を余儀なくされ、ここから単独で追走し集団復帰を果たした。何度となく分裂と吸収を繰り返し、残り65kmでファン・デル・ポエルがアタックを決めると、レースは一気に動き出す。ギヨーム・マルタン(コフィディス)らがこれに反応、4人が逃げ集団から抜け出すことに成功する。逃げ集団の残りのメンバーもこれを追走するが、好調に逃げ続ける4人はタイム差を1分以上にまで広げる。この段階でメイン集団は6分以上後方となる。
この日最初の大きな1級山岳は平均勾配7.7%の11.8km、山岳を得意とするカーシーは、ヒルト、ボウマン、ハイス・レームレイゼ(ユンボ・ヴィズマ)、マウリ・ファンセヴェナント(クイックステップ・アルファヴァイニル)と共に先頭の4人を追撃、あっという間に合流を果たす。更にはブイトラゴも合流し、山頂ではボウマンがしっかりと40ポイントを確保し、山岳賞のポジションを着々と固めていく。
その背後のメイン集団では、バーレーン・ヴィクトリアスが昨日同様に上りで攻めに転じる。ペースアップの犠牲になったのはアレハンドロ・バルベルデ(モビスター)、総合10位につける大ベテランは昨日の疲れが抜け切っておらず、対応しきれない。

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先頭では山頂を通過した下りでレームレイゼがアタック、それにファン・デル・ポエルが反応、二人は高速でダウンヒルを駆け抜けていく。そしてそのままゴールまで残り18kmでこの日最後の山岳に差し掛かると、ファン・デル・ポエルがアタック、先頭に躍り出るとレームレイゼを引き離し独走態勢となる。しかし山頂まで残り5kmでまずはレームレイゼがファン・デル・ポエルに追いつきそのまま逆に独走態勢へと持ち込む。次に追走のカーシー、とヒルトらの集団からブイトラゴがアタック、猛烈な勢いで先頭の二人を追い始める。

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高速のメイン集団も最後の山岳に入ると、イネオス・グレナディアスが今度はペースアップを図り、ライバルチームのアシストがどんどんと削られていく。更にバーレーン・ヴィクトリアスが追い打ちをかけるようペースを上げると、総合3位のジョアオ・アルメイダ(UAEチームエミレーツ)、総合5位のヴィンチェンツォ・ニーバリ(アスタナ・カザフスタン)、総合6位のドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(インターマルシェ・ワンティゴベール・マテリオー)が早々に脱落してしまう。これでランダ擁するバーレーン・ヴィクトリアスはランダの表彰台を視野にさらに攻撃態勢に入る。ワウト・ポエルス(バーレーン・ヴィクトリアス)が最後のアシストとしてランダを引き連れて行くと、残っているのはカラパズとヒンドリーのみ、これで今大会の総合はこの3人に大きく絞られた瞬間だった。ランダとカラパズは歯を食いしばって重めのギアで鬼の形相で走り続けるが、ヒンドリーは表情をあまり変えることなく淡々と軽いギアでクルクルと足を回す。

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先行する二人を猛追していたブイトラゴは、ファン・デル・ポエルを早々と捉えると、山頂まで500mでレームレイゼに追いつき、そのまま一気に引き離しダウンヒルに入る。もうそうなればその背中はどんどんと遠ざかるだけだった。ブイトラゴは独走でゴール、この日は喚起の大号泣で勝利を喜んだ。「チームと家族に感謝したい、自分の夢というものを実感したよ。」ブイトラゴは言葉少なに語った。レームレイゼは惜しくも2位、しかしワン・ツーともに若い世代が台頭していることを物語る結果となった。

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カラパズはヒンドリーはゴール前でまたしても一騎打ちのスプリントで1秒を削る争いを繰り広げたが、結果どうタイムでのゴールとなった。ランダはそれに少し遅れてのゴール、だがこれで総合3位へとジャンプアップを果たし、総合表彰台が一気に近づいてきた。
「ヒンドリーに詰められた分を取り返したかったけど難しかったね。秒の勝負の世界になるから、1秒たりとも無駄にできないよ。」カラパズは気を引き締めた。対するヒンドリーは「いや~本当に疲れた。連日これはしんどいね。」と語るもどこか余裕を感じさせた。またサイモン・イェーツ(バイクエクスチェンジ・ジェイコ)はこの日リタイアとなった。
ジロ・デ・イタリア第17ステージダイジェスト
ジロ・デイタリア第17ステージ順位
1位 サンティアゴ・ブイタラゴ(バーレーン・ヴィクトリアス) 4h27’41”
2位 ハイス・レームレイゼ(ユンボ・ヴィズマ) +35”
3位 ヤン・ヒルト(インターマルシェ・ワンティゴベール・マテリオー) +2’28”
4位 ヒュー・カーシー(EFエデュケーション・イージーポスト)
5位 リチャード・カラパズ(イネオス・グレナディアス) +2’53”
6位 ジェイ・ヒンドリー(ボーラ・ハンスグロエ
7位 マウリ・ファンセヴェナント(クイックステップ・アルファヴァイニル) +2’57”
8位 コーエン・ボウマン(ユンボ・ヴィズマ) +2’59”
9位 ギヨーム・マルタン(コフィディス)
10位 ミケル・ランダ(バーレーン・ヴィクトリアス)
ジロ・デ・イタリア総合順位
1位 リチャード・カラパズ(イネオス・グレナディアス) 73h19’40”
2位 ジェイ・ヒンドリー(ボーラ・ハンスグロエ) +3”
3位 ミケル・ランダ(バーレーン・ヴィクトリアス) +1’05”
4位 ジョアオ・アルメイダ(UAEチームエミレーツ) +1’54”
5位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(アスタナ・カザフスタン) +5’48”
6位 ペッロ・ビルバオ (バーレーン・ヴィクトリアス) +6’19”
7位 ヤン・ヒルト(インターマルシェ・ワンティゴベール・マテリオー) +7’12”
8位 エマニュエル・ブッフマン(ボーラ・ハンスグロエ) +7’13”
9位 ホァン・ペドロ・ロペス(トレック・セガフレド) +12’27”
10位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(インターマルシェワンティゴベール・マテリオー) +12’30”
H.Moulinette