ツール・ド・フランス第5ステージ:昨年度総合覇者のポガチャルがステージ優勝で総合2位へと躍進、ファン・デル・ポエルはスポンサー外機材使いまくりで首位キープ(ダイジェスト動画あり)


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個人TTは総合順位が大きく動く可能性がある重要なステージだ。得意不得意がはっきりと分かれ、27.2㎞の平坦ステージでも、2~3分のタイムをあっという間につけてしまうことも失うこともできてしまう、非常にリスキーなステージだ。そんなステージで総合リーダーのマシュー・ファン・デル・ポエルと、その所属先のアルペシン・フェニックスは、スポンサースポーツの掟破りを躊躇なく選択、なりふり構わず総合リーダージャージのマイヨ・ジョーヌ死守して見せた。そんなステージを制したのは昨年度の覇者タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)、TTスペシャリスト達を上回る走りでトップタイムをたたき出しステージ優勝、総合でもファン・デル・ポエルに肉薄し、総合2位となっている。
このステージで大きく変動する可能性を秘めた個人TTだが、まずはTTスペシャリストたちにとっては活躍を期待される数少ない場だけに積極的な走りが目立った。しかしそれと同時に改めて序盤のステージでの落車の影響の大きさも感じさせた。無傷の選手が少ないこともあり全体体にTTスペシャリストのタイムが伸びてこない。代わりに総合上位に名を連ねている選手たちにとってはエースとしての自覚と総合のチャンスを活かそうとする貪欲さがにじみでる。

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そんなこだわりの一つが、アルペシン・フェニックスとファン・デル・ポエルの掟破りのパーツスワップだ。本来スポンサースポーツではパーツ供給の年間契約をしており、そのメーカーのパーツを使うのが当たり前なのだが、マイヨ・ジョーヌを死守するためにチームがとった選択は、スポンサー外の最高のパーツで固めた機材で挑むというものだった。これでもしマイヨ・ジョーヌが死守できなかった場合には、どれほどの批判にさらされることになるかのリスクも踏まえても、チームはファン・デル・ポエルを信じ、禁断のパーツ変更に踏み切ったのだ。その思惑はずばりはまり、ステージ優勝したポガチャルに僅か31秒差のステージ5位の快走を見せ、8秒差で総合リーダーの座を守り切った。

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そして逆転での総合リーダーの座は叶わなかったが、ポガチャルはステージ優勝を挙げるとともに、総合でのライバルたちを突き放すことに成功した。大きなタイム差ではなくとも、山岳ステージを見据えれば、タイムはどれだけあっても足りないのがグランツール、昨年度覇者が第5ステージを終え、一歩有利な展開へと持ち込むことに成功した。

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ステージ2位はステファン・キュング(グルーパマFDJ)、ヨーロッパTTチャンピオンの貫録を見せトップタイムを長らくキープし続けたが、ポガチャルがタイムを更新すると、あきらめの表情を見せた。最大ライバルのログリッチはステージ7位、ログリッチにとってはまたしてもTTで突き放される結果となった。
またシクロクロスでのファン・デル・ポエルの最強ライバル、ワウト・ファン・アールト(ユンボ・ヴィズマ)もこのステージで素晴らしい走りを見せる。ファン・デル・ポエルを1秒上回りステージ4位、総合3位へと順位を上げた。
今大会での総合優勝を狙っているイネオス・グレナディアスはTTでも冴えは見られなかった。それでもリチャード・カラパズが総合9位、ゲラント・トーマスが総合11位とギリギリ踏ん張っている。山岳で走れる協力アシストともなりうるエース格が揃うだけに、まだまだこれからの逆襲があるだろう
「今日はいい一日だったよ。ミスもなかったしね。天候も自分にとっては完璧、すべてがうまくいったよ。いいペースで走れて、リズムに乗れたんだ。今日の目標は勝つことではなく、タイムを失わないことだったんだ。その意味では予想以上の結果になったよ。マイヨ・ジョーヌはちらついたけど、今日のファン・デル・ポエルの走りを見れば納得だよ。」ポガチャルは余裕の表情を見せた。

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「正直TTは今年これが2回目だったんだよ。でも自分でもこの結果に驚いているよ。もちろんパーツはあれこれ付け替えたし、ウェアも色々変えてはいたけどね。今日は沿道の応援が本当に僕の背中を後押ししてくれたよ。最高の一日だったよ。」ファン・エル・ポエルは納得の表情を見せた。
ツール・ド・フランス第5ステージ
ツール・ド・フランス2021第5ステージ
1位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ) 32’00”
2位 ステファン・キュング(グルーパマFDJ) +19”
3位 ヨナス・ヴィンゲガード(ユンボ・ヴィズマ) +27”
4位 ワウト・ファン・アールト(ユンボ・ヴィズマ) +30”
5位 マシュー・ファン・デル・ポエル(アルペシン・フェニックス) +31”
6位 キャスパー・アスグリーン(ドゥクーニンク・クイックステップ) +37”
7位 プリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ) +44”
8位 マッティア・カッタネオ(ドゥクーニンク・クイックステップ) +55”
9位 リッチー・ポート(イネオス・グレナディアス)
10位 アレクセイ・ルチェンコ(アスタナ・プレミアテック) +1’00”
ツール・ド・フランス総合順位
1位 マシュー・ファン・デル・ポエル(アルペシン・フェニックス) 16h51’41”
2位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ) +08”
3位 ワウト・ファン・アールト(ユンボ・ヴィズマ) +30”
4位 ジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ) +48”
5位 アレクセイ・ルチェンコ(アスタナ・プレミアテック) +1’21”
6位 ピエール・ラトゥール(トータルエナジーズ) +1’28”
7位 リゴベルト・ウラン(EFエデュケーションNIPPO) +1’29”
8位 ヨナス・ヴィンゲガード(ユンボ・ヴィズマ) +1’43”
9位 リチャード・カラパズ(イネオス・グレナディアス) +1’44”
10位 プリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ) +1’48”
H.Moulinette