ツール・ド・フランス2021第4ステージ:”勝利は困難”の前評判覆し、カベンディッシュが復活のスプリント勝利で通算ツール31勝目!ゴール後感極まり涙(ダイジェスト動画あり)
スプリンターは勝利を量産するが故に、チームワークよりも自分の実力があるから勝利できたのだ、と勘違いもしやすい人種である。そのため特定のチームで結果を残し、他チームに引き抜かれていくことが多いのだが、そこで結果を残せず苦悶と葛藤をする。ベテラン選手のマーク・カベンディッシュは今年36歳、一時代を築き上げ移籍、初年度こそ勝利を積み上げたがそこからはなかなかビッグレースで勝てなくなり、チームを渡り歩いたがここ2年で1勝のみと寂しい結果となていた。そして今シーズン前は契約がないので引退する、と宣言したが、古巣のドゥクーニンク・クイックステップがそこに手を差し伸べたのだ。結果を求めるというよりは、名選手に有終の美の機会を与えるため、というニュアンスではあったが、チームのスプリントエース、サム・ベネット(ドゥクーニンク・クイックステップ)の移籍問題により急遽回ってきたチャンスに、一発回答をして見せた。
第4ステージも昨日同様にスプリントステージ、スタート前からステージ連勝のアルペシン・フェニックスのステージ3連勝に注目が集まっていた。しかしこの日のステージはスタート直後に、一部の選手たちが昨ステージのコース設定に対して抗議の意味を込めて、集団先頭に立ちレースを停止をしてスタートを切らなかったのだ。しかし十分に選手間での合意ができていなかったことで混沌とし、結局レーススタートから10キロをスロー走行する形に収まった。
この日は少数の2名の逃げが発生したが、スプリント勝負に持ち込みたい各チームの思惑もあり、タイム差は大きくは広がらない。残り50㎞を切り、カベンディッシュは今大会2度目のメカトラでバイク交換を余儀なくされる。しかし冷静に集団に復帰、事なきを得る。
そしてゴール手前のスプリントポイントでカベンディッシュはこの日のゴールスプリントへの意気込みを感じさせる走りで、逃げ集団の二人に続く3位で通過しポイントを稼ぐ。そしてそのまま残り30㎞を迎えると、集団内では位置取りが激しくなっていく。イネオス・グレナディアス、グルーパマFDJ、アルペシン・フェニックス、ドゥクーニンク・クイックステップ、ボーラ・ハンスグロエらが激しく主導権争いを繰り広げると先頭の二人とのタイム差は1分を切り、捉まるのは時間の問題かと思われた。
しかしここへきて逃げ続けてきたブレント・ヴァン・モーア(ロット・ソウダル)が意地を見せる。単独となりながらもメイン集団前方を必死で逃げ続ける。僅からチャンスにかけ諦めない気持ちでこぎつづける。しかしレースとは残酷なもの、加速をしてきたメイン集団とスプリンターたちは、疲れ切ったヴァン・モーアを残り200mで飲み込んでいった。
集団では昨日ステージ勝利を挙げたティム・メリエール(アルペシン・フェニックス)が、昨ステージアシストをしてくれたジャスパー・フィリップセン(アルペシン・フェニックス)のアシストに回りフィリップセンを発射、ライバルチームの裏をかく作戦に出る。しかしカベンディッシュは、そんな作戦には構っていられないくらい必至であり、ここから力業でフィリップセンと並走、そして最後は力でねじ伏せステージ勝利をつかんだ。これが2016ねん以来のツール・ド・フランス勝利、30勝目を挙げてから31勝目までに5年の歳月を要した。フィリップセンは最後はナセル・ブアニ(チームアルケア・サムシック)にも抜かれステージ3位に沈んだ。
「なんと言えばいいのかわからないよ。とにかくすべてが特別だよ。正直カムバックできるとも、勝利できるとも思っていなかったんだ。多分多くの人が僕の勝利は不可能だと思っていたと思う。僕もそうだったよ。でも自分を信じ続ければ、結果は変えられるんだと実感したよ。」カベンディッシュは歓喜の涙を見せた。
総合勢にとってはようやく落ち着いた一日となった。大きな落車もなく順調にステージを終了、明日の個人TTに備える形となった。
ツール・ド・フランス第4ステージダイジェスト
ツール・ド・フランス第4ステージ
1位 マーク・カベンディッシュ(ドゥクーニンク・クイックステップ 3h20’17”
2位 ナセル・ブアニ(チームアルケア・サムシック)
3位 ジャスパー・フィリップセン(アルペシン・フェニックス)
4位 マイケル・マシューズ(チームバイクエクスチェンジ)
5位 ピーター・サガン(ボーラ・ハンスグロエ)
6位 シース・ボル(チームDSM)
7位 クリストフ・ラポルテ(コフィディス)
8位 マッズ・ペデルセン(トレック・セガフレド)
9位 ボーイ・ファン・ポッペル(インターマルシェ・ワンティ・ゴベール)
10位 アンドレ・グライペル(イスラエル・スタートアップネーション)
ツール・ド・フランス総合順位
1位 マシュー・ファン・デル・ポエル(アルペシン・フェニックス) 16h19’10”
2位 ジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ) +08”
3位 リチャード・カラパズ(イネオス・グレナディアス) +31”
4位 ワウト・ファン・アールト(ユンボ・ヴィズマ)
5位 ウィルコ・ケルデルマン(ボーラ・ハンスグロエ) +38”
6位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ) +39”
7位 エンリック・マス(モビスター) +40”
8位 ナイロ・キンターナ(チームアルケア・サムシック)
9位 ピエール・ラトゥール(トータルエナジーズ) +45”
10位 ダビ・ガウドゥ(グルーパマFDJ) +52”
H.Moulinette