ロンド・ファン・フランデーレン2022:またしても封じ込められたポガチャル、ファン・デル・ポエルが頭脳的戦略で石畳のフランデーレンで連勝!(ダイジェスト動画あり)
ビッグタイトルは誰もが喉から手が出るほど欲しいもの、だからこそ勝利のためには力だけではなく戦略と経験が大きくものをいうこともある。ましてや実力差が拮抗していれば、それはなおさらなことだ。先日のドワース・ドア・フランデーレンで見事勝利したマシュー・ファン・デル・ポエル(アルペシン・フェニックス)に対して、完全にしてやられ逃げきられて悔しさをにじませたタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)。この二人が優勝候補筆頭となったこのレースは、まさにこの二人によるドラマがゴールで待っていた。そして制したのは ファン・デル・ポエル、巧みな駆け引きでポガチャルの夢を粉砕、ポガチャルはゴールで苛立ちと悔しさをにじませるジェスチャーを見せた。
1913年に初開催、106回目を迎えたベルギーの風物詩は、今年も激しいバトルが予想された。しかし優勝候補の一角と目されていたワウト・ファン・アールト(ユンボ・ヴィズマ)がコロナ感染で未出走となり、一気に注目は世代最強の名を争う二人、ファン・デル・ポエルとポガチャルに絞られた。
レース序盤ポガチャルは落車に巻き込まれるが大きな怪我もなくすぐに隊列に復帰した。そして逃げが決まると、激しい追走とアタックの応酬が繰り返され続けた。しかし展開が大きく動いたのは集団が一つになった後、残り54㎞、ポガチャルが石畳区間の上りで加速していく。このタイミングでは位置取りが悪かったファン・デル・ポエルは猛追を余儀なくされるが、何とか合流に成功、そして残り50㎞、次のパテルベルグでさらなるアタックがかかり、先頭集団はさらに削られていく。
そこからディラン・ファン・バーレ(イネオス・グレナディアス)ら2人が抜け出すと、さらにそれを追う形で残り44㎞でポガチャルがアタックを仕掛ける。これで一気に体制は崩れ、ファン・デル・ポエル、ヴァレンティン・マデュアス(グルーパマFDJ)ら5名に勝負の行方が絞られる。
前回のようなミスはしまいと、ポガチャルは常に積極的に攻撃的姿勢を見せ続けた。残り17㎞で決定的なアタックを仕掛けると、それに着いてこれたのはファン・デル・ポエルだけだった。この時点で決着はこの二人に絞られたかに思われたが、まだドラマはゴール前に待っていた。
先行するポガチャルとファン・デル・ポエルは残り1l㎞を切り駆け引きを始める。その背後には件名に猛追してくるファン・バーレとマデュアスの姿、定石通りであれば、この二人に追いつ変えることなく勝負を仕掛けるのだが、ももで先頭にいるファン・デル・ポエルは自らの視界が良好な状態で、ポガチャルを見つつ、2人が追いついてくるのを待った。ポガチャルは仕掛けるべきかどうかの狭間でその駆け引きで先行することを躊躇した。
そしてファン・バーレとマデュアスが追いつくまさにそのタイミングを見計らったかのようにファン・デル・ポエルは猛然とスプリントを開始する。しかしその背後にいたポガチャルは、追いついてきたマデュアスとファン・バーレに左右を挟まれ行き場を失った。万事休す、これで勝負あり、ファン・デル・ポエルが勝利、さらにはファン・バーレが2位、マデュアスが3位表彰台を獲得し、手を挙げて怒りをあらわにしながらポガチャルは4位に沈んだ。
「これがレースだよ。駆け引き経験の差が出たね。ポガチャルが一番強かったかもしれないけど、僕の方が勝負巧者だった。」ファン・デル・ポエルはレース後にそう語った。
「レース中は最高の気分だったけど、最後はむかついたよ。進路がなくてスプリントが全くできなかったからね。でもそういうことが起きるのがレースだよ。ただ自分自身に腹が立ったよ。」ポガチャルは落ち着きを取り戻して語った。
ロンド・ファン・フランデーレン2022ダイジェスト
ロンド・ファン・フランデーレン順位
1位 マシュー・ファン・デル・ポエル(アルペシン・フェニックス 6h18’30”
2位 ディラン・ファン・バーレ(イネオス・グレナディアス)
3位 ヴァレンティン・マデュアス(グルーパマFDJ)
4位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)
5位 ステファン・キュング(グルーパマFDJ) +02”
6位 ディラン・テウンス(バーレーン・ヴィクトリアス)
7位 フレッド・ライト(バーレーン・ヴィクトリアス) +11”
8位 マッズ・ペデルセン(トレック・セガフレド) +48”
9位 クリストフ・ラポルテ(ユンボ・ヴィズマ)
10位 アレクサンダー・クリストフ(インターマルシェ・ワンティゴベール・マテリオー)
H.Moulinette