ミラノ~サンレモ2022:MTB用ドロッパーシートポストを使用したモホリッチが強豪の駆け引きの間隙を縫ってアタックを決め勝利!またしてもスロベニア選手がビッグタイトル獲得!(ダイジェスト動画あり)
1907年に第一回が開催され、298㎞の最長のクラシックは、最後の最後で思わぬ伏兵が優勝候補たちを出し抜いた。レースというのは生き物だ。下剋上や思わぬ勝利は当たり前のように起きる。もちろんその数は少ないが、それが今年最初のモニュメント、最高峰のクラシックレースで起こった。
残り26㎞のチプレッサの丘の上り前から、集団のペースが急激に上がり、序盤から逃げた選手たちが徐々に崩れ、順番にメイン集団へと吸収されていく。優勝候補の筆頭は、今シーズンすでにクラシックもステージレースも制してきているタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)、その底なしのオールラウンドな強さに加え、この日はアシストが絶好調、ダビデ・フォルモロ(UAEチームエミレーツ)がエースを牽引する。さらにはワウト・ファン・アールト(ユンボ・ヴィズマ)をエースとしながらも、こちらもステージレースを制して絶好調のプリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ))もチャンスをうかがうユンボ・ヴィズマのクリストフ・ラポルテもチームを引っ張る。
そしてペースは上がったまま残り9㎞の勝負所、ポッジオの丘に突入すると、レースは一気に激しいノーガードでの打ち合いとなる。相変わらずラポルテとフォルモロがけん引する中、残り8.1㎞でまず動いたのはポガチャルだった。それにはファン・アールトがぴったりとマーク、さらには復帰してきたマシュー・ファン・デル・ポエル(アルペシン・フェニックス)もそれに加わる。しかしポガチャルはそれを振り払うかのようにさらにアタックを仕掛ける。一気に集団は少人数となり、各チームのエースクラスだけが先頭で激しい火花を散らす。
しかしログリッチやファン・デル・ポエルらは冷静にこれに対処、最強のメンツによる駆け引きは振出しに戻る。残り6.4㎞では今度はクラー・アンデルセン(チームDSM)がアタック、今度はポガチャルがそれをに対応する。そしてポガチャルはさらに攻めの姿勢を見せ続けるが、ファン・アールトとファン・デル・ポエルの新旧シクロ王者がそれを許さない。しかし今考えうる最強のメンツが顔を揃えたことは、逆に他の選手たちに隙を与えることとなる。
残り4㎞の下りで、マテイ・モホリッチ(バーレーン・ヴィクトリアス)が路肩でジャンプをしながらリスクを冒して渾身のアタックを決める。一瞬「誰が追うのか」という戸惑いを見せた最強メンバーは、この逃げをみすみす許してしまう。決してその差は大きくは広がらないが、バランスを崩しながらも攻めの走りをするモホリッチには誰も追いつくことができない。
残り1㎞を切りようやくモホリッチは後続を確認するが、この大会優勝を狙っていたメンバーにとってその背中は近くて遠かった。協調体制が取れれば追いつけたかもしれない差だが、誰もその主導権を握らずに、モホリッチの大金星を許す形となった。モホリッチはチームのスポンサーロゴを指さしながらゴール、ゴール後には「自分が勝ったことが信じられない」というようなきょとんとした表情を見せた。そして2位にもゴール前でまだ駆け引きを続ける集団から飛び出したアンソニー・チュルギス(ダイレクトエナジーズ)が入った。ファン・デル・ポエルはスプリントで3位に滑り込むのが精いっぱいだった。
「このレースのことは冬の間ずっと考えていたよ。チャンスはあると思っていたからね。照準をこのレースに合わせて調整をしてきたんだ。まあ体調不良になったり、ストラーデ・ビアンケでは落車もしてしまったけどね。でも勝つことをイメージし続けてきたんだよ。最初からあの下りで仕掛けることは決めていたんだ。あとはリスクを負ってでも後続を引き離すこと、もう爆走だったよ。ミラノ~サンレモで本当に勝利できるなんて最高の気分だよ!」モホリッチはレース後にそう語った。
これでポガチャル、ログリッチに続いて、またしてもスロベニア選手がメジャータイトルを獲得、選手層が薄いながらも、そのほとんどがタイトルホルダーになるという圧倒的存在感を示している。そしてモホリッチはこのレースでMTBなどではよく見かけるドロッパーシートポストを使用していたことを激白、これがまた新たなトレンドとなるのかが気になるところだ。すでにUCIが公式見解として問題ないとしており、これから使用する選手が増えそうだ。
また3位に終わったファン・デル・ポエルは「残念だよ。追走に人数がいたから平坦で追いつけると思ったんだけどね。駆け引きをし過ぎてしまって追いつけなかったよ。来年も狙えるけど、毎年歳を取っていくわけだから、チャンスを逃したということの方が大きいんだよ。」と肩を落とした。
ミラノ~サンレモ2022ダイジェスト
ミラノ~サンレモ2022順位
1位 マテイ・モホリッチ(バーレーン・ヴィクトリアス) 6h27’49”
2位 アンソニー・チュルギス(トータルエナジーズ) +02”
3位 マシュー・ファン・デル・ポエル(アルペシン・フェニックス)
4位 マイケル・マシューズ(バイクエクスチェンジ・ジェイコ)
5位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)
6位 マッズ・ペデルセン(トレック・セガフレド)
7位 ソレン・クラー・アンデルセン(チームDSM)
8位 ワウト・ファン・アールト(ユンボ・ヴィズマ)
9位 ヤン・トラトニック(バーレーン・ヴィクトリアス) +05”
10位 アルノー・デマール(グルーパマFDJ) +10”
H.Moulinette