ツール・ド・フランス2021第12ステージ:大逃げ成功!ポリットがチームに貴重な勝利をもたらす!プロ通算2勝目がツールに興奮収まらず、総合系は動かず(ダイジェスト動画あり)

逃げ切り勝利というのはツール・ド・フランスのような大きなステージレースでは見る側にとっては魅力の一つであり、参加する側にとっても、普段勝利になかなか絡めない選手にとって大きなチャンスだ。つまり逃げに乗り、それがメイン集団から容認され、さらには逃げ切りが容認される状況が生まれたとき、という3つの条件が重なり、さらにその逃げ集団内での駆け引きに打ち勝つと、念願の勝者の称号が待ち構えているのだ。途方もない努力と運の積み重ねの先に名誉が待ち構えている。そしてこのステージでその名誉を掴みと他のは、ニルス・ポリット(ボーラ・ハンスグロエ)、エースでポイント賞ジャージを狙っていたピーター・サガン(ボーラ・ハンスグロエ)をリタイアで失ったチームにとって、貴重な勝利となった。

©ASO
総合勢はこの日も動かず安泰、どのチームも戦力的にも厳しくなってきているだけに、これからの山岳や個人TTといった勝負を見据えての走りに徹している。
この日のステージは横風が吹き荒れる展開、総合勢にとっては神経質にならざるを得ないが、それは逃げにとってはチャンスを意味した。総合から脱落した総合勢は、早々に翌日以降アシストに徹するためにメイン集団から遅れえて別集団を結成、タイムオーバーにならないようにゴールを目指す。

©ASO
そして高速で展開する中で、この日は13人に逃げが構成され、そのタイム差は徐々に広がっていった。エドヴァルド・ボアッソン・ハーゲン(トータルエナジーズ)、アンドレ・グライペル(イスラエルスタートアップネーション)といった元トップスプリンター達も混ざり、強力な隊列となる。さらには世界王者のジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ)も逃げに加わったことにより、ドゥクーニンク・クイックステップはゴールスプリント勝負の為のメイン集団の追走の主導権を握らないままレースは展開する。
そのため逃げとメイン集団とのタイム差はどんどんと広がっていき、スプリンターチームのほとんどが、この日のスプリント勝負を諦め、追走の手が緩んだことで、残り50㎞を前にこの日の逃げ集団による逃げ切り勝利が確定的となる。

©ASO
この日最も活発に仕掛けたのはポリット、残り50㎞を切りアタックを仕掛けると、二人の選手を引き連れ5㎞程逃げ続けるが吸収されてしまう。そして今度は残り40㎞を切りハリー・スイーニー(ロット・ソウダル)とイマノール・エルヴィーティ(モビスター)、ステファン・キュング(グルーパマFDJ)のアタックに乗ると、追走と30秒ほどのタイム差を維持したまま逃げ続ける。追い風も味方し、平均時速70㎞と超高速で展開したことで、追走もタイム差を縮められなかった。

©ASO
そのまま残り12㎞、ポリットが単独で仕掛けると、スイーニーもエルヴィーティもこれに反応できず、ポリットの独走態勢となる。そのまま独走でゴールを目指すポリットは残り2㎞程で勝利を確信したのか笑顔を見せる。そしてそのままステージ優勝、プロ通算2勝目は限りなく大きな勝利となった。
「信じられない!ツール・ド・フランスでステージ優勝なんて夢のようだよ!今日はサガンもリタイアしてしまったし、戦略を変えざるを得なかったんだよ。逃げに乗って周りを見渡したら、スプリンターが数名は行っていたので、そのまま最後まで行くのは得策じゃないと判断したんだ。一度アタックを仕掛けたら集団がばらけたんだ。そしたらそれを見て監督が”仕掛けろ!”、”全力でいけ!”って激励してくれたんだ。だから自分のタイミングでもう一度アタックしたら、単独になれたんだ。もうほんと信じられないよ!」ポリットは喜びを爆発させた。
「いつも家からも家族からも遠く離れてレースをし続けなければならない。でもそれがサイクリングであり、僕の情熱のすべてなんだ。そしてツールで勝利できたのは、人生最大の名誉だよ。」ポリットは熱くその思いを語った。

©ASO
総合勢は16分近く遅れてゴール、余裕をもってレースを終えた。
ツール・ド・フランス第12ステージダイジェスト
ツール・ド・フランス第12ステージ順位
1位 ニルス・ポリット(ボーラ・ハンスグロエ) 3h22’12”
2位 イマノール・エルヴィーティ(モビスター) +31”
3位 ハリー・スイーニー(ロット・ソウダル)
4位 ステファン・キュング(グルーパマFDJ) +1’58”
5位 ルーカ・メズゲッツ(チームバイクエクスチェンジ) +2’06”
6位 アンドレ・グライペル(イスラエル・スタートアップネーション)
7位 エドワード・テウンス(トレック・セガフレド)
8位 ブレント・ファン・モア(ロット・ソウダル)
9位 ジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ)
10位 セルジオ・エナオ・モントーヤ(キュベカ・ネクストハッシュ)
ツール・ド・フランス総合順位
1位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ) 47h22’43”
2位 リゴベルト・ウラン(EFエデュケーションNIPPO) +5’18”
3位 ヨナス・ヴィンゲガード(ユンボ・ヴィズマ) +5’32”
4位 リチャード・カラパズ(イネオス・グレナディアス) +5’33”
5位 ベン・オ・コナー(AG2Rシトロエン) +5’58”
6位 ウィルコ・ケルデルマン(ボーラ・ハンスグロエ) +6’16”
7位 アレクセイ・ルチェンコ(アスタナ・プレミアテック) +6’30”
8位 エンリック・マス(モビスター) +7’11”
9位 ギヨーム・マルティン(コフィディス) +9’29”
10位 ペッロ・ビルバオ(バーレーン・ヴィクトリアス) +10’28”
H.Moulinette