
毎年のように最後の最後、ユイの壁での激坂勝負になるこの大会も、そこまでの過程でいかに脚を削られないかが勝敗に大きな影響を与える。しかしその勝負所を心得ている選手たちでさえ、ライバルチームの攻撃に対処しながら体力を奪われ、最後の勝負に挑めなかったりもする。

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そんな極めてタクティカルなレースを最多の5回制しているのは、大ベテランのアレハンドロ・バルベルデ(モビスター)。毎年このレースを積極的に狙いに来るが、あと5日で42歳を迎えるバルベルデの6度目制覇の夢を打ち砕いたのは、ディラン・テゥーンス(バーレーン・ヴィクトリアス))だった。激坂ではバルベルデに追いつかれるも、上りきった後の僅かな緩斜面でバルベルデを振り切り、見事ビッグタイトルを手にして見せた。

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昨日のパリ~ルーベが史上最速を記録したように、このレースでも序盤からハイペースでレースが進み、エースクラスの選手たちも休まる暇がない展開となった。レースは序盤から10名の逃げが決まり、70㎞を超えた段階でタイム差は3分ほどにまで広がる。しかし3度ユイの壁を上る周回コースに入るころにはその差は1分台にまで縮まる。モビスターに加えバーレーン・ヴィクトリアスを積極的な牽引を見せ、集団のハイペースを維持、ライバルチーム戦力と体力を削っていく。
最後まで逃げ続けた2人も残り9㎞でつかまると、激しいポジション争いと覇権争いが勃発する。残り7㎞を切ると、コフィディスが3人の選手で攻撃を仕掛ける。しかしこれもほどなくして吸収されるが、マウリ・ファンセヴェナント(クイックステップ・アルファヴァイニル)とソレン・クラー・アンデルセン(チームDSM)がコンビを組み、逃げを決める。しかし残り850mを切りこの二人も吸収されると、勝敗の行方はユイの壁を誰が一番早く駆け上がるかの一点に絞られることとなった。

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過去4大会で3勝を挙げている世界チャンピオンのジュリアン・アラフィリップ(クイックステップ・アルファヴァイニル)も加速をするが、その前にはテゥーンス、バルベルデ、アレクサンダー・ヴラソフ(ボーラ・ハンスグロエ)の3人が立ちはだかった。バルベルデは急勾配区間で持前のスプリント力で一度はテゥーンスに追いつくも、そこでペースがガクッと落ちたのに対し、テゥーンスは最後まで踏み続け、念願だったクラシックを制覇して見せた。

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「夢のようだよ。クラシックの勝利を夢見てきたんだ。今年はクラシックで今までにないくらい調子がいいんだ。いつも勝者がそのレースで最強とは限らないんだけど、ユイの壁ではとにかく脚が試されるんだ。そういった意味では今年のユイの壁では僕が最強だったんだよ。テゥーンスは納得の表情を見せた。
一方で勝利をあと少しの差で逃したバルベルデは、「ここ数年のような苦しむような感覚は今日はなかったんだ。でも今日は調子がよく、限界まで走れたと思う。ただとにかくペースが速かったんだよ。ユイの壁での最速だったんじゃないかな。」 と語った。
3位を獲得したヴラソフは「正直テゥーンスはマークさえしていなかったよ。アラフィリップの位置がずっと気になっていたら、前で”ドカン”と彼が行ってしまったんだよ。」と、トゥーンスの予想外の走りに脱帽した。
期待されながらも4位に沈んだアラフィリップは、「今日は勝ったやつが強かったんだよ。」と納得の表情を見せた。
フレッシュ・ワロンヌ2022ダイジェスト
フレッシュ・ワロンヌ2022順位
1位 ディラン・トゥーンス(バーレーン・ヴィクトリアス) 4h42’12”
2位 アレハンドロ・バルベルデ(モビスター) +02”
3位 アレクサンダー・ヴラソフ(ボーラ・ハンスグロエ)
4位 ジュリアン・アラフィリップ(クイックステップ・アルファヴァイニル) +05”
5位 ダニエル・マルチネス(イネオス・グレナディアス) +07”
6位 マイケル・ウッズ(イスラエル・プレミアテック)
7位 ルーベン・ゲレーロ(EFエデュケーション・イージーポスト)
8位 ルディー・モラード(グルーパマFDJ)
9位 ワーレン・バルギル(アルケア・サムシック)
10位 アレクシス・ヴイエルモーズ(トータルエナジーズ)
H.Moulinette