ジロ・デ・イタリア2022第16ステージ:総合バトル更に激しく!ステージを制したのは逃げ切りのヒルト!ニーバリとベルベルデの大ベテラン二人が揃って総合トップ10!(ダイジェスト動画あり)


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総合優勝を巡る激しい激突の中、輝いたのは過去にグランツールを制している二人の大ベテランだった。ヴィンチェンツォ・ニーバリ(アスタナ・カザフスタン)とアレハンドロ・バルベルデ(モビスター)の二人はともにこの難関ステージで見事な走りを披露、揃ってステージでトップ10に入ると同時に、総合でも揃ってトップ10に名を連ねることとなった。そんなステージを制したのはヤン・ヒルト(インターマルシェ・ワンティゴベール・マテリオー)、激しい逃げ切りによる先頭争いを制し、独走勝利で決めた。これでヒルトも一気に総合9位へとジャンプアップを果たした。

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この日のステージは202kmの長丁場ということもあり、スタート直後には、マーク・カベンディッシュ(クイックステップ・アルファヴァイニル)らが、タイムカットを意識し自分のペースで走るために逃げる珍しい光景も見られた。しかし山岳に入ると一気に動きが慌ただしくなる。各チーム隊列を組めないほどにカオスな状態となったが、最終的に総合16位で昨日の覇者ギウリオ・チッコーネ(トレック・セガフレド)、総合21位のサイモン・イェーツ(バイクエクスチェンジ・ジェイコ)、総合19位のロレンツォ・フォチュナト(エオロ・コメタ)、総合18位のヒュー・カーシー(EFエデュケーション・イージーポスト)、総合15位のシーメン・アレンスマン(チームDSM)、総合13位のウィルコ・ケルデルマン(ボーラ・ハンスグロエ)、総合12位のヒルト、総合11位のバルベルデ、総合10位のギヨーム・マルタン(コフィディス)のトップ10以下総合ジャンプアップを狙えるそうそうたるメンバーらが飛び出した。総合2位にジェイ・ヒンドリー(ボーラ・ハンスグロエ)がいるボーラ・ハンスグロエは更にレナード・カムナも送り込むなど、戦略的な動きを見せた。
この強烈な逃げの布陣に対し、メイン集団も大きくタイムを容認することはできないため、自ずと脚を使ってペースをコントロールし続けなければならない状況が続く。総合リーダーのリチャード・カラパズ擁するイネオス・グレナディアスは必然的にこの役を担わなければならず、一日中アシストがフル稼働する事となる。
先頭の逃げは何度となくバラけながらも、モルティローロ峠に向かう段階で再び20名にまで膨れ上がる。しかしここで逃げ集団は分裂、総合トップ20の二人アレンスマン、バルベルデ、更にはカムナらの8名がペースを上げて抜け出す。ステージ中盤の残り90キロで先頭の8名は、追走の残りの逃げに45秒差、メイン集団には5分弱のタイム差をつけてモルティローロを上り始めた。

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上りに入ると、チッコーネ、カーシー、ヒルト、マルタン、ケルデルマン、フォーチュナト、イェーツの総合トップ20らが一斉にペースを上げ、先頭の8名へのブリッジを図る。そんな中、目的がはっきりしている山岳賞ジャージのコーエン・ボウマン(ユンボ・ヴィズマ)は自らのタイトルのため、モルティロールトップ通過を果たした。
その背後のメイン集団ではニーバリが動く。アスタナ・プレミアテックはイネオス・グレナディアスへの攻撃として6名が集団前方でペースアップを仕掛ける。中々目に見える形でのダメージは与えていないように思われたが、モルティローロの山頂3km手前で一気にそのダメージが顕になる。ダビ・デ・ラ・クルスとジョー・ドムブコウスキーの加速によリメイン集団は一気に15名ほどまでに減らされてしまう。特にカラパズはアシストがわずか一人に減らされてしまう。そして満を持してニーバリが頂上手前でアタック、そのまま山頂を越え得意のダウンヒルで更に加速、カラパズは必然的に自ら脚を使わねばならない状況へと追い込まれていく。そんな中ニーバリを追っていた総合5位のドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(インターマルシェ・ワンティゴベール・マテリオー)は下りで落車、、単独での追走を余儀なくされる。
下りきった時点でこのメイン集団は人数を減らし、総合トップ10の内7名を含む9名にまで絞り込まれた。だがここからペースが落ち着き次々と遅れた選手たちが合流を果たした。
先頭の逃げはバルベルデ、アレンスマン、ヒルト、カーシー、ボウマン、カムナ、ワウト・ポエルス(バーレーン・ヴィクトリアス)の7名に絞り込まれ、残りの逃げのメンバーはどんどんと離されていく。この時点でメイン集団とのタイム差は5分ほど、総合トップ20の選手たちにとっては更にプッシュしてタイム差を広げたい状況が続く。上りに入ると先頭争いはさらに激しくなり、カーシー、カムナ、少し開けてバルベルデ、アレンスマンの順で残り30kmの等級のない山頂を通過していく。
そして迎えたサンタ・クリスティナの上り、13.5km、平均勾配8%を超える難関はバトルをさらに加速させた。残り7.5km、アレンスマンがアタックし、先行していたカムナを捉える。そしてその背後でヒルトが追走のアタックをし、バルベルデとカーシーを置き去りにする。ヒルトはそのままアレンスマンに追いつくと、今度はそのままアタックを敢行、独走体制へと持ち込んでいく。

