ブエルタ・ア・エスパーニャ2021第9ステージ:ジロ総合2位のカルーゾが逃げ切り勝利!山岳バトルで総合上位またしても大シャッフル、ログリッチがまたしてもライバル突き放す(ダイジェスト動画あり)
休息日前のハードな山岳ステージは、総合勢にとっては予想通りのサバイバルバトルとなった。総合リーダーのプリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ)の牙城を誰が崩すかに注目が集まり、この日もライバルチームが波状攻撃を仕掛けたにもかかわらず、結局ログリッチの逆襲の前にタイムを失う形となった。圧倒的な強さで大会3連覇を狙うログリッチの勢い、この男に各選手各大会一度は必ず訪れるというバッドデイは来るのだろうか。
そんなステージで逃げ切りで勝利を挙げたのはジロ・デ・イタリアで総合2位に入ったダミアーノ・カルーゾ(バーレーン・ヴィクトリアス)、チームの総合エース、ミケル・ランダ(バーレーン・ヴィクトリアス)の調子が上がらず脱落していく中で、チームに貴重な勝利をもたらした。また同じくチームメイトのジャック・ヘイグ(バーレーン・ヴィクトリアス)が素晴らしい走りでログリッチを追走し総合4位まで順位を上げた。これでチーム内のエースは明確にヘイグに切り替わっただろう。
ステージ序盤から山が連なるステージ、時速50㎞以上のハイペースでスタートしたステージは、中々逃げが決まらない。結局最終的に逃げが決まるまでにステージの半分以上、100㎞以上を要した。総合争いから脱落しているロメイン・バルデ(チームDSM)、ワウト・ポエルス(バーレーン・ヴィクトリアス)、さらにはラファル・マイカ(UAEチームエミレーツ)ら山岳を得意とする強力なメンバーが飛び出していく。最終的に11名まで膨れ上がった逃げだが、総合上位選手がいなかったことで、メイン集団をコントロールするユンボ・ヴィズマは容認する。
残り71㎞、カルーゾは単独で攻撃を仕掛ける。それに反応したマイカとバルデは追走を仕掛けるが、カルーゾは単騎で頂上を通過しさらに逃げ続ける。メイン集団はカルーゾから2分遅れで通過するが、カルーゾが下りでのテクニックで差を広げると、次の上り初めまでにその差は3分半にまで広がる。さらに次の上りではその差が広がり4分半まで広がっていく。
そして迎えた最後の山岳決戦、カルーゾが相変わらず好調なペースでゴールを目指す中、背後のメイン集団でもサバイバルが始まるが、人数を残しているイネオス・グレナディアスはパヴェル・シヴァコフ、ディラン・ファン・バーレ、アダム・イェーツ、リチャード・カラパズ、イーガン・ベルナルの5人体制で主導権を握る。対してログリッチはセップ・クスとスティーブン・クライズワイクがその脇を固める。
残り9㎞アダム・イェーツがアタック、それにミゲル・アンヘル・ロペス(モビスター)も反応するが、これにはクスが対応、そして追走をクライズワイクと、ログリッチは万全のアシスト体制で守られるが、この時点でメイン集団は11名まで絞られてしまう。するとここでログリッチが動く。あっという間の加速で先行するライバルに追いつき、まだまだ脚が残っていることを示す。ライバルたちが苦悶の表情を浮かべる中、明らかに余裕があるのはログリッチだった。
残り6.5㎞アダム・イェーツが仕掛けると、ベルナル、ログリッチ、マス、ロペスのみに絞られる。形としてはイネオス二人、モビスター二人に対する単独のログリッチが不利な状況となる。ここからさらにアダム・イェーツがアタック、それによりなんとチームメイトのベルナルが脱落してしまう。そうなればもうログリッチはいつもの攻撃モード、アタックをするとマスを引き連れそのままどんどんと加速していく。これで残りの逃げが吸収され、残るは先頭のカルーゾだけとなる。
しかし粘り続けたカルーゾはそのまま先頭で単独ゴール、そしてログリッチはマスと2位のボーナスタイムを狙い一騎打ちとなるが、ここでもログリッチが強さを発揮、2位でゴール、ライバルたちをさらに突き放すことに成功した。これで総合トップ10はまたも大シャッフル、マスが2位となりロペスが3位、ヘイグが4位となっている。昨日まで1位と10位のタイム差は1分22秒だったものが、このステージで1位と3位の差が1分21秒と、大きく広がる結果となった。
「頑張った報いだろ。きつかったからねぇ。それに暑かった!とにかく明日の休みが楽しみだよ。イネオスがペースを上げて展開を難しくしたけど、僕らのチームもそれにうまく対応できた。後は脚が残っていたから最後まで踏み続けたよ」ログリッチの表情には余裕が感じられた。
「ふぅ~、きつかった。イネオスが動いているのはわかっていたから、だったらその前にひと暴れしておくか、って思ったんだよ。単独で仕掛けられたらと思ってたらその通りになったよ。でも正直タイム差が広がるとは思っていなかったんだよね。ジロで想像以上の結果が残せて、それに匹敵する勝利がここでも挙げられて本当にうれしいよ。最後の上りは長かったね。最後まで勝てるという確証はなかったよ。」カルーゾは33歳にして最高のシーズンを送っている。
ブエルタ・ア・エスパーニャ第9ステージダイジェスト
ブエルタ・ア・エスパーニャ第9ステージ順位
1位 ダミアーノ・カルーゾ(バーレーン・ビクトリアス) 5h03’14”
2位 プリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ) +1’05”
3位 エンリック・マス(モビスター) +1’06”
4位 ジャック・ヘイグ(バーレーン・ヴィクトリアス) +1’44”
5位 ミゲル・アンヘル・ロペス(モビスター)
6位 アダム・イェーツ(イネオス・グレナディアス)
7位 ジーノ・マーダー(バーレーン・ヴィクトリアス) +2’07”
8位 ギウリオ・チッコーネ(トレック・セガフレド) +2’10”
9位 イーガン・ベルナル(イネオス・グレナディアス)
10位 ダビ・デ・ラ・クルス(UAE チームエミレーツ) +2’40”
ブエルタ・ア・エスパーニャ総合順位
1位 プリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ) 34h18’53”
2位 エンリック・マス(モビスター) +28”
3位 ミゲル・アンヘル・ロペス(モビスター) +1’21”
4位 ジャック・ヘイグ(バーレーン・ヴィクトリアス) +1’42”
5位 イーガン・ベルナル(イネオス・グレナディアス) +1’52”
6位 アダム・イェーツ(イネオス・グレナディアス) +2’07”
7位 ギウリオ・チッコーネ(トレック・セガフレド) +2’39”
8位 セップ・クス(ユンボ・ヴィズマ) +2’40”
9位 フェリックス・グロスチャートナー(ボーラ・ハンスグロエ) +3’25”
10位 ダビ・デ・ラ・クルス(UAE チームエミレーツ) +3’55”
H.Moulinette