ツール・ド・フランス2021第8ステージ:総合戦線一気に絞り込まれる!昨年度の覇者ポガチャルがライバルを一蹴、ログリッチとGトーマスの総合争いは終了、テウンスが独走勝利!(ダイジェスト動画あり)
前半戦最初の山岳ステージ、いきなりここであまりにも決定的な動きが起きることをだれが予測しただろう。昨年度の覇者、タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)のあまりにも強烈な一撃は、最大ライバルであったプリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ)、そしてもう一人のライバルゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアス)を完全に優勝圏外と葬ってしまった。ログリッチはそのままこのステージ終了後にリタイアを決めた。そしてそれ以外のライバルも大きくタイム差をあけられてしまい、一気に状況は1強状態となった。どのチームが主導権を握るでもなく、完全にノーガードの打ち合いとなった状況では、ライバルに比べチーム力も有力なアシストも劣る、というポガチャルのウイークポイントが帳消しになってしまった。
そんな混沌としたステージを制したのはディラン・テウンス(バーレーン・ヴィクトリアス)、昨日に続きチームはステージ連勝、独走で勝利を決めた。昨日までの総合リーダー、マシュー・ファン・デル・ポエル(アルペシンフェニックス)が大きくタイムを失いマイヨ・ジョーヌを失う中、昨日までの総合2位ワウト・ファン・アールト(ユンボ・ヴィズマ)は3分以上のポガチャルへのアドバンテージを吐き出し、さらには1分50秒近いタイムロスをしながらも、何とか総合2位に踏みとどまった。
151㎞の長丁場と、5つのカテゴリークライム(山岳ポイント)は多少の変動は予想させたが、ここまでの大きなうねりになるとはだれもが予想外だった。スタートからアタックの応酬となり混沌となったこのステージ、スタートから30kmまでにG.トーマスとログリッチが早くも脱落する波乱の展開となる。さらにはポガチャルも貴重な山岳アシストの二人を失うなど、どのチームも満身創痍といった状況となる。
この日はすんなりとアタックは決まったわけではなく、じわじわと一握りの選手たちが先頭集団を形成していく。3つ目の山岳をワウト・ポエルス(バーレーン・ヴィクトリアス)がトップ通過、すぐ背後に20名ほどが追走するが、ここまで3つの山岳を超えながらも平均時速は48㎞というハイスピードバトル、多くの有力選手たちが自分のペースで走れぬままに脱落していく。ポエルスの背後には、アレハンドロ・バルベルデ(モビスター)、セップ・クス(ユンボ・ヴィズマ)、ナイロ・キンターナ(チームアルケア・サムシック)ら、クライマーが顔を揃える。
どれがメイン集団かわからないほどに、粉々になっており、悪天候も影響し荒れた展開は続く。残り57㎞、ポエルスが追走集団に吸収される。この時点で追走のポガチャルを含む集団とのタイム差はおよそ3分半ほどで推移していたが、その差はぐんぐんと開き6分以上にまで広がっていく。
4つ目の山岳にはいると、マイケル・ウッズ(イスラエル・スタートアップネーション)が先頭でペースを上げると、逃げ集団はバラバラになっていく。その背後では残り35㎞、数少ないアシストでがペースを上げると、追走集団ではついにファン・デル・ポエルが遅れていく。さらにファン・アールトもここで脱落していく。さらには総合10位のリゴベルト・ウラン(EFエデュケーションNIPPO)もここで遅れてしまう。
集団が最後のコロンビエール峠に差し掛かる前、レースを先導している各スポンサーのキャラバン隊でハプニングが起きていた。細い急勾配の上りで、キャラバンのトラックが狭すぎる山道に立ち往生してしまった。何とか選手たちが来る前に解消したが、コース選定の難しさはこんなところにも出ていた。
ウッズに続き、テウンスが先頭で山岳を通過する中、その背後ではポガチャルが残り30㎞でアタックを仕掛ける。これについていけたのはリチャード・カラパズ(イネオス・グレナディアス)のみだった。さらにそこからもう一度加速をすると、カラパズも置き去りにされてしまう。総合争いはこの時点で1強状態、明らかに加速の違うポガチャルはここからこの日4つ目の頂上、さらには下ってこの日最後のコロンビエール峠でもペースを落とさず逃げ集団を順番に捉えていく。まったく別次元の走り、ポガチャルは鬼神のごとき走りで総合ライバルの心を折っていった。
残り18㎞、コロンビエール峠の上りでテウンスがウッズをかわし先頭に躍り出ると、テウンスはそのまま最後まで先頭を譲らずステージ勝利を決めた。ポガチャルは見事な走りでほとんどの逃げていた選手たちをかわし、ステージ2位でのボーナスタイムを狙ったが、さすがにここは逃げ続けたヨン・イザギーレ(アスタナ・プレミアテック)とウッズが意地を見せ先着するも、4位に入りマイヨ・ジョーヌを獲得、そして総合のライバルたちを大きく突き放した。またしても総合トップ10の顔ぶれは大きく入れ替わり、総合3位までが4分38秒とポガチャルが大きく優位に立った。対して総合3位のルチェンコから総合10位のペッロ・ビルバオ(バーレーン・ヴィクトリアス)までが2分以内と第千戦となり始めている。総合2位のファン・アールトもクライマーではないことを考えれば、総合2位争いこそが熾烈な争いになりそうだ。
「今年のツール・ド・フランスに僕がとどめを刺したって?まだレースは終わっていないし、他の選手が今日のように動くこともあるだろうから、まだまだ油断はできないよ。まだ総合優勝めめぐる戦いに終止符は打たれていないよ。」ポガチャルはレース後に総合優勝が決定的になったのではと聞かれ、まだまだ手を緩めないことを語った。
ツール・ド・フランス第8ステージダイジェスト
ツール・ド・フランス第8ステージ順位
1位 ディラン・テウンス(バーレーン・ヴィクトリアス) 3h54’41”
2位 ヨン・イザギーレ(アスタナ・プレミアテック) +44”
3位 マイケル・ウッズ(イスラエル・スタートアップネーション) +47”
4位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ) +49”
5位 ワウト・ポエルス(バーレーン・ヴィクトリアス) +2’33”
6位 サイモン・イェーツ(チームバイクエクスチェンジ) +2’43”
7位 アウレリアン・ピエントレ(AG2Rシトロエン) +3’03”
8位 ギヨーム・マルティン(コフィディス)
9位 マッティア・カッタネオ(ドゥクーニンク・クイックステップ) +4’07”
10位 ヨナス・ヴィンゲガード(ユンボ・ヴィズマ) +4’09”
ツール・ド・フランス総合順位
1位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ) 29h38’25”
2位 ワウト・ファン・アールト(ユンボ・ヴィズマ) +1’48”
3位 アレクセイ・ルチェンコ(アスタナ・プレミアテック) +4’38”
4位 リゴベルト・ウラン(EFエデュケーションNIPPO) +4’46”
5位 ヨナス・ヴィンゲガード(ユンボ・ヴィズマ) +5’00”
6位 リチャード・カラパズ(イネオス・グレナディアス) +5’01”
7位 ウィルコ・ケルデルマン(ボーラ・ハンスグロエ) +5’13”
8位 エンリック・マス(モビスター) +5’15”
9位 ダビ・ガウドゥ(グルーパマFDJ) +5’52”
10位 ペッロ・ビルバオ(バーレーン・ヴィクトリアス) +6’41”
H.Moulinette