ブエルタ・ア・エスパーニャ2021第4ステージ:ついに完全復活!生死の境から戻ってきたヤコブセンがグランツールスプリント勝利!マイヨロホのタラマエは落車も救済措置(ダイジェスト動画あり)


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「スプリンターは歯が命」とはよく言われることだ。最高速度90㎞以上でゴール前でもがく時に、歯をくいしばる為だ。しかしファビオ・ヤコブセン(ドゥクーニンク・クイックステップ)はレース中の事故で顔面粉砕骨折、残った歯は一本のみ、130針を縫い、何度も再建手術を行わなければならなかった。そしてようやくレースに復帰して小さなレースでは勝利を挙げたが男が、遂に大舞台で復活の勝利を挙げた。ブエルタ・ア・エスパーニャでのステージ勝利はチームにとっても待望の勝利、エーススプリンターに指名された男が完全復活だ。
第2ステージではヤスパー・フィリップセン(アルペシン・フェニックス)の前に力で押し負けたヤコブセンだったが、鮮やかな流れから完璧なおぜん立てを見せたグルーパマFDJトレインから発射したアルノー・デマール(グルーパマFDJ)の背後にぴたりとつくと、そのままデマールを利用して加速、最後はデマールを力でねじ伏せてのステージ勝利となった。「これで僕のリハビリは終わり、完全復活を達成した。」そうステージ後に語るヤコブセンには安堵の表情が見て取れた。

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この日のステージはスプリント争いになる公算が高く、その為ペースメーカーとしての逃げを集団はあっさりと容認する。この日も活発だったのは地元のワイルドカード出場チーム。ブルゴスBHとエウスカルテル・エウスカディの3選手が先行して逃げを形成する。
総合リーダー擁するインターマルシェ・ワンティゴベール・マテリオーはこれほどのビッグレースでの集団コントロールは初めてとあり、ぎこちなさを感じるが徐々に感覚をつかんでいく。しかしペースを上げすぎ何度となく逃げに近づきすぎるため、集団はペースダウンし、逃げとの距離を保ち続ける。

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そして残り20㎞を切ると、グルーパマFDJが先頭に出て集団の主導権を握る。残り14㎞を切り逃げが吸収されると、そこからはスプリンターチーム同士の主導権争いが始まる。アルペシン・フェニックス、ドゥクーニンク・クイックステップを中心に、モビスター、ボーラ・ハンスグロエ、イネオス・グレナディアスといったチームが覇権争いの隊列を組み攻めの姿勢を見せる。
残り5㎞では危険回避のためにイネオス・グレナディアスが総合勢を前方に固める。そしてさらに激しくなる位置取り争いの中で、残り2㎞を切ると衝撃の映像が飛び込んでくる。総合リーダージャージのレイン・タラマエ(インターマルシェ・ワンティゴベール・マテリオー)がまさかの落車、天を仰いでいたのだ。しかし幸いなことに大きな怪我はなく、また救済措置扱いとなる残り3㎞以内ということもあり、ゆっくりとゴールを目指す。

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先頭ではこの日もマイケル・マシューズ(チームバイクエクスチェンジ)がいい走りを見せる。対照的にステージ2勝目を狙ったフィリップセンは位置取りが悪く進路を塞がれてしまう。その為アルペシン・フェニックスは先頭で宙ぶらりんとなったアシストがそのままアタックを仕掛ける。それを合図に各チームのエーススプリンターたちが攻めあがる。最終コーナーでの位置取り、これが全ての明暗を分けた。スムースに内側を回ったヤコブセンは、ぴたりとデマールの背後に着くと、そこからは力と力のぶつかり合いのスプリント、誰もが感動すら覚える完全復活勝利となった。デマールは2位、マグナス・コート(EFエデュケーションNIPPO)が3位に入った。
これでヤコブセンはポイント賞ジャージ争いでもトップに躍り出た。ライバルたちも皆この勝利を祝福、強いスプリンターがさらに強くなって帰ってきた。
「夢のようだよ。あの落車の後は本当にここまで長かった。でもこれは支えてくれた医療関係者、チーム関係者、家族、友人たち、皆のおかげだよ。これは彼らの勝利でもあるんだ。総合系チームが前に来ていたことで、かなり混沌としていたね。チームメイトにうまく先頭付近までひぱっていってもらったら、デマールが見えたんだよ。彼が一番マークすべきと判断したから、そのまま彼の背後に着いたんだ。今日は僅差だったね。とにかく僕を信じて待ち続けてくれたチーム委は感謝しかない。それを勝利という形で最高の恩返しができた。」ヤコブセンの顔から笑顔が途切れることはなかった。
ブエルタ・ア・エスパーニャ第4ステージダイジェスト
ブエルタ・ア・エスパーニャ第4ステージ順位
1位 ファビオ・ヤコブセン(ドゥクーニンク・クイックステップ) 3h43’07”
2位 アルノー・デマール(グルーパマFDJ)
3位 マグナス・コート(EFエデュケーションNIPPO)
4位 アルベルト・ダイニース(チームDSM)
5位 マイケル・マシューズ(チームバイクエクスチェンジ)
6位 ピエ・アレガート(コフィディス)
7位 ヨルディ・ミーウス(ボーラ・ハンスグロエ)
8位 マッテオ・トレンティン(UAEチームエミレーツス)
9位 ヤスパー・フィリップセン(アルペシン・フェニックス)
10位 リカルド・ミナーリ(インターマルシェ・ワンティゴベール・マテリオー)
ブエルタ・ア・エスパーニャ総合順位
1位 レイン・タラマエ(インターマルシェ・ワンティゴベール・マテリオー) 13h08’51”
2位 ケニー・エリソンデ(トレック・セガフレド) +25”
3位 プリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ) +30”
4位 リリアン・カルメジャーヌ(AG2Rシトロエン) +35”
5位 エンリック・マス(モビスター) +45”
6位 ミゲル・アンヘル・ロペス(モビスター) +51”
7位 アレハンドロ・バルベルデ(モビスター) +57”
8位 ギウリオ・チッコーネ(トレック・セガフレド)
9位 イーガン・ベルナル(イネオス・グレナディアス)
10位 ミケル・ランダ(バレーン・ビクトリアス) +1’09”
H.Moulinette