イル・ロンバルディア2021:秋の最高峰クラシックを制したのはポガチャル!コッピとメルクスに続く史上3人目の同一シーズンモニュメント2勝とツール制覇の快挙!マスナダが大健闘の2位
秋のクラシックの最高峰、落ち葉のクラシックは誰もが欲しいタイトルだ。その勝負を本能的な動きで抜け出して制したのはタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)、23歳にして、伝説のファウスト・コッピとエディ・メルクスと並ぶ、同一シーズンモニュメントと呼ばれるクラシック最高峰2勝(リエージュ・バストーニュ・リエージュとイル・ロンバルディア)、さらにはツール・ド・フランス制覇を達成、グランツールからクラシックまで狙える究極のオールラウンダーとしてその存在はすでに歴史に名を遺すレベルにまで到達した。その本人は「歴史に名を遺すかなんてただの結果に過ぎなくて、僕は自転車の乗ってレースに出て、全力を出し切るのがのが大好きなんだ。」、と自転車愛を満面の笑みで語る若人らしさを見せた。
そんなポガチャルに対して唯一迫ったのはファウスト・マスナダ(ドゥクーニンク・クイックステップ)地元イタリアのクラシックで期待と声援を背に、渾身の走りを見せたが、歴史を刻んだ男には届かなかった。
239㎞に及ぶ秋のバトルは、総獲得標高が4500mにも及ぶまるで山岳ステージ、それだけハードなクラシックタイトルだけにその価値は極めて大きく、誰もが喉から手が出るほど欲しいタイトルの一つでもある。まずは自転車乗りの聖地マドンナ・デラ・ギザッロ教会を目指しレースが動き出す。早速逃げが決まるが、それと同時にミケル・ランダ(バーレーン・ヴィクトリアス)は何と早くもここで遅れ、シーズン終了を迎えた。
そのままレースは推移し残り100㎞を切るが、このレースを誰よりも狙っているのは世界チャンピオン2連覇のジュリアン・アラフィリップと新鋭のレムコ・エヴァネポエル擁するドゥクーニンク・クイックステップだ。レース中盤でもっと積極的な主導権争いを演じるかに思われたが、この日はあまり積極的には動かない。代わりにようやく復活をしてきているクリス・フルーム(イスラエル・スタートアップネーション)が残り90㎞を切り追走を仕掛けるなど存在感を見せる。
そしてようやくレースが本格的に動き出す。逃げとのタイム差は3分ほど、ここでニールソン・パウレス(EFエデュケーションNIPPO)が積極的に動く。これに合わせてマスナダ、ジョージ・ベネット(ユンボ・ヴィズマ)らも動く。しかしこの動きを警戒したのはUAEチームエミレーツとイネオス・グレナディアス、どちらもタイトルを確実に奪うためにチームが率先して主導権を狙う。そして逃げはこの後順番に吸収されていく。
しかしそれでもパウレスが再びアタック、マルク・ヒルシ(UAEチームエミレーツ)、マスナダ、ロメイン・バルデ(チームDSM)、ヨナス・ヴィンゲガード(ユンボ・ヴィズマ)ら強豪がこれに合わせて動くが、メイン集団もこれを易々とは逃がさない。この日は下りで落車が頻発、アレクセイ・ルチェンコ(アスタナプレミアテック)やダビデ・フォルモロ(UAEチームエミレーツ)も激しい展開の中で下りで落車を喫してしまう。
そしてここへきてようやくドゥクーニンク・クイックステップが動き出す。アラフィリップとマスナダを中心に、下りで加速、ライバルたちに揺さぶりをかける。しかしこの段階でもう一人のエースエヴァネポエルは脱落しており、アラフィリップ一枚の展開となる。しかしこの動きも残り60㎞を前にライバルたちに抑え込まれる。
そしてここから一気にレースが動く。上りでヴィンチェンツォ・ニーバリ(トレック・セガフレド)が残り37㎞でアタック、するとこれに反応したポガチャルが残り36㎞で一気に仕掛け単独で飛び出していく。速すぎるかに思われたアタックに、ライバルたちはこれを一旦見送ってしまう。しかしここでさすがにまずいと思ったのか、マスナダ、アラフィリップ、アダム・イェーツ(イネオス・グレナディアス)、マイケル・ウッズ(イスラエル・スタートアップネーション)、アレハンドロ・バルベルデ(モビスター)、プリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ)らが追走を始める。
後続の集団に35秒差をつけて頂上をクリアしたポガチャルに対し、残り32㎞でマスナダが単独で追走を始める。マスナダが単独で猛追を仕掛け、テクニカルな下り区間でポガチャルに迫るが、その後ろの追走集団は45秒ほどのタイム差がなかなか詰まらない。
ポガチャルに合流を果たしたマスナダは、チームオーダーでアラフィリップを待つように指示される。しかし後続のアラフィリップらは協調体制が取れず、タイム差を縮めることができない。それどころかいったんわずかに縮まった差が、再度開き始め、ドゥクーニンク・クイックステップはマスナダでの勝負に切り替える。残り4㎞を切り激坂区間に突入すると、ポガチャルは何度となく加速を繰り返す。もがきながらもマスナダはそれに対応し続けた。そのままゴールスプリント勝負まで持ち込まれたが、アラフィリップのアシストとして粉塵の活躍をしてきたマスナダに、ポガチャルを上回る力は残っていなかった。ポガチャルは余裕をもって残り250mからスプリント、ガッツポーズで勝負を決めた。その背後の3位争いは、アダム・イェーツがログリッチを抑えて奪い取った。そして大ベテランのバルベルデも5位に入った。
同じ年度にリエージュ・バストーニュ・リエージュとイル・ロンバルディアの丘のクラシックを制覇するのは1987年のモレーノ・アルゼンチンいらい、さらにはツール・ド・フランスとイル・ロンバルディアを同じ年に制するのは1979年のベルナール・イノー以来、さらにはコッピとメルクスに並ぶ2つのモニュメントとツール制覇、記録づくめの勝利となった。
「今の僕の目標は、とにかくレースを楽しむこと!それが一番次の段階に入ったら、その時は新たな目標を見つけるよ。」自転車を心から楽しむ、ただそのシンプルな気持ちが世代最強の選手、ポガチャルを突き動かしている。
イル・ロンバルディア2021順位
優勝 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ) 6h01’39”
2位 ファウスト・マスナダ(ドゥクーニンク・クイックステップ)
3位 アダム・イェーツ(イネオス・グレナディアス) +51’
4位 プリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ)
5位 アレハンドロ・バルベルデ(モビスター)
6位 ジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ)
7位 ダビ・ガウドゥ(グルーパマFDJ)
8位 ロメイン・バルデ(チームDSM)
9位 マイケル・ウッズ(イスラエル・スタートアップネーション)
10位 セルジオ・エナオ(EFエデュケーションNIPPO) +2’25”
H.Moulinette