パリ~ルーベ2021:秋開催の石畳決戦は雨、泥まみれでスリップ落車続出!三つ巴スプリントを制したコルブレッリが勝利!2位は現役学生で議員のフェルメールシュ!トップ3全員男泣き


©Paris Roubaix
コロナ禍でスケジュールが変更され、初の秋開催となった石畳地獄、パリ~ルーベは悪天候で全身泥まみれ、さらには濡れた石畳で落車が続出するサバイバルバトルとなった。実力のみならず、運も味方につけなければ微笑まない勝利の女神、誰がその栄冠をつかむかわからぬバトルは、パリ~ルーベ初出場の3人によるスプリントバトルにもつれ込んだ。そして圧倒的なスプリントでの実績を誇る現イタリアチャンピオンでありヨーロッパチャンピオンのソニー・コルブレッリ(バーレーン・ヴィクトリアス)が、泥まみれのバトルを制して念願のクラシックタイトルを手にした。ほぼ無名の、クラシックレース2戦出場で完走すらない現役大学生でもあり議員のフロリアン・フェルメールシュ(ロット・ソウダル)が驚きの2位、大本命だったシクロクロス3年連続世界王者のマシュー・ファン・デル・ポエル(アルペシン・フェニックス)が3位となった。

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ゴール後は3人とも号泣、それぞれ異なる思いでの男泣きは、今大会の過酷さを感じさせた。29年ぶりに雨となった石畳頂上決戦は、歴史と記憶に残る大会となった。
30セクターの石畳が待ち構える257.7㎞の北の地獄、はスタートから45㎞を要しようやく29名の逃げが決まる。 フェルメールシュをはじめとする初出場者が12名含まれ、まずはレースのペースを作っていく。落車はいたるところで発生、ステファン・キュング(グルーパマFDJ)に至ってはこの日3度も落車し、天を見上げた。ジャンニ・モスコン(イネオス・グレナディアス)、もこの序盤の逃げで積極的な走りを見せ続ける。

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後続のメイン集団ではワウト・ファン・アールト(ユンボ・ヴィズマ)、ファン・デル・ポエル、コルブレッリらが息をひそめるが、それぞれに他を意識し続けられるほどの余裕はない。まずは自らが落車しないように、巻き込まれないように、神経質にならざるを得ない状態が続く。まさに精神の磨り減る極限状態での駆け引きが延々と続く。スタートから100㎞、追走のメイン集団もすでに60名ほどまで人数を減らす。そしてここからさらに落車が頻発、その数はさらに削られていく。
残り144㎞でフェルメールシュは逃げ集団からアタック、マックス・ワルシェイド(キュベカ・ネクストハッシュ)、ルーク・ロウ(イネオス・グレナディアス)、ニルス・エイコホフ(チームDSM)らとともに飛び出していく。そんな中後方では残り141㎞ではファン・デル・ポエルがメカトラでバイク交換を余儀なくされるが、2㎞ほどでメイン集団復帰を果たす。
しかし先頭の4人にも試練が訪れる。ロウとワルシェイドが相次いで落車、フェルメールシュとの二人だけが先頭に残る形となった。この時点で追走の逃げ集団との差は1分、メイン集団とは僅か2分半のタイム差であり、これからレースが本格化していくことを予見させた。
あまりの過酷さにファン・アールトを含む多くの選手が途中でバイクを交換、そして例年であれば常に優勝争いにかかわってくるドゥクーニンク・クイックステップ勢はこの日は全く機能しない。優勝できるメンバーは揃っていたものの、悪コンディションに完全に飲み込まれ、ペースが全く作れない。組織力を売りにするチームにとっては、運と個人の力が試される展開となったこの状況では、苦戦を強いられ、名物五つ星の悪路アランベールを前に、キャスパー・アスグリーン(ドゥクーニンク・クイックステップ)らが加速をして集団分裂を引き起こすのがクライマックスとなってしまった。この後チームはほぼすべての選手がメカトラに見舞われるなど、見せ場のないレースとなってしまった。
残り95㎞、迎えたアランベール、ここでメイン集団ではファン・デル・ポエルが加速する。対するファン・アールトは目の前で選手が落車しそれをかわすのが精いっぱい、落車こそ免れたがここで追走に足を使わされてしまう。
アランベールを抜けると、ここから展開はめまぐるしくなっていく。先頭で逃げ続けていたフェルメールシュら二人は残り83㎞でモスコンら追走に飲み込まれる。その背後ではコルブレッリ、ファン・アールト・ファン・デル・ポエルらの集団が1分差にまで迫る。さらにコルブレッリはここで加速、前を追う展開となる。ファン・アールトはチームメイトが落車、本人もメカトラに見舞われ苦戦が続く。ファン・デル・ポエルは再びバイク交換、本格化する攻撃に備える。
先頭ではモスコンやフェルメールシュら7人が1分弱の差をコルブレッリらに保ったままセクター15に突入していく。そしてこのセクターでファン・デル・ポエルが動く。一気に加速しコルブレッリらに合流を果たすとそのままさらにアタック、新たな追走グループを形成する。コルブレッリとファン・デル・ポエルの追走集団が猛追を仕掛ける中、先頭もモスコン、フェルメールシュ、トム・ファン・アスブロック(イスラエルスタートアップネーション)に絞られる。
残り57㎞、ファン・デル・ポエルとコルブレッリらの追走集団が前を追い詰める中、ファン・アールトは1分弱後方で、孤独な戦いを強いられる。ドゥクーニンク・クイックステップは協調を拒否、ファン・アールトに追わせ、先頭を捕まえたら動くという作戦へと完全にシフトした。これで勝負あり。ファン・アールトの今年のパリ~ルーベは終わった。
先頭では残り53㎞でモスコンが仕掛ける。一気に独走態勢へと持ち込むと快調に速度を上げ、後続との差を広げていく。残り36㎞セクター9に到達すると、モスコンから遅れたフェルメールシュらがファン・デル・ポエルらに吸収されるが、モスコンとのタイム差は1分半にまで広がっている。ここでファン・デル・ポエルはまたも仕掛ける。しかしコルブレッリがこれにすぐさま反応、単独での追走を許さない。

