ツール・ド・フランス2021第2ステージ:シクロクロス世界チャンピオンのファン・デル・ポエルが超人的なアタックでステージ勝利!積極的に狙ってマイヨ・ジョーヌも獲得し歓喜の涙!(ダイジェスト動画あり)


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昨日同様にクラシックのような雰囲気の第2ステージは、予想通りパンチャーたちの争いとなったが、勝負所で計算したかのようにボーナスタイムを狙い、そして圧倒的な加速力でアタックを決めた現シクロクロス世界チャンピオンのマシュー・ファン・デル・ポエル(アルペシン・フェニックス)が見事ステージ優勝を決めるとともに、タイム差とボーナスタイムで大逆転で総合リーダージャージのマイヨ・ジョーヌを獲得した。名選手だった祖父が成し得なかったマイヨ・ジョーヌ獲得を、孫のファン・デル・ポエルが達成、普段はポーカーフェイスな男が人目もはばからず男泣きした。
この日も6人の逃げが発生するが、ドゥクーニンク・クイックステップがメイン集団でペースをコントロール、アラフィリップへのお膳立てを着々と準備する。しかし昨日ステージ優勝とマイヨ・ジョーヌを獲得したジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ)の動きは精彩を欠いた。ステージ連勝に期待がかかったこのステージだったが、この日のアラフィリップは先頭付近より一歩下がった位置をうろうろとすることが多かった。
対してそのライバルはこの日は元気いっぱいだった。逃げを飲み込んで迎えたゴールまで残り17㎞、周回コースで2度の激坂を上る一回目でアタックを決めたのはファン・デル・ポエルだった。逆転でのマイヨ・ジョーヌへの条件では、メイン集団のペースとステージ勝利への貪欲さを考慮すれば、ボーナスタイムを獲得したうえでのゴールでの勝利が必須条件、それを満たすためにまず第一弾で3級山岳となるゴールライン一度目の通過をトップで果たす。
するとまた集団へと戻り、再び集団は最後の激坂に備える。そしてペースが上がり集団がどんどんと分裂していく中、残り800mでファン・デル・ポエルが決定的なアタックを仕掛ける。あまりのペースに誰も反応すらできず、そして追走を仕掛けるもどんどんとその差は広がっていく。一切気を緩めないシクロ世界王者のロングスパートは鮮やかに決まり、そのまま独走で勝利を決めた。総合上位勢も分裂する中で、タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)とプリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ)は昨ステージ同様にお互いを意識しながらゴールスプリント、それぞれ2位と3位に入った。アラフィリップは全く伸びず、5位、僅か一日でマイヨ・ジョーヌを手放す結果となった。

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ゴール後喜びを爆発させたファン・デル・ポエルは、この時点ではまだ総合リーダージャージ獲得の確信はなく、初参加のツールで2ステージ目にして早くもステージ勝利を挙げたことに歓喜の声を上げたが、その後総合リーダージャージの獲得が正式に発表されると、こみ上げてくる思いに涙が止まらなくなった。ツール・ド・フランスで総合2位3回、総合3位5回を達成しながらも、一度もマイヨ・ジョーヌに袖を通すことがなかった祖父、故レイモンド・ポリドールへ捧げる、最高の勝利となった。

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「言葉が見つからないよ。正直今日の勝負はギャンブルだったよ。最初のゴールライン通過でのボーナスタイムがなければ、逆転でのマイヨ・ジョーヌの芽はないと思っていたし、今日獲得できなかったら今大会中に獲得するのは無理だと思っていたから、狙っていったんだよ。もし祖父が生きていたら、このジャージを着せてあげたかったね。マイヨ・ジョーヌを獲得したとわかった瞬間、祖父のことを思い出して感極まってしまったよ。とりあえず個人TTまではこのジャージを守っていたいね。それが現実的な目標だよ。」ポーカーフェイスなファン・デル・ポエルが満面の笑みを表彰台で見せた。

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そして総合優勝候補の一人ゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアス)は、ライバルたちに後れを取りこのステージでタイムを失うこととなった。さらにタオ・ゲイガンハートは一気に3分以上の遅れとなり、これでイネオス・グレナディアスは4人の総合上位候補のうち初日のリッチー・ポート(イネオス・グレナディアスと二日目のゲイガンハートで早くも二人が大きく順位を落とす形となった。最後の激坂は、この日は多くのドラマを生む”劇坂”となった。
ツール・ド・フランス第2ステージダイジェスト
ツール・ド・フランス第2ステージ
1位 マシュー・ファン・デル・ポエル(アルペシン・フェニックス) 4h18’30”
2位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ) +06”
3位 プリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ)
4位 ウィルコ・ケルデルマン(ボーラ・ハンスグロエ)
5位 ジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ) +08”
6位 バウク・モレンマ(トレック・セガフレド)
7位 ヨナス・ヴィンゲガード(ユンボ・ヴィズマ)
8位 セルジオ・ガルシア(EFエデュケーションNIPPO)
9位 ピエール・ラトゥール(トータルエナジーズ)
10位 ジャック・ヘイグ(バーレーン・ヴィクトリアス)
ツール・ド・フランス総合順位
1位 マシュー・ファン・デル・ポエル(アルペシン・フェニックス) 8h57’25”
2位 ジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ) +08”
3位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ) +13”
4位 プリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ) +14”
5位 ウィルコ・ケルデルマン(ボーラ・ハンスグロエ) +24”
6位 ジャック・ヘイグ(バーレーン・ヴィクトリアス) +26”
7位 バウク・モレンマ(トレック・セガフレド)
8位 セルジオ・ガルシア(EFエデュケーションNIPPO)
9位 ヨナス・ヴィンゲガード(ユンボ・ヴィズマ)
10位 ダヴィ・ガウドゥ(グルーパマFDJ)
H.Moulinette