パリ~ルーベ2022:グランツール系オンリーからの脱却、イネオスが北の地獄も制しクラシック連勝!昨年タイムオーバー失格の石畳でファン・バーレが史上最速タイムで圧巻の独走勝利!(ダイジェスト動画あり)
前身のチームスカイの時代も含め、イネオス・グレナディアスはグランツール系のイメージが強いチームだった。しかしここ数年ユンボ・ヴィズマとUAEチームエミレーツの各エースにその座を譲りつつあった。その当該2チームはクラシックでも結果を残し、まさに最強チームの称号を手中に収めているが、それを追随する形で、今シーズンはイネオス・グレナディアスがクラシックでも積極的な走りと攻めを見せつ透けている。そしてそれは早くもか結果という形で表れており、アムステルゴールドレースをミカル・クウィアトコウスキー(イネオス・グレナディアス)が制すと、フランダースクラシックのブランバンツ・パイル(ヨーロッパツアー)をマグナス・シェフィールド(イネオス・グレナディアス)が制し、そしてこの”北の地獄”パリ~ルーベではディラン・ファン・バーレ(イネオス・グレナディアス)が驚きの勝利を挙げた。
多くの結果を残してきている絶対的エースではない、しかし昨年度はドワース・ドア・フランデーレンで優勝、世界選手権でも2位に入るなど、結果は残していた。だがそれも今大会で優勝候補に名前が挙がるには全く足りていなかった。なぜな昨年度のパリ~ルーベでは、全選手中の最後尾でゴール、しかもタイムオーバーでの失格だったのだ。しかしだからこそ付け入る隙があったのかもしれない。マシュー・ファン・デル・ポエル(アルペシン・フェニックスとコロナ感染から復帰してきたワウト・ファン・アールト(ユンボ・ヴィズマ)の二人の優勝候補を中心に、今シーズン好調のステファン・キュング(グルーパマFDJ)、マテイ・モホリッチ(バーレーン・ヴィクトリアス)ら有力選手たちに加え好天候が選手たちに過去最高のペースでレースを展開させる。特にイネオス・グレナディアスは序盤の横風区間での分断作戦を決行、これによりレースの展開は開始激しさを増した。
この序盤の分断の犠牲になったのがファン・デル・ポエルとファン・アールトの新旧シクロ世界王者コンビ、キュング、キャスパー・アスグリーン(クイックステップ・アルファヴァイニル)、追走に時間と体力を費やしたことが、結果的にレース最終版の勝負所で響く結果となった。残り113㎞で迎えた名物アーレンベルグの荒れ果てた石畳では、モホリッチが動く。当初は5名だったが、2名が脱落、ローラン・ピション(アルケア・サムシック)とトム・デヴリエント(インターマルシェ・ワンティゴベール・マテリオー)を加えた3人が先頭で、残り67㎞で後続に2分以上にまでその差を広げる。
しかしそう簡単に逃げ切りなど許されるわけもなく、ユンボ・ヴィズマがペースアップをすると追走集団も分断され、少数精鋭のメンバーが残る。ファン・アールト、ファン・デル・ポエル、キュングに加え、マッテオ・トレンティン(UAEチームエミレーツ)、ジャスパー・ストゥーヴェン(トレック・セガフレド)、イブ・ランパートとフロリアン・セネシャルのクイックステップ・アルファヴァイニルコンビ、ファン・バーレとベン・ターナーのイネオス・グレナディアスコンビに加え、インターマルシェ・ワンティゴベール・マテリオーもエイドリアン・プティとタコ・ファン・デル・ホーンの二人を残す。
ここから順位はめまぐるしく変わっていくこととなる。モホリッチはパンクで一旦追走に吸収されるが、ランパートとともに最後まで先頭に残っていたデヴリエントに残り28㎞で再び合流を果たす。その背後ではファン・バーレはアタックを敢行して先頭を単独で追い始める。そして先頭は合流し4人になると、4つ星のセクター5の石畳区間で、ファン・バーレが加速、独走態勢へと持ち込んでいく。
そして追走する立場となったランパートは残り8㎞で不運に見舞われる。沿道の観衆と接触、激しく石畳に叩きつけられてしまった。「観戦の仕方がわからないなら、家でテレビで見ろ!」レース後にランパートは激怒するほど、またしても沿道の観客がレースに水を差してしまった。この落車を回避したものの、モホリッチは単独での追走が困難となり、追走集団に呑み込まれていった。
単独となったヴァン・アーレは快調にペースを上げ独走、後続との差を大きく広げ勝利を確信、昨年度の最後尾ゴールから先頭でのゴールという誰も予想すらできなかったドラマを、史上最速の平均時速45.8㎞で演じて見せた。
2位争いも混沌とし、ファン・アールト、キュング、デブリエント、モホリッチによるベロドローム内でのスプリント勝負となったが、スプリンターの資質もあるファン・アールトが2位を確保、キュングが3位となり、デヴリエントが大殊勲の4位に入った。
「夢見心地だよ!信じられないよ!正直去年はビリでゴールしてオーバータイムで失格、今年はその真逆なんて未だに実感がわかないよ。でも僕にとっては去年の世界選手権での2位が大きなゲームチェンジャーになったよ。あれで自信を持って走れるようになったんだよ。それに今日はチームカー内でも絶叫していて興奮しているのが伝わってきた。僕を信じてくれて託してくれたチームには感謝しかないよ。」29歳の中堅は、遅咲きながらもモニュメント制覇という大仕事をやってのけた。
パリ~ルーベ2022ダイジェスト
パリ~ルーベ2022順位
1位 ディラン・ファン・バーレ(イネオス・グレナディアス) 5h37’00”
2位 ワウト・ファン・アールト(ユンボ・ヴィズマ) +1’47”
3位 ステファン・キュング(グルーパマFDJ)
4位 トム・デヴリエント(インターマルシェ・ワンティゴベール・マテリオー)
5位 マテイ・モホリッチ(バーレーン・ヴィクトリアス)
6位 アドリアン・プティ(インターマルシェ・ワンティゴベール・マテリオー) +2’27”
7位 ジャスパー・ストゥーヴェン(トレック・セガフレド)
8位 ローラン・ピション(アルケア・サムシック)
9位 マシュー・ファン・デル・ポエル(アルペシン・フェニックス) +2’34”
10位 イブ・ランパート(クイックステップ・アルファヴァイニル) +2’59”
H.Moulinette