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しかし残り30㎞、勝利の女神はモスコンに微笑まない。まずはスローパンクでバイク交換を余儀なくされ、これで20秒のタイムロスを喫する。しかしスペアバイクの空気圧が合わず、自転車は石畳で跳ねまくり、モスコンは全くペースが上がらなくなる。さらに残り26㎞、セクター7でなんと派手な落車を喫し、これでタイム差を一気に失ってしまう。それでも粘るモスコンは何とかタイム差を維持したまま、もう一つの名物カルフール・ド・ラルブルに突入していく。追走もその人数を減らし、ギヨーム・ボワバン(イスラエル・スタートアップネーション)の落車でファン・デル・ポエル、コルブレッリ、フェルメールシュに絞られる。

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そして残り15.9㎞でモスコンを捉えると、そのままコルブレッリがアタック、モスコンを置き去りにし、レースはコルブレッリ、ファン・デル・ポエル・フェルメールシュのパリ~ルーベ初出場3名に絞られた。そのまま決定打のないままスタジアムまで持ち込まれると、残り250mで実力が未知数のフェルメールシュがアタック、冷静にそれに対応したコルブレッリが勝負を奪い去った。ゴール後倒れこんで喜びで号泣するコルブレッリ、それに対してフェルメールシュは悔し涙を流し、ファン・デル・ポエルもまた悔し涙を流した。モスコンは4位でゴール、悔やまれるパンクとスペアバイクの調整がなければ場勝利が見えていただけに、悔しい結果となった。

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パリ~ルーベ2021順位
1位 ソニー・コルブレッリ(バーレーン・ヴィクトリアス) 6h01’57”
2位 フロリアン・フェルメールシュ(ロット・ソウダル)
3位 マシュー・ファン・デル・ポエル(アルペシン・フェニックス)
4位 ジャンニ・モスコン(イネオス・グレナディアス +44”
5位 イブ・ランパート(ドゥクーニンク・クイックステップ) +1’16”
6位 クリストフ・ラポルテ(コフィディス)
7位 ワウト・ファン・アールト(ユンボ・ヴィズマ)
8位 トム・ファン・アスブロック(イスラエル・スタートアップネーション)
9位 ギヨーム・ボワバン(イスラエル・スタートアップネーション)
10位 ハインリッヒ・ハウッスラー(バーレーン・ヴィクトリアス)
H.Moulinette