ブエルタ・ア・エスパーニャ2021第18ステージ:総合勢の真っ向勝負、制したのは抜け出したロペス!ログリッチは安定の走りで総合優勝へ一歩近づく、ストーラーは山岳賞奪取(ダイジェスト動画あり)
どんなに強豪チームであろうと、どれだけ総合優勝候補がいようと、ステージ勝利をがいかに難しいかというのは、モビスターを見ていて今シーズン感じたことだ。この山岳最難関ステージをミゲル・アンヘル・ロペス(モビスター)が制し、ようやくチームに今年のグランツール初勝利が舞い込んだ。
この日も頂上近くでは霧が出る悪天候、3匹目のドジョウを狙ったマイケル・ストーラー(チームDSM)、そして今大会初のスペイン人勝利を狙ったダビ・デ・ラ・クルス(UAEチームエミレーツ)らが順に最後の上りで先頭に立つ中、ステージ勝利ではなく総合争いを始めたプリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ)とそのライバルたちの勢いは、あっという間にそんな逃げ切り勝利の夢を打ち砕いていった。そしてそこから飛び出したロペスが、迫りくる総合リーダーのログリッチとイーガン・ベルナル(イネオス・グレナディアス)、そしてエンリック・マス(モビスター)らの猛追を振り切って勝利を挙げた。モビスターはがっちり総合2位と3位をキープ、最終日の個人TTでタイムを失うことが予想されているロペスにとっては、このステージでライバルたちにタイム差を広げておくことが重要だっただけに、もう少し大きくリードを確保したかったところだ。
162.2㎞の最難関、クイーンステージは、またしても激坂での頂上ゴール勝負、しかし当然逃げ切りのチャンスもあるのがそんなステージであるとともに、総合系以外で山岳賞ジャージを狙っている面々にとっては、絶対に逃げなければいけないという条件が付きつけられたステージとなる。
スタート直後に発生したアタックに始まり、気が付けば32名という言い所帯の逃げがあっさりと容認される。その中にはチームメイトのロメイン・バルデ(チームDSM)が山岳賞ジャージを着るストーラーの姿もあった。今大会すでに2勝を挙げ、この日の走りでチーム内での山岳賞ジャージキープを目標に掲げたストーラーはこの日も最後まで素晴らしい走りを披露することとなる。
逃げは3分ほどの差をメイン集団から得たが、バーレーン・ヴィクトリアスがそれ以上タイム差が広がるのを許さなかった。ミケル・ランダがエースの地位から脱落も、ジャック・ヘイグが総合4位、そしてさらに上の総合表彰台を狙える位置にいるだけにこの日はチームが積極的な動きを見せ続けた。
そしてここからストーラーが山岳ポイントを荒稼ぎする。1級山岳をトップ通過すると、独走態勢に入ってもそのペースを落とすことなく順に頂上を先頭でクリアしていく。そしておよそ2分のアドバンテージを持って、最後の超級山岳、14.6㎞先のゴール目指し突入していく。
その背後では逃げの面々が最後のあがきを見せるもメイン集団に吸収される。そこからデ・ラ・クルスが飛び出すと、単独で先頭のストーラーを負い始める。メイン集団ではバーレーン・ヴィクトリアスががここでもペースをコントロール、ペースを上げていくと徐々にその人数を減らしていく。
最大勾配17%以上の激坂をストーラーはマイペースで走り続けるが、徐々にそのペースが上がらなくなり、デ・ラ・クルスが上り中盤で追いつくと、そのまま残り5.5㎞でストーラーを振り切って単独走行となる。そのころメイン集団ではインターマルシェ・ワンティゴベール・マテリオーが突如先頭に躍り出ると、ヤン・ヒルトがエースのルイス・メインチェスの為にペースアップ、これで一気に集団は人数を減らす。総合5位のギヨーム・マルタン(コフィディス)と、総合9位のフェリックス・グロスチャートナー(ボーラ・ハンスグロエ)らがその犠牲となる。
デ・ラ・クルスは何とか逃げ切りを狙うが、ヒルトのペースアップで12名まで減らされた総合勢はあっという間にその背中を捉えてしまう。昨日同様に仕掛けたのはベルナル、何とか攻撃の糸口をつかもうと加速を繰り返すが、ログリッチはこれに表情一つ変えず対応、さらにはロペスとマスのモビスターコンビ、そしてログリッチのアシストセップ・クス(ユンボ・ヴィズマ)がこれに合わせてくる。
アダム・イェーツ(イネオス・グレナディアス)、ヘイグ、メインチェスらはこの動きについていけずに脱落、そしてクスの加速で先頭の・デ・ラ・クルスも射程圏内に入ると、残り4㎞でロペスがアタックを決めた。ロペスは残り3㎞でデ・ラ・クルスをかわすとそのまま最後まで逃げ切り勝利、その背後では激しい駆け引きの末にここでもログリッチがマスとベルナルを引き離してゴール、最強の男の力を見せつけた。
「この勝利は僕にとってもチームにとっても価値があるものだよ。僕自身にとっても、これが4年ぶりのブエルタでの勝利だしね。それがこのクイーンステージで達成できたということは自信にもなるし、意味があることだよ。ただただ最高の気分だよ。」ロペスは喜びを語った。
「クイーンステージらしいハードなステージだったよ。特に昨日もあれだけ走っているからね。山岳が終わってほっとしているよ。後はゴールまでしっかりと走るよ。」ログリッチは大会3連覇をほぼ手中に収めた実感を示した。
ストーラーは大会3勝目こそ逃したがこのステージで山岳賞ジャージをチームメイトから獲得、結果を残したいチームDSMにとっては価値あるステージとなった。
ブエルタ・ア・エスパーニャ第18ステージダイジェスト
ブエルタ・ア・エスパーニャ第18ステージ順位
1位 ミゲル・アンヘル・ロペス(モビスター) 4h41’21”
2位 プリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ) +14”
3位 エンリック・マス(モビスター) +20”
4位 イーガン・ベルナル(イネオス・グレナディアス) +22”
5位 ジャック・ヘイグ(バーレーン・ヴィクトリアス) +58”
6位 ダビ・デ・ラ・クルス(UAEチームエミレーツ)
7位 ジーノ・メイダー(バーレーン・ヴィクトリアス)
8位 ルイス・メインチェス(インターマルシェ・ワンティゴベール・マテリオー)
9位 セップ・クス(ユンボ・ヴィズマ) +1’06”
10位 アダム・イェーツ(イネオス・グレナディアス) +1’07”
ブエルタ・ア・エスパーニャ総合順位
1位 プリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ) 73h24’25”
2位 エンリック・マス(モビスター) +2’30”
3位 ミゲル・アンヘル・ロペス(モビスター) +2’53”
4位 ジャック・ヘイグ(バーレーン・ヴィクトリアス) +4’36”
5位 イーガン・ベルナル(イネオス・グレナディアス) +4’43”
6位 アダム・イェーツ(イネオス・グレナディアス) +5’44”
7位 セップ・クス(ユンボ・ヴィズマ) +6’02”
8位 ジーノ・メイダー(バーレーン・ヴィクトリアス) +7’48”
9位 ギヨーム・マルタン(コフィディス) +8’31”
10位 ルイス・メインチェス(インターマルシェ・ワンティゴベール・マテリオー) +9’02”
H.Moulinette