ブエルタ・ア・エスパーニャ2021第13ステージ:ヤコブセンをゴール前で失ったドゥクーニンク・クイックステップがとっさの判断でセネシャルで勝負しそのまま大金星!(ダイジェスト動画あり)


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圧倒的な組織力で、ポイント賞ジャージのファビオ・ヤコブセン(ドゥクーニンク・クイックステップ)を残り1㎞強まで牽引してきたが、まさかのエースがパンクに見舞われる展開。最高速度でトレインを加速させるドゥクーニンク・クイックステップは、一見絶望的に思えたこの秒単位の世界の中で何の躊躇もなくリードアウトのフロリアン・セネシャル(ドゥクーニンク・クイックステップ)での勝負に切り替えると、そのままスプリント勝負へと持ち込む。本来アシストをする選手がほんの少しずつ限界を超えて多くの距離を引っ張り、そのままセネシャルに勝負を託すと、なんと背後から攻寄る強豪スプリンターのマッテオ・トレンティン(UAEチームエミレーツ)を抑えきりそのままゴールラインをトップで通過した。
まさかの展開でも勝利を誰から勝ち取れてしまう圧倒的な組織力と選手層の厚さ、ヤコブセンがポイントこそ積み重ねられなかったが、それでもチームとしてきっちりとステージ勝利を挙げると同時に、ポイント賞争いでヤコブセンの対抗馬となりうるトレンティンとアルベルト・ダイネーゼ(チームDSM)の獲得ポイントを削り取った。

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203㎞の長丁場のレース、この日も逃げたのはブルゴスBH、カハルーラル・セグロスRGA、エウスカルテル・エウスカディのワイルドカード3チーム、今大会何度も見た光景でしっかりとそのチームスポンサーたちへのアピールを続けた。しかしこの日はスプリンターステージ、さらには暑さと横風の関係で逃げは思いのほか早くとらえられてしまう。
そして誰も競い合うことなく残り28㎞の中間スプリントをヤコブセンがトップ通過を果たす。ポイント賞争いをリードするヤコブセンは、このままゴール勝負でもポイントを積み重ねると思われた。
UAEチームエミレーツはトレンティンでのゴール勝負を目指し集団を牽引する。しかしそれはドゥクーニンク・クイックステップも同じだった。明確な意図を持った牽引は、残り距離が少なくなるにとれどんどんと隊列を一列棒状へと伸ばしていき、徐々にあちらこちらで中切れが起きる。

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それでも手を緩めないドゥクーニンク・クイックステップは先頭でさらに加速していく。そのドゥクーニンク・クイックステップの背後を取ったのがトレンティン、さらにその後ろにヤコブセンが待機する体制となり、さらに人数を減らしながら残り3㎞を切っていく。だがここで思わぬハプニングが起きる。何度となく足元に目をやったヤコブセンが失速していったのだ。だがここでもドゥクーニンク・クイックステップはその加速をやめなかった。何の躊躇もなく戦略を変更、リードアウト役のセネシャルでのゴール勝負に切り替えたのだ。それでも実績を考えればトレンティン有利の状況となる。
残り1㎞を切り、さらなる加速で集団がちぎれていく中、ヤコブセンの最大ライバルだったヤスパー・フィリップセンを発熱リタイアで失ったアルペシン・フェニックスのアレクサンダー・クリーガーが真っ先にスプリントを開始する。するとセネシャルは躊躇なくその背後へとシフト、そしてクリーガーをリードアウトとして利用し自らのスプリントを残り120mでスタートする。セネシャルの背後にいたトレンティンも懸命の走りでスプリントをするが、隊列の中で風圧を避けて脚を残したセネシャルのスピードには敵わなかった。誰も予想していなかったセネシャルの大金星にドゥクーニンク・クイックステップのチームメイトは歓喜の声を上げた。

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「ヤコブセンのために完璧な仕事をしていたんだよ。そうしたら無線でヤコブセンがトラブルってきこえてきたんだ。それと同時に”勝負していいぞ”と言われたんだ。とはチームメイトたちが完璧なおぜん立てをしてくれたよ。そこからはもう僕の仕事、限界を突破したよ。勝利はわかったけど、その重みはすぐには理解できなかったよ。頭の中ではトレンティンやアルノー・デマール(グルーパマFDJ)のような強豪スプリンターたちが”僕を追い抜いていくはず”と思っていたんだ。でも誰も抜いていかなかったんだ。この勝利はここまで頑張ってきたご褒美だよ。本当にこんなチャンスに恵まれラッキーだった。」セネシャルの興奮は収まらなかった。
総合リーダーのオッド・クリスチャン・エイキング(インターマルシェ・ワンティゴベール・マテリオー)はこの日も総合リーダージャージをキープ、チームにとって夢のような日はまだ続いている。イーガン・ベルナル(イネオス・グレナディアス)はスプリントに参加、5秒総合でのタイムを取り戻した。
ブエルタ・ア・エスパーニャ第13ステージダイジェスト
ブエルタ・ア・エスパーニャ第13ステージ順位
1位 フロリアン・セネシャル(ドゥクーニンク・クイックステップ) 4h58’23”
2位 マッテオ・トレンティン(UAEチームエミレーツ)
3位 アルベルト・ダイニース(チームDSM)) +02”
4位 ルーカ・メズゲッツ(チームバイクエクスチェンジ) +03”
5位 スタン・デウルフ(AG2Rシトロエン)
6位 ピエ・アレガート(コフィディス)
7位 イタマール・アインホーン(イスラエル・スタートアップネーション)
8位 アントニオ・ヘスス・ソト(エウスカルテル・エウスカディ)
9位 ルイ・オリベイラ(UAEチームエミレーツ)
10位 イーガン・ベルナル(イネオス・グレナディアス) +06”
ブエルタ・ア・エスパーニャ総合順位
1位 オッド・クリスチャン・エイキング(インターマルシェ・ワンティゴベール・マテリオー) 50h31’52”
2位 ギヨーム・マルタン(コフィディス) +58”
3位 プリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ) +1’56”
4位 エンリック・マス(モビスター) +2’31”
5位 ミゲル・アンヘル・ロペス(モビスター) +3’28”
6位 ジャック・ヘイグ(バーレーン・ヴィクトリアス) +3’55”
7位 イーガン・ベルナル(イネオス・グレナディアス) +4’41”
8位 アダム・イェーツ(イネオス・グレナディアス) +4’57”
9位 セップ・クス(ユンボ・ヴィズマ) +5’03”
10位 フェリックス・グロスチャートナー(ボーラ・ハンスグロエ) +5’38”
H.Moulinette