ブエルタ・ア・エスパーニャ2021第10ステージ:休息日明けは波乱だらけ、ストーラーが逃げ切りで今大会2勝目、ログリッチがアタックも落車、総合は逃げたエイキングに(ダイジェスト動画あり)
グランツールというのは一筋縄ではいかない。だから長丁場のレースは面白いのだ。休息日明けのこのステージ、総合リーダーのプリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ)が単独で仕掛け、ライバルたちを突き放したが、何と思わぬ単独落車でそのアドバンテージを失ってしまった。それでもら一部ライバルを突き放すことには成功した。しかし総合リーダーの座は逃げていたオッド・クリスチャン・エイキング(インターマルシェ・ワンティゴベール・マテリオー)に奪取される形となった。 インターマルシェ・ワンティゴベール・マテリオーはレイン・タラマエに続いて、またしても総合リーダージャージを奪取、この段階で見ても大成功のブエルタとなっている。
そんな荒れたステージを制したのは、マイケル・ストーラー(チームDSM)、31人の大所帯の逃げから鮮やかな飛び出しで第7ステージに続いての今大会2勝目を挙げた。24歳のストーラーは残り17㎞で独走態勢に持ち込むと。そのまま最後まで逃げ続け追走してきたマウリ・ファンセヴェナント(ドゥクーニンク・クイックステップ)らを振り切った。
189キロの第10ステージ、ステージ中盤に山岳があるが、ゴールは平坦、ましてや休息日明けということもあり逃げ切りの可能性が大きいステージという予測が、アタックを連発させた。結果70㎞地点まで逃げが決まらず、それまでに集団が分裂するなどかなり荒れた展開となる。最終的に31名の大所帯が逃げることに成功、ツール・ド・フランスでも大逃げに乗り総合2位までジャンプアップ、最終的に総合8位で終えたギヨーム・マルタン(コフィディス)も全く同じパターンの攻撃で今回も総合ジャンプアップを狙う。さらにはストーラー、マックス・シャフマン(ボーラ・ハンスグロエ)、エイキングらが顔を揃えた。
総合力のある選手が少ないことからも、メイン集団はこの逃げを容認したことでタイム差は13分以上にまで広がり、バーチャルで総合リーダーが入れ替わる。ステージ前の総合順位で、マルタンとエイキングがログリッチから9分台の遅れのため、それ以上であればゴールでの総合も入れ替わることとなる。
残り20㎞以上を残し、メイン集団ではログリッチが上りで予想外の単独アタック、虚を突かれたライバルたちは全く対応できずに呆然とそれを見送ることとなる。ログリッチはそのまま一気に後続を引き離し完全にライバルたちを突き放す。すいすいと逃げ続けるログリッチだったが、まさかの落とし穴が待っていた。何でもない下りで後輪がスリップ、そのまま落車してしまう。ガードレールで止まり、そのまま立ち上がってチェーンを戻し再スタートを切ったが、追走してきたミゲル・アンヘル・ロぺスとエンリック・マスのモビスターコンビ、ログリッチの右腕セップ・クス(ユンボ・ヴィズマ)、ジャック・ヘイグ(バーレーン・ヴィクトリアス)が追いついてくる。しかしそれでもイネオス・グレナディアス勢などの姿そこにない。
先頭では駆け引きの末ストーラーが独走態勢となり、一人個人TT状態でゴールを目指す。エイキングとマルタンは明確に総合でのジャンプアップを意識し逃げ続け、それぞれがそれぞれの思惑でレースを進める。エイキングはマルタンとの順位を意識し2位でのゴールを目指しストーラーの追走、結果これが総合リーダージャージ獲得に繋がった。
ステージ勝利はストーラー、そして ファンセヴェナントがスプリントを制し2位、クレメント・シャンプシン(AG2Rシトロエン)が3位に入った。「前回の勝利以上に信じられないよ。まず逃げに乗るのが大変だったし、そこに乗れただけでも満足だったんだ。そうしたら脚もよく回って好調だったから、得意な局面で仕掛けたんだよ。あまり後続との差はわからなかったんだ。あまり大きなタイム差ではないことはわかっていたから、路面が砂で滑りやすい下りでもリスクを負って攻めたんだ。ブエルタでのステージ優勝を夢見てきたけど、10ステージで2勝もできるとは思わなかったよ!」ストーラーは勝利を嚙み締めた。
総合ではログリッチは総合リーダージャージを失ったものの、最大ライバルであるイネオス・グレナディアス勢にはタイム差をつけることに成功、「落車は痛かったけど、結果オーライだね。なぜリスクを背負うかって?そりゃリスク無くして栄光はないでしょ。」ログリッチは納得の表情後でレース後語った。エイキングがマイヨ・ロホを獲得、マルタンはツールに引き続き総合2位まで順位を上げた。
ブエルタ・ア・エスパーニャ第10ステージダイジェスト
ブエルタ・ア・エスパーニャ第10ステージ順位
1位 マイケル・ストーラー(チームDSM) 4h09’21”
2位 マウリ・ファンセヴェナント(ドゥクーニンク・クイックステップ) +22”
3位 クレメント・シャンプシン(AG2Rシトロエン)
4位 ディラン・ファン・バーレ(イネオス・グレナディアス)
5位 オッド・クリスチャン・エイキング(インターマルシェ・ワンティゴベール・マテリオー)
6位 ヨナタン・ナルバエス(イネオス・グレナディアス) +51”
7位 ニコラス・シュルツ(チームバイクエクスチェンジス)
8位 ジオフリー・ブシャール(AG2Rシトロエン)
9位 リリアン・カルメジャーヌ(AG2Rシトロエン)
10位 ケニー・エリソンデ(トレック・セガフレド)
ブエルタ・ア・エスパーニャ総合順位
1位 オッド・クリスチャン・エイキング(インターマルシェ・ワンティゴベール・マテリオー) 38h37’46”
2位 ギヨーム・マルタン(コフィディス) +58”
3位 プリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ) +2’17”
4位 エンリック・マス(モビスター) +2’45”
5位 ミゲル・アンヘル・ロペス(モビスター) +3’38”
6位 ジャック・ヘイグ(バーレーン・ヴィクトリアス) +3’59”
7位 イーガン・ベルナル(イネオス・グレナディアス) +4’46”
8位 セップ・クス(ユンボ・ヴィズマ) +4’57”
9位 アダム・イェーツ(イネオス・グレナディアス) +5’01”
10位 フェリックス・グロスチャートナー(ボーラ・ハンスグロエ) +5’42”
H.Moulinette