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ツール・ド・フランスにまつわる数多くの記録があるが、ロードレース界のレジェンド、エディ・メルクスが打ち立てたステージ34勝という記録は長きにわたり超えることができない記録と思われてきた。その勝利数に2016年度に脂ののりきった年齢で迫りながらも、そこから5年間にわたり勝利から遠ざかっていたマーク・カベンディッシュ（ドゥクーニンク・クイックステップ）が、ついに大会前急遽エントリーされた今年の大会で勝利を量産、一気に並んで見せた。

「僕は偉大なチャンピオンメルクスと比較されるような存在ではないよ。この勝利はツール・ド・フランスのステージ勝利、1勝目と何ら変わらない勝利の一つだよ。でもこの勝利を見ていた少年たちが、いずれ憧れを抱いてツールで勝利をしてくれるといいね。」カベンディッシュは勝利を噛みしめながら語った。

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ドゥクーニンク・クイックステップが63％のレースタイムを集団先頭で支配する圧倒的な組織力で、終始コントロールし続けた。さらにゴールが近づくと、残り2㎞からはお得意のトレインを編成、ほとんど主導権を譲らないままカベンディッシュを引き連れ各コーナーを最高の位置取りでクリアしていく。

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残り600mで一度はチームDSMに前に出られたが、そこもアシスト勢がクレバーな作戦に出る。何とアシストのダビデ・ベルリーニ（ドゥクーニンク・クイックステップ）が後ろを確認した後加速、そのまま逃げ切るような姿勢を見せたのだ。そうなればライバルチームや勝利を狙う選手たちは直接動かざるを得ない。残り300mでガルシア・コルティナ（モビスター）がようやくベルリーニを捉えたが、、それをリードアウトのミカエル・モロコフ（ドゥクーニンク・クイックステップ）が利用して加速、そのまま残り100mでカベンディッシュを発射した。ジャスパー・フィリップセン（アルペシン・フェニックス）もカベンディッシュの背後から飛び出すが届かず、カベンディッシュ、そして最後はアシストを終え流したモロコフがそのまま2位に入り、ドゥクーニンク・クイックステップにとっては最高のワン・ツーフィニッシュとなった。

ついに通算34勝でメルクスの記録に並んだカベンディッシュ、この勝利でチームは今シーズン36勝目、毎年勝利を量産するチームは今年も暴れまくっている。今ツールでもこれで13ステージで5勝目、3ステージに1ステージ以上勝っている計算となる。これでカベンディッシュはポイント賞争いで279ポイントとなり、2位のマイケル・マシューズ（チームバイクエクスチェンジ）に101ポイントの大差をつけてポイント賞ジャージを守っている。

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「スプリンターはスプリントに向けた脚の準備とプレッシャーと向き合う精神力が必要なんだけど、チームの中では最も仕事をしないんだよね。それを支えるアシストたちが一番仕事をしてくれるんだよね。でもスプリンターというのは一番給料が支払われるんだよ。ただそれは”勝て”と同義なんだ。そんな中で僕はこのチームで走れていることが最強の運なんだよ。毎回これ以上ないポジションまで導いてくれるんだ。もちろんその状態だと、勝たないといけない、というプレッシャーにはさいなまれるけど、それが仕事だからね。」

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「正直僕は注目を浴びてきたけど、それと同じぐらい馬鹿にもされてきた。若くして結果を残したことで天狗になり、さらにメディア対応の重要性を理解せず、失礼な態度もとってきた。でも家族ができて、責任が生まれて、遅ればせながら大人な対応ができるようになったよ。もう二十歳の頃の僕じゃない、36歳だからね。」

「あと大変なのは、これで明日も走らないといけないということだよ。明日のコースもかなりきついからね。でもさらに勝利を積み重ねて歴史を塗り替えていくよ。」カベンディッシュは今まで以上に言葉を選びながらも喜びをかみしめた。

総合勢はこの日も動かず、山岳決戦に向け皆体調と精神を維持し続けている。

ツール・ド・フランス第13ステージダイジェスト

ツール・ド・フランス第13ステージ順位
1位　マーク・カベンディッシュ（ドゥクーニンク・クイックステップ）　　　5h04’29”
2位　ミカエル・モロコフ（ドゥクーニンク・クイックステップ）
3位　ジャスパー・フィリップセン（アルペシン・フェニックス）
4位　イヴァン・ガルシア・コルティナ（モビスター）
5位　ダニー・ファン・ポッペル（インターマルシェ・ワンティゴベール・マテリオー）
6位　アレックス・アランブル（アスタナプレミアテック）
7位　クリストフ・ラポルテ（コフィディス）
8位　アンドレ・グライペル（イスラエル・スタートアップネーション）
9位　マグナス・コート（EFエデュケーションNIPPO）
10位　ジャスパー・ストゥーヴェン（トレック・セガフレド）

ツール・ド・フランス総合順位
1位　タデイ・ポガチャル（UAEチームエミレーツ）　　　52h27’12”
2位　リゴベルト・ウラン（EFエデュケーションNIPPO）　　　＋5’18”
3位　ヨナス・ヴィンゲガード（ユンボ・ヴィズマ）　　　＋5’32”
4位　リチャード・カラパズ（イネオス・グレナディアス）　　　＋5’33”
5位　ベン・オ・コナー（AG2Rシトロエン）　　　＋5’58”
6位　ウィルコ・ケルデルマン（ボーラ・ハンスグロエ）　　　＋6’16”
7位　アレクセイ・ルチェンコ（アスタナ・プレミアテック）　　　＋6’30”
8位　エンリック・マス（モビスター）　　　＋7’11”
9位　ギヨーム・マルティン（コフィディス）　　　＋9’29”
10位　ペッロ・ビルバオ（バーレーン・ヴィクトリアス）　　　＋10’28”

H.Moulinette