ツール・ド・フランス2021第3ステージ:総合優勝候補勢に悪夢!落車連発でタイムを失う選手続出!荒れたステージを制したのはメリエール!アルペシン・フェニックスが連勝(ダイジェスト動画あり)


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総合上位候補がここまで揃って落車に巻き込まれるステージも珍しいだろう。ゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアス)、プリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ)、タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)の3人がそれぞれに落車、それ以外の選手達も巻き込まれ、逆に総合上位候補勢で全く無傷だったのはジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ)とリチャード・カラパズ(イネオス・グレナディアス)のみ、多くの優勝候補たちにとっては悪夢のような一日となり、落車でタイムを失っただけでなく、手負いの状態となった。それでも皆闘争心を失っていない。
そんな荒れ放題のステージを制したのはティム・メリエール(アルペシン・フェニックス)、昨日のステージ優勝者で総合リーダーのマシュー・ファン・デル・ポエル(アルペシン・フェニックス)がアシストを務める豪華な布陣で、スプリンター勝負を制してチームとしてステージ連勝を飾った。今シーズン絶好調のメリエールもファン・デル・ポエル同様に現役のシクロクロス選手、多くのシクロクロッサーを抱えるチームが、ロードレースでもその存在感をおおきく示している。

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182.9㎞の第3ステージはまさかの落車尽くし、その幕開けはスタートからわずか37㎞で発生したGトーマスの落車だった。この日の逃げが発生し、それを追走する中でイネオス・グレナディアスのエースがまず激しく路面に叩きつけられた。ホイールの接触でバランスを崩しらロベルト・ヘーシンク(ユンボ・ヴィズマ)がGトーマスを巻き込んで落車してしまう。ログリッチの右腕でもあるヘーシンクはそのままここでリタイア、そしてGトーマスは右肩を脱臼するが、その場で医療班が肩を嵌めなおすとそのまま痛みをこらえてレースに復帰、残り125㎞でメイン集団に復帰した。この落車では昨日に引き続きトニー・マルティン(ユンボ・ヴィズマ)も落車、早くもユンボ・ヴィズマはチームとして満身創痍になりつつある。
この日逃げに乗ったイデ・スケリング(ボーラ・ハンスグロエ)が山岳賞を狙いきっちりとポイントを積み重ね続けた。ステージ勝利ではない明確な意識を持った走りで、この日山岳賞ジャージを確保した。この日はスプリントステージ、スプリンターを擁するロット・ソウダル、ドゥクーニンク・クイックステップ、バーレーン・ヴィクトリアスらがメイン集団をコントロール、逃げを吸収、そのままハイペースでレースは続いた。

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そして迎えた残り10㎞、またしても総合勢が巻き込まれる落車が発生する。ソニー・コルブレッリ(バーレーン・ヴィクトリアス)のハンドルに接触したログリッチが弾き飛ばされる形となり、激しく路面にたたきつけられる。これに巻き込まれたのがモビスターのエース、ミゲル・アンヘル・ロペスだった。残り距離も短く、ユンボ・ヴィズマはチーム全員がログリッチを待ちここから必至の追走を見せるが、結局1分21秒Gトーマスにタイムを失う結果となった。この牽引をしたスティーブン・クライズワイク(ユンボ・ヴィズマ)は、序盤の落車で負った腕の傷が深く、ステージ終了後に縫合をしている。

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そしてこの日の落車の連鎖はまだ止まらない。残り4㎞、今度は昨年度の覇者で優勝候補筆頭のポガチャルが高速ダウンヒルのカーブで落車を喫する。総合6位につけていたバーレーン・ヴィクトリアスのエース、ジャック・ヘイグもここで巻き込まれ、そのままリタイアとなった。ポガチャルもそのままゴールを目指したがライバルに26秒失う結果となった。

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迎えたゴールスプリント、スプリンターたちが顔を揃えたが、完璧なお膳立てを見せたのはアルペシン・フェニックスだった。マイヨ・ジョーヌのファン・デル・ポエルが牽引し、満を持して残り150mでメリエールがスプリントを開始するが、その背後で今シーズン全てのグランツールでのステージ優勝を狙うと公言していたカレブ・ユワン(ロット・ソウダル)がピーター・サガン(ボーラ・ハンスグロエ)を巻き込んで激しく落車してしまう。メリエールはステージ勝利、リードアウトのジャスパー・フィリップセン(アルペシン・フェニックス)までも2位に入り、ワン・ツーで勝利を締めくくった。これでメリエールはジロ・デ・イタリアに続いてツール・ド・フランスでもステージ優勝となった。サガンはすぐに起き上がりゴールしたが、ユワンは動けずそのままリタイア、結果鎖骨の複雑骨折で手術が必要な状況となった。

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「夢のようだよ!ジロでも大満足だったけど、信じられないよ!ファン・デル・ポエルがアシストしてくれるって言ってくれて、”馬鹿じゃないの?”って言ったんだけど、あいつはそういうやつなんだよ。あとはフィリップセンが完璧な仕事してくれたよ。ゴールしたら後ろに誰もいなくて驚いたよ。落車があったみたいだからそれが理由だとは分かったけど。とにかく今は夢のような気分だよ!」メリエールにと手は大満足のシーズンとなっている。
これにより総合トップ10の顔ぶれは大きく入れ替わり、カラパズが気が付けば総合3位に顔を出し、またダークホース的存在がトップ10に顔を揃えた。

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プリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ):「幸いにも骨折はなかったけど、全身傷だらけだよ。まさに悪夢のような一日だったけど、でもまあまだレースを続けられるよ。」
タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ):「何が起きたかよくわからなかったよ。本当にぐちゃぐちゃだったよ。ゴールまで必死すぎて、どれくらいタイムを失ったのかさえ分からなかったよ。ライバルたちも落車したみたいだけど、こういう形のレースはだれも望んじゃいないよ。」
ツール・ド・フランス第3ステージダイジェスト
ツール・ド・フランス第3ステージ
1位 ティム・メリエール(アルペシン・フェニックス) 4h01’28”
2位 ジャスパー・フィリップセン(アルペシン・フェニックス)
3位 ナセル・ブアニ(チームアルケア・サムシック)
4位 ダビデ・ベルリーニ(ドゥクーニンク・クイックステップ)
5位 ソニー・コルブレッリ(バーレーン・ヴィクトリアス)
6位 ジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ
7位 マシュー・ファン・デル・ポエル(アルペシン・フェニックス)
8位 シース・ボル(チームDSM)
9位 アンソニー・チュルギス(トータルエナジーズ)
10位 マックス・ワルシェイド(キュベカ・ネクストハッシュ)
ツール・ド・フランス総合順位
1位 マシュー・ファン・デル・ポエル(アルペシン・フェニックス) 12h58’53”
2位 ジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ) +08”
3位 リチャード・カラパズ(イネオス・グレナディアス) +31”
4位 ワウト・ファン・アールト(ユンボ・ヴィズマ)
5位 ウィルコ・ケルデルマン(ボーラ・ハンスグロエ) +38”
6位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ) +39”
7位 エンリック・マス(モビスター) +40”
8位 ナイロ・キンターナ(チームアルケア・サムシック)
9位 ピエール・ラトゥール(トータルエナジーズ) +45”
10位 セルジオ・イギータ・ガルシア(EFエデュケーションNIPPO) +52”
H.Moulinette