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その背後のメイン集団では、ポエルスが逃げから呼び戻され、エースのランダのアシストに入る。しかしそのバーレーン・ヴィクトリアスはその総合4位のランダと2枚看板で総合6位のビルバオがまさかの接触でビルバオが上りのきつい勾配で落車を喫するハプニングに見舞われる。そして残り5km、カラパズがヒンドリーとランダを引き連れ、総合3位のジョアオ・アルメイダ(UAEチームエミレーツ)を置き去りにし、3名となる。
先頭ではヒルトが濡れた下りの路面に手こずりながらも独走を続け勝利、31才のベテランがグランツール初勝利で見事チームに今大会2勝目をもたらした。「バイクはきちんとシフトしないし、そのせいでチェーンは暴れるし、脚はつるし、最後は満身創痍だったけどなんとか逃げ切れたよ。」とヒルトはトラブルに見舞われながらもゴールを目指し続けたことを語った。アレンスマンは最後まで追いつけず7秒差の2位でゴールを果たした。

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更にその背後ではカラパズラが逃げのバルベルデを吸収し、ボーナスポイントとボーナスタイムを狙ったゴールスプリントを繰り広げる。そしてわずかにからパズより先着、ステージ3位に入ったのはヒンドリー、これで総合でのタイム差を僅か3秒にまで詰めた。アルメイダはなんとか踏ん張りきり総合3位を死守したが、ゴール後にイネオスのアシストが意図的に目の前でブレーキを掛けたことで避けるために遅れたタイミングで仕掛けられたと不満を漏らした。
ジロ・デ・イタリア第16ステージダイジェスト
ジロ・デ・イタリア第16ステージ順位
1位 ヤン・ヒルト(インターマルシェ・ワンティゴベール・マテリオー) 5h40’45”
2位 シーメン・アレンスマン(チームDSM) +07”
3位 ジェイ・ヒンドリー(ボーラ・ハンスグロエ) +1’24”
4位 リチャード・カラパズ(イネオス・グレナディアス)
5位 アレハンドロ・バルベルデ(モビスター)
6位 ミケル・ランダ(バーレーン・ヴィクトリアス)
7位 レナード・カムナ(ボーラ・ハンスグロエ) +1’38”
8位 ジョアオ・アルメイダ(UAEチームエミレーツ)
9位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(アスタナ・カザフスタン) +2’06”
10位 ヒュー・カーシー(EFエデュケーション・イージーポスト) +2’13”
ジロ・デ・イタリア総合順位
1位 リチャード・カラパズ(イネオス・グレナディアス) 68h49’06”
2位 ジェイ・ヒンドリー(ボーラ・ハンスグロエ) +3”
3位 ジョアオ・アルメイダ(UAEチームエミレーツ) +44”
4位 ミケル・ランダ(バーレーン・ヴィクトリアス) +59”
5位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(アスタナ・カザフスタン) +3’40”
6位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(インターマルシェワンティゴベール・マテリオー) +3’48”
7位 ペッロ・ビルバオ (バーレーン・ヴィクトリアス) +3’51”
8位 エマニュエル・ブッフマン(ボーラ・ハンスグロエ) +4’45”
9位 ヤン・ヒルト(インターマルシェ・ワンティゴベール・マテリオー) +7’42”
10位 アレハンドロ・バルベルデ(モビスター) +9’04”
H.Moulinette